番外 夏休みの大決戦!
今回は番外編! 本編? しばらく待て。
愛知県 蒲郡市某海水浴場
青い空、白い雲。夏らしい入道雲は中にラピュタでもあるんじゃないかって感じでもある。そして青少年は誰に強制されるまでも無く、こう叫ぶのであった。
「海だー!」
ここは愛知県蒲郡市の海水浴場。遊人とそのクラスメイト達は黒羽椿の提案でここに着ていた。
相変わらず制服な遊人は、白いパーカーを羽織った椿の隣にいた。2人は泳ぐクラスメイトを見ながら、パラソルの下にいた。
「今、9月1日だよな?」
「ほら、私達って事件で夏休み潰れましたよね? その補填です」
とっくに夏休みが終わる日にこれである。海水浴場にはクラゲも出る頃だが、ここにはいないようだ。
「よくそんなクラゲが出ないなんてご都合主義な海水浴場をだな。高級旅館も貸し切りかよ」
「我々黒羽組は金持ちから吸い上げ、仕事の無い者を雇って給料を与える『所得の再分配』が仕事です。オフシーズンに彼らに給料を渡す口実が出来て、私も嬉しい限りです」
今回、椿が用意した旅館は黒羽組が経営するもの。口ではそう言っているが、椿はクラスメイトと遊ぶ口実が欲しいのだろう。
「それに、なるべく事件に巻き込まれた夏恋さんの傷が癒えればと」
「渦中だしなあ。何とかしてやらんと。長篠高校は退学にしなかったけど」
今回の海水浴は傷心の夏恋を癒す目的もある。長篠高校は元々、普通に学校へ行けない子供達のセーフティーネットをしているので夏恋を退学にしたりなどしなかった。むしろ、マスコミなどから庇っている。
教師陣も金八先生に憧れて熱血した結果、学校の体制に合わないと弾かれたものばかりだ。担任の森川も今日は来ている。
「なんだ、お前ら泳がないのか?」
大柄な数学教師の森川は長篠高校のスタンスに共感し、友人の英語教師松原とここに就職した。体育会系な見た目に反して、細かいところに気を配れる人物である。
「日差しがヤバいッス。アルビノな俺には厳しい」
現在、森川が気にかけているのが夏恋より遊人だったりする。事件が畳み掛けたせいで忘れられがちだが、遊人は彼女を失っている。死別だ。
「えーい! 行ってこーい!」
「ぎゃああ!」
森川は遊人を抱えて、海へ投げ捨てる。浅瀬なら泳げない彼でも大丈夫だろう。制服なのを忘れてるが。
「ナンセンスだな!」
海から遊人は顔を出す。ちょうど、遊ぶクラスメイトの中にほおり込まれたのだ。
「あ、出汁が出て色が抜けた」
「元からじゃい!」
目の前に夏恋がいた。彼女は赤い水着を着ていた。スタイルの良さからビキニがよく似合う。まとめた髪が普段と雰囲気を変える。
「遊人は所謂金鎚だからね。確実に轟沈するよ私みたいに」
「そうさカナヅチで何が悪い! 浮輪をよこせ!」
「寄越さない」
アイリスはスク水である。浮輪で浮かび、腕にフロートを付けてる様は『私は泳げません』と全力で主張しているようだ。褐色の肌が与える活発で南国的なイメージとはあまりに掛け離れている。シュノーケルセットも付けて完全防備。
「日焼けにも気をつけてよね。あんたアルビノだから」
「日焼け止め以前に目も守らなアカンのよな。ナンセンスな俺」
アイリスから南国イメージを収奪したかの様に、ハイビスカスを模った模様のビキニを着ているのは稲積あかり。パレオを揺らし、水と戯れる姿が様になるのはさすが元アイドル。
「ライトニングスマッシュ!」
「防御だ、防御!」
「そこだ、体キャンからのCSアタック!」
雅、門田、煉那はついて来た大人グループ、愛花と総一郎にバレー勝負を挑んでいた。描写こそされていないが、理架と真夏も来ている。
人外ぶりでは負けない3人も、同じ長篠高校出身で人外の2人には歯が立たない。ビーチボールが普通のバレーボールより高速でかっ飛んでいる。ありえん。
「『観察眼』! あの2人のコンビネーションもヤバい。単騎で強い奴が連携とか悪夢や」
遊人にはハッキリわかった。愛花と総一郎が組めば無敵だということが。両方とも脳筋ではなく頭脳も使う。片や、こちらは脳筋か頭脳派かの二択しかない。
「コンビ必殺!」
「……了解した!」
『バベル落とし!』
愛花がボールを高く跳ね上げ、総一郎がそれ目掛けて跳ぶ。愛花も跳び、ジャンプの頂点に至った総一郎をボレーの要領で更に高く飛ばす。そしてビーチボールを高所から叩き落とす。 『うわああっ!』
