11.決死の縦断劇
必殺技習得のコツ
必殺技を習得するには高いイメージ力が必要だ。しかし、0からのイメージは困難である。そこで、元々秘伝書で習得出来る技からイメージしよう。
例えば、片手剣の『ライジングスラッシュ』はただの水平斬りだが、そのエフェクトが敵に向かって飛んでいくイメージでやってみよう。『スワローテイル』習得前に遠距離技が出来るぞ!
岡崎市 インフェルノ本社 地下病院
俺が辿り着いた呪いの根源、ネフィは久世秋人を狙った襲撃事件に巻き込まれて意識不明の重体に陥っていた。
『彼女の意識を戻すには、ネフィのアバターを正規の手順でログアウトさせるしかないよ』
俺の目の前に現れた朱色は、ネフィを起こす手段を俺と隣の黒澤教授に伝える。壁にはめこまれたガラスの向こう、そこで眠る彼女を起こす方法。ブレイドクロニクルのログアウトはマイルームから行う。つまり、ネフィを奴自身のマイルームまで連れていく必要がある。
『ログインでこうなったってことは、ログアウトで戻せるかもしれないんだ』
「なんの冗談だこの地図は」
俺は朱色がガラスに浮かべた地図を見て絶句した。日本地図なのは、ブレイドクロニクルがプレイヤーの記憶から生まれた日本を舞台にしてるからだろう。スタート地点を示す緑の点が沖縄にあり、ゴールらしき赤い点は北海道にある。
『君に割り当てられたマイルームは沖縄の米軍ベッドタウン、そしてネフィのマイルームは札幌の別荘地に引っ越している』
「へぇ、あの子も強盗が出たり大変なとこに住むのね」
「物騒地じゃねーよ! 別荘地!」
黒澤教授は俺が拾わなかったらこのボケをどうするつもりだったのか。
「俺の部屋からスタートか。ならネフィに招待してもらえば……」
『ネフィのプレイヤー権限が故障してる今、それは出来ない。彼女はポータルを利用出来ないんだ。あ、でもそれ以外普通だから安心して』
いやポータル使用不可の時点で十分面倒だ。とにかくやるしか無いのか。久世秋人襲撃の謎を解くにはな。
いや、謎なら解けてる。デュナミスのオバハンが梅面の関係者であり、久世秋人襲撃について何か知ってそうだしな。姉ちゃんが取り調べしたら、鎧の部品を集めたのもネフィを消すためって言ってたし。
デュナミスオバハンの証言はこうだ。デュナミスはインフェルノ前社長の大川緋色からネフィの生存報告を聞いた。梅面が久世秋人を襲撃したと知り、その証拠を消したいデュナミスは意識の塊であるパフューム・アルマデューラの存在に気付いた。それを手に入れて捨てればネフィを抹殺出来ると思ったデュナミスはそれを試したってわけ。
恐るべきは、デュナミスが簡単にゲロったことじゃない。デュナミスが警察に証言しても構わないとする理由、自分は正しいことをしてるから梅面も自分も捕まらないと思い混んでいることた。
「厄介な奴を敵に回したな」
俺は流石にドン引きだよ。こんなんが敵だと思うと先が思いやられる。正義は暴走するんだよ。禁煙運動とかそれだな。嫌煙組はマナーを守る喫煙者さえ敵視する。タバコが無くなったら無くなったで雇用が消し飛ぶって事実も無視してな。タバコ屋涙目。
『あ、あとネフィはこの世界でNPC扱いなんだ。だから死亡すると復活に時間がかかるしスタートからやり直し。これは緋色も梅面達に明かした情報だよ』
「ぎゃあああ!」
サラリととんでもない情報が。スッゲー面倒なことになりそうだ。下手すりゃ、事件が時効になるまで奴らは妨害かねん。まさか一個人の問題のためにゲームの仕様を変えるわけにいくまい。
