エピローグ
「ふむ、我らの勝ちじゃな」
真紅のドレスを翻して、スカーレットは立ち上がった。文洋とつながった視界に『巨人』が墜ちてゆく姿が見える。
「勝ちましたか、それでどうされますか公女殿下?」
壇上で祈りを捧げていたラティーシャ王女がが立ち上がり、じっと見つめてくる。
「この戦、テルミアだけでは勝てはしなかったじゃろう」
「そうでしょうね」
「じゃが、『飴玉の君』がいなければ、爺も本気をださなんだろうからの、おあいこにじゃ」
「飴玉の君?」
「ああ、妾に飴玉を飴玉をくれた親切な男がいての、お主の近衛じゃが」
呵々《かか》と笑って、スカーレットは議場を振り返る。
「ご来訪のお歴々よ、『巨人』はたった今、地に墜ちた、テルミアの騎士達、わが配下、雷の竜フルメン、そして地球の裏側から来た勇敢な友人たちの手によって」
議場に熱狂の渦が巻き起こった、拍手、歓声。
それを抑えるように、ラティーシャ王女が立ち上がる。
宝石の散りばめられた杖を掲げ、議場が静まるのを待った。
「みなさん、今日この瞬間、我々は学びました、我らだけではこの窮地に抗えなかったであろうことを」
ざわり、と小さく議場がざわめく。
「ゆえに私は『赤龍城塞』との同盟とその締結を提案いたします!」
どっ、と歓声に包まれる議場にスカーレットはいたずらっ子のような笑みを浮かべた。まったく、この小さな王女は油断も隙もない。
「ヘンドリクス」
「は、ここに」
「お主のところにダークエルフ共がおったろ? あれらをな、明日の夜会に招待してやろうとおもうのじゃ」
「はっ?」
「あそこの隊長にの妾が名をやったのじゃよ、『飴玉の君』とな、英雄王ロスェンバルト以来じゃの」
胸甲をつけた老騎士が、思案顔をしてからポンと手を打つ。好々爺然とした老騎士の胸鎧を、小さな拳でコツンと叩いて、スカーレットは視線を戻した。
それにしても、爺め、少々やり過ぎじゃわ、そう思いながら。
§
玄関先でエンジンが止まる音がして、ローラは窓から外をのぞくと階段を駆け下りた。
踊り場の姿見に映った自分の姿に立ち止まり、手櫛で髪を整える。
泣きはらした目はもうどうしようもないけれど、でも、それでも。
「ローラ」
まるでアライグマのように、油煙でくっきりとゴーグルの後がついた文洋が、腕を広げて笑う。
「おかえりなさい……フミ」
ローラはその腕の中に飛び込んだ。ぐいと抱きしめられる、オイルと硝煙、そして血の臭い。
「みんな無事だ、さあ迎えにいこう」
革のジャケットをローラにはおらせると、文洋がローラの手をぐいと引っ張る。
「まって、フミ」
そう言って手を引き返し、目を閉じた。
「ただいま、ローラ」
大きな手が頬を撫で、引き寄せられて唇を重ねる、
文洋の唇からは、やっぱりオイルの香りがした。
群青の竜騎士 〜 鈍色の巨人 〜 (完)
「群青の竜騎士 〜 鈍色の巨人 〜」
2014年9月18日に書き始め、なんとか書き上げました。
なろうの流行というのがまったくわかっていないオッサンが、20年ぶりに書いたこの長編小説は、主流からは大きく外れている上に、専門用語を投げっぱなしという大昔のSFの手法で書いたものですから、当初、あまりの読者の少なさに心が折れそうにもなったりしたものです。
それでも、この作品を愛してくださる人たちがいること、折れそうなときに支えてくれた人たちがいたことが書いてゆく上での大きな支えになりました。
二年にわたりお付き合い頂いた読者の皆さんに感謝して、このストーリーは一旦筆を置きたいと思います。
もしよければ、一言で良いので感想を書いていってください。今後もマイナージャンルを書いてゆく、一番の励みになります。
二年間、ありがとうございました。




