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終わった世界へ異世界転生  作者: クラクラ
異世界
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学校に登校したら異世界転生

下手ですけど勘弁してくださいね。



ヤタガラス:

「今日でヘルアンドヘブンもサービスおわちゃいますね」


*→←”*

「ですです、絶対おかしいですです」


ファイルナ

「残念ですね」


 画面上で繰り広がれる会話に引きこもりの高校生はため息をする。MMORPG『ヘルアンドヘブン』のサービス最終日。


 停滞気を迎えたオンラインゲームほどつまらないものはなく、ユーザーが減っていくのは仕方がない。それでも依存してしまうコアなプレイヤーはいる。ダラダラと同じ事を繰り返す日々から解放されると思うとよかったのかもしれないが、自分が人生の一部を費やして育て上げたキャラが消えてしまうのはどこか納得でない。


ヤタガラス:

「いやはや、まさかファイルナさんがネカマだったとは、僕まじで恋してましたよ」


ヤタガラス:

「できれば最後まで知りたくなかったよ。姫足るもの最後までその自覚をもって行動してださい」


 緑色の肌をしたゴブリンのような姿のアバターはヤタガラス。長身のドワーフ族だ。真っ先に敵へ突っ込んでいく切り込み隊長的な人だ。

 このヘルアンドヘブンはキャラメイクが細かな所までできる。体型身長体重髪型目付き輪郭と無数のキャラアバターを作ることができる。


*→←”*

「私は知ってましたけどね」


ファイルナ

「絵文字さんがですです口調を卒業した!」


ヤタガラス:

「絵文字さんがですです口調を止めた!」


ファイルナ

「被っちゃいましたね」


*→←”*

「そこまで驚くこと?」


 *→←”*こと絵文字さんはチャットに絶対ですですまたはますますといった言葉をつける人だ。茶色い肌に銀色の長髪のエルフ族。特徴的なのは尖った耳と背中についている鱗のような羽である。


ヤタガラス:

「できれば最後まで貫いてほしかったな、ですます口調」


*→←”*

「リアルJKのカミングアウトを無下にするなですです」


ヤタガラス:

「えっ!JKなの」


*→←”*

「即答来もっ!」


ファイルナ

「きもい、よ」


ヤタガラス:

「きもいよ発言で絵文字さん変換ミスってるよ。今までそんなことなかったよね?」


ファイルナ

「かなり、きもい、と、いうこ、と」


ヤタガラス:

「フイルがキャラ戻った! 中身が男としらず姫扱いしてた僕は恥ずかしいよ」


 こんなたわいもない会話で盛り上がり、そのあとは日がまたぐまで三人で強敵モンスターを縛りをつけて狩に行った。


 ただ心残ることはファイルナを死亡状態でサービスを終わらせたことだろう。


***


 引きこもり三ヶ月ぽっち、ビギナーヒッキーからすれば高校入学して三ヶ月程度登校しなかったことくらい痛手でもなんでもない。

 ━━まさか、入学式の生徒代表で挨拶の言葉を引き受けた生徒が次の日から引きこもるなど誰が考えるだろうか?