「では、彼女をよろしく頼みます」
「とにかくみんなを呼んで対策会議だコンチクショー」
まずはネフィを現実に帰してからだ。俺は仲間達に連絡を取り、さっさとログインした。
ブレイドクロニクル 墨炎のマイルーム
「今日諸君らを集めたのは他でもない。知らん奴と2人切りは気まずいからだ!」
「ストレートにダメな理由ね、それ」
俺はマイルームに夏恋、あかり、アイリスを呼び、全てを話した。普通の女子中学生が暮らしてるみたいな部屋に可憐な赤いドレスの麗人、露出の高い改造修道服のシスター、セーラー服着た女子高生侍とカオスな面々が集まる。
俺も服装を前のものに戻した。ネコミミパーカーに赤いチェックのプリーツスカート。このメンツならまだまともな格好してると自負できる。
「こいつらは?」
「仲間です」
ネフィに聞かれたので答える。ネフィも奇抜な格好してるけどな。しかし、ここからどうやって移動しようか。歩きじゃ遅いし、海もある。
あかりが作戦会議を開いた。紙の地図を出し、沖縄にピンを刺す。
「まず、海を越える方法を考えようよ。とりあえず港には船があるからそれで行こう。海はダンジョン扱いだけど」
そこが問題なんだよ。プレイヤーの記憶で補完出来ない場所や再現しちゃまずい場所はダンジョン扱いで別マップなんだよな。
「待て、『オック海峡』を船で越えるのは確かに楽だが、360度敵から奇襲される恐れがある。だから『オック海道トンネル』を使うんだ」
ネフィがここで提案。確かに海は広くて奇襲の恐れがある。あいつらは完全に弱い敵の集まりではなく、エクシアみたいに強い奴もいる。米軍基地をベースにしたダンジョン『スターベース』をクリアして武装船や潜水艦を入手する可能性さえある。こっちにそんな余裕も無いし、海に敵は出るし危ない橋は渡りたくない。
オック海道トンネルは青函トンネルみたいな海のトンネルだ。オックとは沖縄の沖と九州の九を合わせた造語。こちらは敵の強さも海の倍くらいだが、だからこそ敵襲の可能性が低い。奴らは一部を除きデュナミスレベルの雑魚である率は高い。だから敵を退けながら他のプレイヤー、それもネフィレベルのトッププレイヤーを倒すことはできない。
こっちはそんくらいの敵、ネフィと俺やアイリスで捌けるのだが、あっちはエクシアくらいしか戦力がいない。オマケに追いついてトッププレイヤーと戦闘する必要がある。そうとなれば、どれほどの戦力が必要か。
「それだと疲弊した俺達を出口で待ち構えてそうだな」
「なら出口に私が先回りして警備しましょう。ネフィさん以外はポータルを使えますし」
アイリスが出口警備を提案する。ネフィ以外はポータルを使えるから先回りも簡単だ。一人では不安なので、結局俺以外が出口の警備をすることになった。
「なら、入口にも人を配備して、追っ手が入ったらその人に追い掛けてもらいましょう。トンネルの2人と袋のネズミにするのよ。私が人員を呼ぶ」
夏恋がさらに凶悪な作戦を語る。
俺とネフィがトンネルを突破する作戦で固まった。これから、日本縦断ネフィ救出作戦が始まる。
オック海道トンネル 入口
俺とネフィはオック海道トンネルの入口に来た。ここまで敵襲は無い。緋色がどこまで喋っているかわからんが、俺達の現状までは知るまい。緋色が梅面に情報を流せたのは、夏休み前の話だ。今、緋色は豚箱の中。ザマァないぜ!
