第二話 決意
どうやら俺は異世界に来てしまったらしい。
小説を読んでると一度は行ってみたいなぁとは思っていたが、まさか本当に来てしまうとは。
しかも前世の記憶が持ったままでだ。なんと理想の転生だろうか。そこで前世ということで自然と妹のことが思い浮かぶ。
妹を守りきれなかったのは俺の力不足だ。もう妹はいないが大切なものを失うことは胸が張り裂けそうなくらいつらい。それを二度と味わいたくない。だからこそ俺は決意する。
(この世界では前世よりももっともっと強くなる!そして俺は今赤ちゃんだ。今からでも鍛えていけば前世より強くなれる筈だ。)
とは決意したものの赤ちゃんだから流石に筋トレなどは出来ない。まずはこの世界の言語を覚えた方がいいだろう。
俺は気を引けたことに小さくガッツポーズしてる女を見て、そう思った。
ーー 二ヶ月後 ーー
二ヶ月が経ち分かったことが幾つかある。まずこの世界の言語だがどこか日本語に似た感じがする。なので、割とすぐに言葉を覚えれた。これも前世の記憶持ってるおかげと言うべきか…。
あとは両親と自分の名前も分かった。
自分の名前は「アールスハイト」。割とカッコいい名前なので気に入っている。親からは愛称のアルと呼ばれているから本名が分かるのは結構最近だった。
そして両親の名前だが、父親が「アルベルト」、母親が「メアリア」というらしい。俺もそうだがこの世界には苗字がないのだろうか。それは置いといてこれがこの二ヶ月で分かった事だ。
そして今俺は家の中を歩きまわっている。二ヶ月でもう歩くのかと驚く人もいるだろうが、もう言葉も覚えたんだぜ?それに歩けるようにならないと不便だしな。当然親も最初は驚いた。だが最初だけだ。一日経ってからは歩いて当然みたいな感じで接してくる。なんというか、いい意味で親バカなのかもしれない。まぁ、こっちとしては面倒じゃないからいいんだが。
そうしていつも通り歩いてると、ふとドアが開いていることに気付いた。流石に歩けるようになったからってドアを開けれるようになった訳じゃない。こればかりは身長の問題なのでしょうがない。いつも窓から見ているが、窓からは一部分しか見えないのだ。少し期待しながら外に出てみると、一本の道がありそこには大人が歩いていたり、子供達が駆け回っている。その道の左右に木造の家々が建てられていた。そして道の先には森がある。
(なるほど、いかにも村って感じだな。)
目の前に広がる光景を見ながらそう思っていると
「あらアル、駄目じゃない外に出てきたら」
隣の家の人と話してたのだろうか、メアリアがこちらに気づいた。そう言いながらだっこされ、家の中に戻される。それを見ていた隣の人が驚いた顔をしていた。まだ生まれて二ヶ月ちょっとしか経ってないのだからそりゃあ驚くだろう。寧ろそれに慣れている両親がおかしいと思う。俺を家の中に戻した後はまた隣の人との話に戻っていった。
「メアリアさん家の子は歩くの早いんだね〜。うちのソフィはまだ全然。やっとこの前ハイハイ出来るようになったの」
「そうなんですか?でも歩き回るからすぐどこかに行っちゃいそうで、目が離せないんです」
などと会話しているのを窓から見ていた俺は
(まったく、どこの世界も主婦の長話はあるのか)
…と思うのであった。
夕方になるとアルベルトが仕事から帰ってきた。アルベルトの仕事は村の衛兵らしいのだが事件の一つもない平和な村なので帰りは早い。そしていつものように夕食を食べていた時
「ねぇあなた、今日隣のフィーネさんと話してたらアルが外に出てきたの。そしたらフィーネさん驚いてたわ。フィーネさんとこのソフィリアちゃんは最近ハイハイが出来る様になったらしいわ」
「おぉ、やっぱりアルは他の子よりも成長が早かったのか!うんうん、成長が早いのはいいことだ。ソフィリアちゃんも早く歩けるようになるといいな」
二人は笑いながらご飯を食べていく。
改めて両親の考えがズレていると再認識した夕食だった。