 ヘルアンドヘブンのサービスが今年の七月で終わることを知った彼は、親にある条件のもと、交渉して親公認で引きこもることに成功した。


 彼は教室へと足を運ぶ。視線としては何でといったものが多い。彼はテストの日以外は引きこもっていたのだ。授業も受けず学年一位の引きこもりとして名を広めている。


「今日はどういったご用件で、引きこもり君」

「昨日で卒業したからもう引きこもりではないな。てか、君誰?」

「学年一位様は下の人間の名前なんて覚えないんですね」


 黒髪ポニーの可愛らしい女の子はどこか不機嫌そうだ。目付きは鋭く、腰に手をおき胸を張る。自信の塊のような女の子。

「俺が君に何かした?」

「何もしてないからです」

「仕事じゃないんだからなにもしてなくて怒られる道理はないよ?」

 ━━付け加えるならオンゲもなにもしないと怒られる。戦闘中に離席をするヒーラーとかマジ勘弁な。つまり、オンゲは仕事と同じということ、違うか、違うな。


「君は私達の代表として入学式の日、皆の前で挨拶をしたのですよ。その自覚を持ち一年生の代表となる行動をして下さい」


「その言い分は、思い出した。委員長だ。名前はまだない」

「ありますよ。勝手に名無しにするのは止めてください。恵那森姫兎えなもりひめとです。彩月春採さいつきはると君」

「姫兎ちゃんね、よろしく」


 姫兎はため息をしながら頭を押さえる。

「興が削がれたって感じですね。ここまでコミュ力が高いヒッキーなんて初めて見ましたよ。昨日君のためにあれやこれやと考えてた私が馬鹿みたい」

「ヒッキーなんて単語よく知ってるね。後何で今日登校すること知ってるの?」

「先生から聞いたんですよ」


 姫兎はクスリと笑う。

「でもその調子ならクラスにもすぐ馴染めそうですね」

「どうだろうねこんな美少女に一晩頭を悩ませてしまう俺が歓迎されるとは思えないよ。まさに罪」

「馬鹿なこと言っているうちは安心ですね」


 高校生活において美少女との接触は大イベントだ。春採はそんなことを思いながらもクラスメイトの視線など気にせず、楽しく会話をする。


 ━━世界は巡り、埋もれていく。私はそれを認めない。


 不意に頭に響いた声に春採は驚く。

「姫兎ちゃん今中二病的な言葉が聞こえたんだけど」

「ヤタガラスじゃあるまいしそんなこと……」


 二人の間に沈黙が流れる。姫兎は真っ青な表情で固まる。


「え、もし━━」


 ━━言葉を遮り、教室は青白く輝きだした。床にはどこか見覚えのある魔方陣が描かれ、驚きふためく生徒たちの声は響かない。光も音も全てが陣に吸われるように空間が歪む。


 その日、彩月春採の通う高校は世界から消え、残ったものは校庭にぽっかりと空いた穴のみだった。 


***


 気がつくとそこは教室の中だ。薄暗く窓から覗く景色は紫一色。混乱する生徒達は怯えたように周囲の様子を疑っていた。

「一体何が起きたんだよ」

「彩月君やっと目を開けたね。私にもよくわからないの。教室の扉も窓も開かないから先生達も呼べないし」


「━━世界は巡り埋もれていく、私はそれを許さない」


 教壇の前に突如として現れた金髪赤目の少女は黒いドレスに纏われ、大きな三日月上の刃をした斧を持つ。


「魔戦姫アルデンテっ!」

「ほう、我のことを知る者がいるとは」

「それはもちろん、はめ構成で挑むだけでくそボスになる魔王族のお姫様を忘れるユーザーがいるはずがない」

「ほぉ」


 ただひとりこの現状にハイテンションの彩月春採は目の前の金髪赤目の少女の眼光など気にもせず、大きく腕を上げていた。

「しゃー、夢だったら覚めないでほしい異世界召喚ではこれは」

「ちょっと、彩月君。アルデちゃん睨んでるよ」


 恵那森姫兎は耳元で囁くように小言で話す。


「アルデンテをアルデちゃんと呼ぶとはやっぱり姫兎ちゃんヘルヘブのプレイヤーだったな」


「っえ、何のことかしら」

 姫兎は視線を左右へと泳がす。

「わかりやすいね」


「━━ふぅ、君らは私を何度も倒したことがあるのだな。その借りはいつか替えそう。今は彼らのためにも説明をしたいのだがね」

 金髪赤目の少女は視線で促す。その先には慌てふためき困惑するクラスメイト達の姿がある。

「ふふ、そう怖がることでもない。君達は私がこの世界へと召喚したのだよ。理由としては私自身のエゴ」


「なんだよそれ意味わかんねぇっ」


 教室の隅で困惑していた生徒の一人が声を上げる。それにつられ周囲の生徒達も同じように言葉を口にした。

「それと私達は関係ないじゃない」

「早く戻せよ」


 金髪赤目の少女が指をならすと彼らの声は響かなくなる。声を出そうとしても言葉が聞こえない。


「ふぅ、静かにしたまえ。君らはただこのヘルアンドヘブンという世界に息ずいてもらえればそれでいい。この世界を望むものが君たちの中にいたからこそ召喚できた。まぁ、私ほどの意思ではなければ召喚さえ不可能だったろうね」

 

 金髪赤目の少女はニヤリと笑みを浮かべると、鋭く冷たい眼光になる。

「仮に君達の誰かが私を消滅させるものなら、もとの世界に帰れる可能性が生まれるかもな」


 春採は少女の言葉に胸を踊らせる。終わりを迎え去るしか選択がなかった彼にとってこの上ない喜びだから。


「━━」

 アルデンテの魔法により彼女以外の音は響かない。それでも春採には確かめないといけないことがある。

「そこの黒髪何か言いたげだな」


 アルデンテは指をならすと、世界に音が戻る。彼女に敵意を見せる生徒たちは動けない。恐怖で足がすくんでいるからというより、アルデンテに逆らうことは危険だと雰囲気で察してしまったから。


「アルデンテ聞きたいことがある。俺の使ってたアバターはどうなった」

 

「この世界は一人のプレイヤーの意思を元に構成され、その者の分身ならこの世界に生きている。それがお前かは知らんがのぅ。まぁ、せいぜいあがき生きろ」


 教室にいた生徒たちは青白い光の粒子となり世界に弾け飛ぶ。


 



 


次こそ本当の意味での異世界転生です。

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