ま、奴らがどこで見張っているかわからないから注意に越したことはない。
しかし沈黙が痛い。あれだけ鎧状態では話掛けて来たネフィが押し黙ったままだなんて。事件以前の夏恋とかドラゴンプラネットオンラインでプロトタイプと戦う前の俺みたいだ。あいつらこんなに話しずらかったのか。反省。
「なあ、ネフィ」
「早く抜けよう。あいつらを根絶やしに……!」
あーこりゃダメッスね完全に憎しみに呑まれとるがな。仕方ない、ここは少し落ち着かせよう。憎しみに駆られると冷静さを失い、生存率が落ちる。
「ネフィ、奴らを憎む気持ちも解るがナンセンス、落ち着け。死ぬぞ」
「あんたに何が解る!」
「解るさ。俺だって大事な奴を殺された。それも2回だ」
俺はネフィに、その話をした。俺が表五家を倒すきっかけになった話を。
ガキの頃、俺は入院していた病院でお世話になった楠木渚って人を生き別れた弟に殺された、と勘違いして勝手に恨んでいた。そうして俺は高校生になり、夏恋からドラゴンプラネットオンラインに誘われた。
そこではプレイヤーから負の感情を取り出し、そいつをベースにプレイヤーが主役となる物語を生み出すシステムが稼働していた。それに読み込まれた俺の負の感情は『憎しみ』だ。そこから生まれたのは、人の憎しみが服着て歩いてるみたいな化け物、プロトタイプだ。
そいつは姿こそ墨炎を成長させたて白髪にしたみたいなのだが、間違いなくそいつは憎悪に満ちた化け物だった。人の皮被ったモンスターだよあいつはよ。人の憎しみとはこういうものなのか。初めて俺は客観的に自分を見た気がしたんだ。
全て無くしちまった奴には復讐しか無いだろうが、俺にはまだあるんだ。だから一回、立ち止まろうって考えた。そうしたら恋人が出来たよ。
そいつがまたかわいい奴でな。イギリス人なんだけど、そりゃ金髪も綺麗で肌も白くてスタイルもよくて。顔もかわいいのなんの、眼鏡ってとこがまたオツよな。明るくて優しくて、彼女は輝いて見えた。まるで太陽だ。恋愛に関しては積極的なんだが、やっぱりウブなところもあるからまた可愛いのなんの。ハイセンスだ。この世界にエディ・R・ルーベイという俺の天使を生み出した神はハイセンスだな!
「惚気はいい。さっさと話せ」
「なんだよナンセンスだな。エディはマジ可愛いんだぞー。写真見せようか?」
「興味無い」
ネフィが味気無く流したので、仕方なく話の続きをする。せっかく取って置きの、デート中に服屋で試着してる時の写真がだな。
エディとの時間が楽しかったのは惚気でわかるだろ? だが、それは突然終わりを告げた。エディが死んだんだ。原因は複雑だ。エディは昔、表五家の熱地学院大学が管理している地下都市デステアに研究者の両親と住んでいた。だが、熱地の偉いさんが起こした原発事故でデステアが崩壊。エディだけが生き残った。
しかし、その事故で被曝したエディの全身を病が蝕む。死因はそれだ。俺はエディや表五家の野望で散った奴らの無念を晴らす為に戦うことを決めた。今まで通り、憎しみオンリーで戦っていたら財閥解体を目指す凍空真夏、自らの家に反旗を翻した宵越弐刈、父親に反逆した渦海黒潮という強大な味方も得られなかっただろう。ていうかまず潰してたな。黒潮だけは未だ面識ねぇけどな。
「そうか、それで。通りで歳に落ち着きが合わんわけだ」
