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現実

明らかに、母は病院での受診が必要で

あると思った。

けれど、そういう人は、自分は正常と

言う。そして、受診を拒む。

刺激をせず、話を合わせる。そんな様な

事が、本には書かれていた。

私は不安にかられた。


現実として、そういう事は人間誰しも

訪れるだろう。老いには逆らえない。

だが、まさか今、私達家族に、母にそういう

現実が訪れようとするとは。

私は大学生。妹は高校三年生。

父も現役で働いているし、私と妹で、母に

これからどう接していけと?

病名も、何も分からない。単なる物忘れ

かも知れない。

けれど、明らかに変わってゆく母……。

先の見えない現実。頭が真っ白になる。

取り敢えず、改めて父と妹と母について

相談する事にした。


ある日の夜、私と父と妹の三人は、母が寝静まった後、私の部屋へ集まった。

最近の母は、今までよりも感情の変化に

波があり、母の悪口をこちらは言っている

つもりはないのだけれど、すぐに悪口を

言われた。と、悲観的になったり、

反対に攻撃的になる。

もう、どの様に取り繕ったとしても、

無駄な行為になる事が度々ある。

先日、来客があった。母の兄、私の叔父家族

が久しぶりに訪ねて来た。

叔父家族と、私達家族。楽しい時間を過ごした。久しぶりの笑い声、私は何と無く

懐かしい思いがした。

夢の中にいるような……。


やはり、私は夢を見ていたのかも

知れない。

叔父達が帰り、後片付けをしていた時。

食器を、一つ一つ重ねていた母が、

「あら?このお皿、一枚足りないわ」

突然言い出した。

五枚一セットのちょっと高いお皿。

来客用に出していた。

今回も、料理の盛り付けなどに使用した。

そのお皿を片付けていた母が、一枚二枚

数えながら、足りない。と言い出した

のだ。

テーブルの上などにまぎれているのでは?

私はその言葉をのみこんだ。


テーブルを見回す。やはり見当たらない。

母は、「やっぱりね。一枚取られたわ。

あのお嫁さんに」

いきなり言い出した。怒りのせいか、

母の目つきが違う。

「さすがに、そんな事……」 私はそう

言いかけてやめた。また、激しい怒りを

こちらに向けられたくない。


人のせいにする。最近の母の変化の

一つ。

「盗まれた」 母は立ち上がり、リビング

へと向かう。そして電話をかけ始めた。

自分の兄へ。抗議の電話だった。


突然の電話に、相手は驚いただろう。

盗ってもいないお皿の事で……。


母の怒りは収まらない。攻撃的口調で

電話ごしに文句を並べた。


数分後、電話を切った母は、まだ興奮

冷めやらず、ブツブツ文句を言いながら、

残った食器などを片付けていた。


目の前での母の現実。目の当たりにした

父。

何と無く、母の変化について、私達から

聞いてはいたが、まさかここまで……。

そんな風に母を見つめていた。


この様な事があり、今私達三人は私の

部屋で、母の事を話し合う事にした。







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