戦隊ヒーローも真っ青な集団吹っ飛び。自分の本来のジャンプ力の二倍跳びながら、無事着地出来る総一郎はおかしい。
「やったぜ!」
「うむ、なかなかだ」
愛花と総一郎はハイタッチ。干支1回りくらいは年齢に差がありそうだが、何気に仲がいい。遊人の姉と、その後輩である理架の父。総一郎はそろそろ再婚を考えてるとか何とか。
「さあお嬢! 一緒に泳ぎますよ!」
「わあっ蛍、何をっ!」
後ろから椿に接近した蛍は椿のパーカーを剥ぎ取り、海に引っ張り込む。蛍は競泳水着を着ているが、ゴツいガンベルトとそこに装着した銃や刀はそのまま。椿はパーカーの下に黒いビキニを着ていたが、彼女の白い肌に似合うようで、スレンダーな体に合わないような微妙な感じになっていた。
「……」
「蛍?」
割とスタイルのいい蛍が、椿のペッタンコな体つきを眺めて呟く。
「お嬢、まだ育ちますよ」
「黙んなさい」
椿は本気で凄んだ。目が笑ってない極妻スマイルは堅気の人間を凍り付かせるが、同じヤクザには効果が無いようだ……。
「さあさあ、せっかく直江くんを誘惑するチャンスですよお嬢! やっておしまい!」
「いや私は堅気の男とは……」
組長と主従ながら、その関係はごく普通の親友に見える。椿が遊人と幼なじみだが、蛍と遊人の出会いは3年前と最近。蛍が椿に保護されたのも同じ時期。
「さてそろそろ昼だ。料理は任せろー」
遊人は昼の時間に気付き、即座に岸へ上がる。慣れた手つきでバーベキューセットを組み立てて火を起こす。鉄板を乗せ、焼きそばを焼き始めた。やはり彼の得意分野は料理だった。
全員が匂いを嗅ぎ付けて岸に上がる頃には、焼きそばは出来上がっていた。早い。手際が良いとか、超スピードとかそんなチャチなもんじゃねぇ、もっと恐ろしいものの片鱗みたいな早さだった。
「わー、美味しそうな匂いです」
先程から女子に向けてカメラを回していた佐奈が匂いを嗅ぎ付ける。佐奈自身の水着姿もなかなかだが、本人は自分より目の前の美少女に夢中。佐奈の外見による自己評価は低い。
「おーっと、読者の皆さん。今回は水着回及び温泉回だと思いました? 残念! 今回は姉ちゃんと総一郎が親交深める回でした!」
遊人は佐奈のカメラに読者へのメッセージを吹き込む。今回は温泉回でも水着回でもない。なんで結婚に至ったかわからない2人を補完する回なのだ。
あまり字数も使えないので時間が一気に飛ぶ。その夜は豪華に温泉。元々貸し切りみたいなものだが、このホテルには公共の大浴場と貸し切りの露天風呂がある。
「気になる……」
「女風呂?」
「ナンセンスだな!」
大浴場にも露天風呂があり、遊人と雅はそこの檜風呂に浸かっていた。狭い檜の浴槽なので、男2人で密着することになる。
「どうした?」
「いや、まるで混よぶはぁ!」
「水鉄砲」
雅は外見上、ほぼ女性みたいなものだ。思春期全開の遊人には混浴と同じ感じになっていた。門田が一人サウナにいるのも、雅が男という現実を直視したくないからだ。
「ふぅ、僕は男だぞ?」
上気した顔に濡れて張り付く黒髪。これだけでも破壊力十分なのに、雅はかわいらしく小首を傾げ、上目遣いで遊人を見る。こいつは間違いなく女に生まれた方がよかった、遊人は動揺しながら雅は男と言い聞かせる。
元カノとの混浴経験がなければ即死だった。
「雅、お前、本当は男か女どっちに生まれたかった?」
「わからない。今の僕はこれだから」
雅は、はかなげな笑顔で遊人の問いに答えた。雅にだって答えは出ないのだ。
「そう言う遊人は?」
「俺は墨炎みたいな超絶美少女なら女がいい」
「つるぺたでも?」
「つるぺたなら紙一重で攻撃が回避できてハイセンスだな!」
男が盛り上がる中、女風呂もなかなかの盛り上がるを見せた。
「遊人、そんな機会は無いと教えてしんぜよう」
「あ、お嬢が黒い」
遊人の発言を受け、露天風呂にいた椿が反応した。椿と蛍はノーマルな露天風呂、夏恋と佐奈が檜風呂にいた。檜風呂は仲のいい人で密着する空間では無いはずだ。
「なら当ててやる。椿と蛍はノーマル露天風呂、夏恋と佐奈は檜風呂。涼子と濃尾、理架と真夏は中に、煉那とアイリスはサウナだな。あと、桐ケ谷は打たせ湯か」