「これ普通一生分の大冒険だわな」
ネフィは足を止めた。ようやくご理解いただけたようだな。
「ま、奴らを駆逐するなら俺達も混ぜろってだけの話だ。最近、敵不足で続編期待出来ない俺はナンセンスに退屈なんだ。そこに迷惑な敵も来たから暇潰しにはちょうどいい」
「ややこしい奴だ。『自分だけで背負うな』と言いたければそう言え」
「?」
ネフィは俺に背を向け、俯いて答える。しかし彼女は何が言いたい? 俺は単に自分に降り懸かる火の粉を払うまでだし、暇で暇で暇潰しが欲しいのは確かだ。ポケモンの発売日までのな。
「行くぞ。そんなに暇なら早く奴らの相手をさせてやる」
「そう来なくっちゃな!」
俺とネフィはトンネル内部を走り出した。トンネルにいる敵は半魚人みたいな奴らが大半。そいつらは武器を持っている。人型の敵はプレイヤー戦の練習台みたいなもんだから、ちょっと強い。が、俺とネフィなら敵ではない。
「そういえば名前聞いてなかったな。俺の本名は直江遊人」
「私は雛崎……じゃなくて黒澤鏡華。久世鏡華って呼んでもいいわ」
「それだとホラゲの『髪を梳かす女』になっちまう。ああ、零シリーズ面白いよな。また一作目から『刺青』まで通してやるか」
初めてネフィの本名を聞いた。最初に苗字を言い淀んだから、何かわけがあるだろうな。
「後ろから足音!」
「敵か?」
半魚人をボコボコにしていると、そいつらとは違う固い足音が聞こえた。これは靴の音だ。
「なんか来たぞ!」
急速接近するプレイヤーがいた。名前は『キュリアス』か。また天使の名前か。それともガンダムなのか。
「もらった!」
そいつはネフィを狙う。武器は両手剣か。サイファーと同じだな。オレンジの長髪を振り乱し、剣をネフィに叩きつける。ネフィは鎌の柄で防いだ。カウボーイみたいな格好をした奴だ。銃使えと言いたいがここはブレイドクロニクル。残念。
「って、ネフィ死んだらやり直しだな。【フルフレイム】!」
俺は宵闇装束のおかげで開発出来た技を使う。体に炎を纏う技だ。ドラゴンプラネットにもあったから、それがベース。基礎は宵闇装束と同じで、フルフレイムを使う時にだけ必殺技ゲージを使う。後はこの炎を消費して技を使うんだ。宵闇装束と違って0からの開発じゃないからもう完成出来た。宵闇装束体験したおかげだな。
「【フレイムストライク】!」
剣が炎を纏い、刃の長さが伸びる。それも両手の剣がだ。それで俺はキュリアスを斬りつける。
「ぐっ!」
「【フレイムネイル】!」
そして追い打ちの突き。キュリアスは後ろに飛びのいたが、この突きは炎が飛ぶのだ。バトル漫画みたいにバンバン技が出せるのはこのゲームの魅力だな。
「チッ」
HPをかなり削られたキュリアスは一旦退く。そして、両手剣の必殺技を出した。
「【ゲイザースラッシュ】!」
「くっ!」
「うおっ!」
横に振り払った剣から青い斬撃が飛ぶ。真正面から受け止めるが、力が強くてネフィも俺も尻餅を付いてしまう。これは避けるのが正解だが、狭いとどうしてもな。
「【ボンバーストライク】!」
キュリアスはネフィに兜割りを仕掛けるべく、剣を振り上げた。俺も起き上がるのが間に合わない。ネフィの防御力に賭けるしかないのか。
「ぐぎゃあ!」
その瞬間、キュリアスは背中を斬られた。誰かが後ろから、俺達の通った道を追ってきたのか?
