チートなんて呼べるものほど役に立たないときは役に立たない
「━━学っ、年一位がっ、笑えるぜっ」
彩月春採は息を切らし教会跡地下のダンジョンを走り回る。
先程までこの世界をクソゲーにしちまったぁっと調子に乗ってモンスターを狩りまくっていた彼だが、致命的な欠点に気づくこともできず、自分の愚かさを絶賛後悔しているところだ。
「ここなら安全地帯だっ」
休憩所と呼ばれるモンスターの非行動エリアにたどり着くと力を失いストンと座り込む。
メニューからステータスを確認する。
名前:彩月 春採
故郷:魔の民 種族:ルーン level:49
体力0/0
精神力200/28000
物理攻撃力0 物理防御力0
魔法力64000
素早さ510
スキルポイント:15600
スキル:
「高等精霊体level Max」『ルーン魔術』『ルーン探索』
『ルーンボディ』「精神耐性弱」『ルーン魔術の心得』
next505800
「まさかの精神力枯渇って、回復アイテムを当たり前に持っていると思っていた俺は馬鹿だな」
このヘルアンドセブンはlevelupしたところでステータス全快はしない。増加されたステータスが上乗せする形になるのだ。だから、いつもの調子で楽しんでいたらこの様である。
「いやでもチートも悪くなかった」
春採はあれから休まずに「高等精霊体」の力で経験値を稼ぎ、それが効かないモンスターへはルーンブレイクで倒すという無双をしていた。ここには精神攻撃ができる徘徊しているモンスターは全て「高等精霊体」で経験値に変えれるものだから休まずに行動した結果がこれだ。
「とりあえず、スキル割りして精神力を回復だな」
『ルーン探索』
300 素早さ+200
400 素早さ+400
500 素早さ+600
600 素早さ+800
700 素早さ+1000
800 「生命」
900 体力+10
1000 『ルーン生命』
『ルーンボディ』
700 精神力+7000
800 精神力+8000
900 「精神強化」
1000 「精神の解放」
『ルーン魔術の心得』
200 ルーンブレイクlevel2
400 精神力+2000
600 魔法力+2000
800 精神力+3000
1000 ルーンバックlevel2
1200 精神力+3000
1400 『魔導師の入門』
1600 魔法力+3000
1800 ルーンリヴァイバlevel2
2000 『ルーン魔術の極意』
彼が今振り分けることのできるスキル一覧だ。
「そう言えば、ルーン魔術の心得が増えてた」
春採は視界に出たスキル一覧を眺めながら考える。
━━精神強化ってたしか、精神力を消費する技の威力を倍率+1,5にするんだったんだよな。精神の解放は精神力のギャップ解放か、ここら辺は絶対必須だな。
手を動かしスキル一覧のスキル名に触れるとポイントを消費する。
「しゃっ、ここはゲームと同じかっ。精神力上乗せしたぜ。あとは残り12200のスキルポイントの使い方だな。心得カンストできるけど━━」
春採は呟きながらルーン生命に視線を止める。
「体力ねぇのに生命ね。見たことのないスキルばっかだよな。特性スキルは「鑑定」がないと内容が見れないからな」
ステータス内の「高等精霊体levelMax」又は「精神耐性弱」のことを特性スキルという。
「虎穴に入らずんば虎児を得ずっていうし、それにここを攻略するにはそれなりに素早さも欲しいしな、よしっ」
春採は「ルーン生命」にスキルポイントを全振りする。
「これでスキル一覧も更新されたぜっ、何々」
『ルーン生命』
500 「ルーン生命」
1000 体力+100
2000 体力+200
4000 体力+300
8000 体力+400
16000 『ルーン文明』
32000 ルーンストライク
64000 「精神共生」
128000 「自動精神力回復levelMax」
256000 「自動体力回復level1」
「必要なスキルポイント鬼畜過ぎるだろう。あと3600しかないぞっ、仕方ないかあとは適当に」
春採は残りのスキルポイントを3500を使う。
名前:彩月 春採
故郷:魔の民 種族:ルーン level:49
体力10/10
精神力20200/48000
物理攻撃力0 物理防御力0
魔法力66000
素早さ3510
スキルポイント:100
スキル:
「高等精霊体level Max」『ルーン魔術』『ルーン探索』
『ルーンボディ』「精神耐性弱」『ルーン魔術の心得』「精神強化」「精神の解放」「生命」『ルーン生命』「ルーン生命」
next505800
春採は自分のステータスを眺める。上手くスキルポイントを使えたときの達成感ほど嬉しいものはない。
「さぁて、新しい特性スキルの効果検証といきますかっ」
春採は立ち上がり、走り出す。
***
━━激しく巻き上がる粉塵に視界を奪われそうになる。
教会跡地下ダンジョンにてモンスターハウスにはまってしまった。
「いきなり、四面楚歌スッか!」
百層もあるこのダンジョンには所々にモンスターハウスのトラップが仕掛けられている。
赤い鎧の騎士五体、青い毛並みの狼七体、紫色のスライム十五体、黒い竜四体、計三十一体のモンスターに囲まれる。
「はは、最後にヤタガラスと絵文字さんとここに来たときのことを思い出すわ」
赤い鎧の騎士は紅の刃を振りかざし突進してきた。春採に触れる瞬間青白く光を放つ。ただの鎧は下に落ち音を立てた。
「さすがチートスキルだよ」
春採は神の声みたいな経験値獲得のナレーションを聞き呆れながらも、次々と突進してくる赤い騎士が力を失う光景を見る。
春採の回りには赤い鎧の騎士五体分の残骸が散らばっていた。
周囲を囲むように威嚇するモンスター達に視線を向ける。
「精神力もつかなこれ、コイツらの体力なんて覚えてないぞ」
青い毛並みの狼は白く鋭い牙を使い、大きく噛みついてきた。
「っいて!」
痛みを感じた。春採の腕は噛まれたが血もでなければ傷もない。変化があるとすればいつのまにか視界の隅にできた緑色の棒が無くなっていた。
「デッドウルフィンって精神攻撃できなかったよなっ、もしかして生命っていう特性スキルの原因か」
青い毛並みの狼は威嚇しながら距離を詰め、牙の攻撃を春採に向ける。一体が攻撃をしたらすぐ次の狼が続く。
スライムは合体するぞぉと言わんばかりに集まり、竜は火の玉を口からはいて攻撃。
その全ては精神攻撃ではない。避けることもできずに攻撃全てを食らう春採。
「痛くない?」
不思議に思いながらも自分が無傷で痛みがないことに安心を覚える。
「お前らな、一瞬死んだなこれとか思っちまったじゃねぇか。痛みを感じるために体力増やすなんてマゾかよ俺」
気がつくと紫色のスライムは合体し終え、デカイ紫色のスライムになっていた。
「そういえばこいつって合体すると精神攻撃できたよな……」
春採はゲームの時にはいつも範囲攻撃で一掃していて、合体した後の紫色スライムのことをスカッリ忘れていた。この地下ダンジョンにおいて唯一高等精霊体で吸収できず、ダメージをもらう。しかも呪文に対する耐性が高すぎるといったチート級モンスターである。
このビックリスライム(紫色)は驚くほど早い。素早さのステータスで最も最速のモンスター。
ぽよんぽよんと床を跳ねる姿は可愛らしい。物理攻撃力は春採と同じくゼロなのだが、触れるだけで精神ダメージを与えるという特性もち。
「あの、勘弁してもらっていいですかね?」
苦い笑顔を浮かべる春採の意思などくむはずがなく、ビックリスライム(紫色)は高速で部屋中を跳ね回りその場にいる全てに精神ダメージを与えた。