「私もいるよー!」
ピンクの髪をなびかせる夢魔、エレノアか。あいつが背後から剣でキュリアスを斬ったのだ。装備が前と違う。剣も防具もサキュバス素材で強化したのか。前と同じレザーの衣装ながら、地味にデザインが違う。
レザーの長袖ジャケットに同じくレザーのミニスカート。脚は黒いニーハイソックスに包まれている。サキュバス装備か。素肌はスカートとソックスの間、絶対領域しか見えてないのだが、ジャケットが非常にボディコンシャスなので身体のラインが浮き彫りである。
ていうか、この伸びやかな話し方……。
「佐奈か?」
「正解ですー!」
エレノアの正体はクラスメイトの藤井佐奈だった。だから夏恋が呼べたのね。
「よし、任せた! 行くぞネフィ!」
「仲間を置いていくのか?」
「お前が死んだら意味ねぇ!」
俺とネフィは佐奈を置いて、先に行く。追っ手はあいつ一人だろうし、俺はネフィを先に行かせて佐奈に加勢する。ネフィはほかっておいてもそう死なん。なら、追っ手を討ってあちらさんをビビらせようではないか。
「俺もキュリアスをやる! エネミー相手じゃお前死なんだろ?」
「……任せた」
ネフィは出口へ向けて走り出す。それでいい。余裕があれば出口警備のメンバーが迎えに行くだろうし。
「【フルフレイム】! 【フレイムテイル】!」
「ぐおっ!」
遠くから炎の帯を飛ばし、キュリアスを燃やす。視界は炎で遮られた。そういえば、ネフィの技を見て一度やりたかったことあるんだよね。そのために影で練習したりしたんだ。
俺は武器である双剣の柄を合わせ、意識を集中させる。ネフィは俺が作った技を活かすため、武器を双剣にしたことがある。それの真似だ。
「セットアップ! 【ロンギヌス】!」
武器が炎に包まれ、一本の槍に変化した。ドラゴンプラネットオンラインに存在した聖なる槍、ロンギヌス。俺の恋人が愛用した武器だ。どんな武器でこの技を使っても、この武器になる。
「遊人さーん! 何とか隙を作って下さい!」
「了解! 【ソルヘイズレイ】」
佐奈の指示通り、俺はキュリアスに隙を作ることにした。刃から無数の炎を発射し、キュリアスを翻弄。そして回避に専念した奴に接近し、柄で腹部に一撃。
「がはっ!」
「今です!」
どこぞの三国志な軍師みたいな合図を言いながら、俺はキュリアスから離れた。腹部の一撃で、キュリアスはうずくまっている。
「【スプレンダーラブ】!」
「その技は!」
そして佐奈が技名を叫ぶ。その名前に俺は聞き覚えがあった。ヴァンパイアセイバー、だったかな? そんな格闘ゲームでリリスという夢魔モチーフのキャラが使う必殺技なんだが……。この技、脱げるのである。
何が? 服が。
なるほど、佐奈も研究してるんだな。うんうん。服が破れ、その破片が蝙蝠になってキュリアスに飛び掛かる。飛び道具か。肌を大きく露出しているものの、大事な場所は見えていないのがミソ。
そこだけでなく、一部服の破片が身体に付着したままというのもいい味出してるのう。特に袖が多めに残っていたり、ソックスも破れた程度で原形を残してる辺りがね。色気というものや素肌の露出に対する佐奈の美学が伝わる技だ。瞬間、見取れて動けなくなるし。
「ば、馬鹿な……! こんな技を使わせるなど、このゲームは!」
「佐奈が開発した技だナンセンス」
だいたいキュリアスが言いたいことはわかった。こんな技使わせるゲームは女性の敵だろ? いやこんな対象年齢引き上げる技がマジで実装されるわけねーだろ。一応、やろうとして練習すれば習得可能な辺りインフェルノの紳士ぶりが伺える。
キュリアスは倒された。後はネフィに追い付いて出るだけだ。
「服、戻らないんだな……」
「あー、なんかノリでそういう仕様に」
「服戻す技を作れよ」
しかし、佐奈の服は戻らない。つまり防御力と引き換えの必殺技か。いろいろ凄いな。俺はネコミミパーカーを脱いで、佐奈に羽織らせた。パーカーの下は白基調でパンクなプリント入りのキャミソールだ。
「あ、すいませんー」
「よし、行くぞ」
俺達はネフィを追う。彼女は走っていたものの、敵を倒しながらのため距離が離れていなかった。こいつらをスルーすると後にデカイ敵に足止めされた際、そのデカイ敵と後方に取り残した奴らで挟み撃ちだからな。
「来たか。……何してた?」
ネフィが佐奈の格好を見て聞いた。確かに、今のこいつの格好は何かした後にしか見えん。
「ネコミミパーカーで野獣と化した遊人さんに襲われてました」
「わかりにくい嘘をつくな!」
佐奈の冗談はさておき、俺達は3人で出口を目指す。もうトンネルの出口は目の前だ。
「出た!」
そして到達。出口では夏恋、あかり、アイリスが待っていた。そして、巨大なトレーラーも待っていた。あれはなんだ?
「墨炎!」
「サイファー、来てたのか!」
警備組にサイファーこと西波涙が混ざっていた。黒いファーが付いた白いダッフルコートを着込んでおり、装備を強化したのだろう。
「……」
夏恋は佐奈の服装を見て、しばらく考える。そして、不意に拍手をする。
「おめでとう」
「何が?」
「いや、あなたがエディとの約束を果たす為に佐奈を襲ったことよ。佐奈もあなたが好きだし、ちょうどいいじゃない」
「いやあれは必殺技の後遺症だナンセンス」
そういえば元カノのエディに『私を忘れて早く新しい恋人作れ』とか言われてたんだよな。いや約束じゃねぇよとんだ無茶振りだ。死別した恋人忘れろとか。あとなんか聞き逃せないこと言わなかったか?
「今からしますかー?」
「脱ぐな!」
そして何故か脱ぎ始める佐奈。インフェルノ企画部ではR18ゲーム限定だが、そういう機能も付けようという話が出た。しかし、国の倫理規定に引っ掛かるため出来なかったそうな。つまりこのゲームにそんな機能ねぇよ。
「お前なー、そういうのは子供を作る手段なんだから愛を確かめ合う為に使うなよな。不慮の事故るから」
「えー、私は欲しいですけどー。遊人さんの子供」
なんか佐奈もおおっぴらになってきたな。初めは病弱キャラだと思っていたが……。
「いつまでイチャついてんのさ! 早く乗んな!」
そんな風にふざけ合っていた俺達に、トレーラーの運転手が声を掛けた。赤みがかった茶髪をポニーテールにし、つなぎを着た少女。俺の仲間だ。
「クイン! 銃使いが何だってブレイドクロニクルに?」
「ダチ公助けるのに理由と運賃がいるか?」
相変わらず男前なクイン姐さん。タバコふかす姿も決まってる。中身は14歳の女子中学生なんだけどな。
俺達はクインのトレーラーに乗り、高速道路を爆走した。他の全員が荷台に乗る中、いざという時に逃がすべくネフィは俺と運転席に乗った。クインの隣に俺、さらに俺の隣にネフィが座る。
「デカイな、このトレーラー」
「あたしの必殺技だからな! その名もクインテットコンボイ!」
「もう必殺技何でもありだな」
このトレーラーはクインの必殺技らしい。こいつに篭城するだけで対した防御だよ。走り出されたら敵わん。
「燃料は必殺技ゲージか?」
「そうだな。運転手の必殺技ゲージだ。警備組にはゲージチャージさせてある。燃費もいいぞ。フルチャージで50キロ走る」
なるほど、さすがクイン。手回しが早いや。しかし警備組にこれを走らせれるか不安だな。
「おい、あいつら運転できるのかよ?」
「真っ直ぐ走らすだけだ。素人にも出来る」
ならいいや。だってこのトレーラー、明らかにミッション車だそ? 止まったりしようとすればガチャガチャとレバー弄らなあかんし。これを戦闘の武器に出来るクインって一体……。
「てか、これほぼ移動用必殺だろ」
「まあな。普通の対戦じゃ使えん」
「お前、このゲームに銃無いが武器は何だ?」
「マチェット」
「なるほどね」
トレーラーはひた走る。ネフィは疲れたのか、眠ってしまった。俺達は走り出したばかりなんだ、この長い日本縦断を。
日本縦断 現在状況
現在地:鹿児島県
護送メンバー
黒澤鏡華/ネフィ
直江遊人/墨炎
クイン
上杉夏恋/カレン
稲積あかり/シャーロット
藤井佐奈/エレノア
アイリス
西波涙/サイファー
トレーラー/クインテットコンボイ
残り8人と1台
敵勢力残存メンバー
梅面里文/ジブリール
平和/ジャンヌダルク
セラフィム
ケルブ
オファニム
×キュリアス:佐奈、遊人にオック海道トンネルで敗北
ヴァーチェス
デュナミス
エクシア
残り8人