遊人が全員の位置を言い当てるので女子がざわつく。椿が黒い笑顔を浮かべ、桶を投げる。しかし、遊人はそれをキャッチ。
「とっ、投げたのは椿か。勘違いするな。『観察眼』で収集したデータと入浴時間、話し声や水音をこれまた『観察眼』で聞き取りながら纏めた予測だ。まさか正解?」
「大正解よ……」
聴力にすら『観察眼』は適用できる。そもそもインフィニティ能力覚醒時に初めてしたのは教室に響くシャーペンの音からテストの解答を導き出すことである。その辺のエピソードは前作『ドラゴンプラネット』の17話『学生の業』に詳しい。
佐原もおらず、理架がインフィニティ能力を使わない今では遊人のみインフィニティ能力を駆使していることになる。触れただけで相手の体調を知る『超辛気』の名鳩零もあまりの辛気臭さに能力を使いたがらない。
遊人は椿にも女の子らしい一面があると皆に知らせたかったからしたのだが、失敗だった。既に怒り方が女の子のそれから裏社会のドンにシフト。元々、椿に女の子らしい怒り方など無理だ。
「ヤクザのボスも女の子ね」
「なんか安心しましたー」
しかし作戦としては成功した。
「まったく……」
椿は幼なじみのお節介に微笑みながら、上階を見上げる。そこには貸し切り露天風呂があり、愛花と総一郎がいる。
貸し切り露天風呂は家族、恋人、夫婦で使うこと多い。なので夫婦になる前の2人に提供した次第だ。浴槽は檜風呂だが、大浴場のそれより広く、足も伸ばせる。愛花は普段ポニーテールにしている髪を解き、総一郎に寄り添う形で湯舟に浸かった。
既に互いの両親に挨拶は済ませてある。総一郎の両親は『再婚相手がいてよかった』と言った。元妻の理名の両親にも義理立てがあり挨拶したが、『これで娘も成仏できる』と喜んでいた。
遊人として一番気が重かったのは愛花の両親に挨拶する時だろう。『自分なら娘がオッサン連れてきたらナンセンスだなと言う』と遊人は語る。しかし、総一郎が紳士的なのと強いので愛花の両親も納得した。そもそもこれを逃がしたら愛花に婿の来手が無いだろうし。
「……」
「どうしたのかね?」
バスタオルをしっかり巻き、いつもの強気で凛々しい表情を押し殺し、しおらしい表情になる愛花。一方、総一郎は仮にも想い人と風呂に入ってるとは思えないほど落ち着いていた。大人だ。
愛花は総一郎の体をマジマジと見る。筋肉質で、ダンディかつインテリジェンスなイメージからは掛け離れていた。この歳になれば大半のおじさんなど腹の一つ出ようもの。総一郎は娘と一瞬でも長くいたい一心で健康を保ち、今年の人間ドックの成績も好調だ。
「そ、総一郎さん。結婚したら苗字どうしようか?」
「む? そうだな。私が変わる方向でいいのでは?」
何か話そうと愛花はそんな話題を振る。作者的にはどっちに転んでも主人公の苗字変わるから困る。第一部主人公の直江遊人が変わるか、第三部主人公の真田理架が変わるかという話しだ。夫婦別姓なら話は別である。
「何より、真夏が短期間で2回も苗字変わるのは辛いだろうからな。なにより真が2つも名前にあると語呂が……」
総一郎が気にかけたのは遊人の妹、真夏のこと。真夏は凍空財閥の令嬢でかつては『凍空真夏』という名前だった。それが遊人の家に来て『直江真夏』と変わったので、そこからまた『真田真夏』と変わるのは変わり過ぎだ。
妻でも娘でもなく真夏を気にするとは、やはり大人だ。愛花は総一郎の紳士的な態度に惚れたのだ。
「そうね。真夏はいろいろあったから」
真夏は自らの親族を滅ぼした。幼い彼女には重過ぎるくらいの過去だ。そんな彼女が幸せになれるまで、ある意味表五家との戦いは終わらないかもしれない。
その時、総一郎が不意に愛花の肩を抱き寄せた。直接肌が触れ合い、愛花の心臓が高鳴る。
「っ……!」
「あなたは遊人のことも真夏のことも抱え過ぎだ。私が少し、荷物を持とう」
愛花はクローン人間の遊人、財閥令嬢の真夏というエキセントリックな弟と娘を抱えている。真夏はこれからといった感じだが、遊人はオリジナルである新田遊馬が戦時中に支配した国から『こっち来いごるぁ!』とか言われていたり大変なのだ。
最も、日本の外交官はその国、クアトル共和国に遊人を差し出す気は無いらしい。今の政府は遊人が表五家を倒して出来たものなので恩もあるだろう。考えてみれば凄い話だ。
「……うん」
愛花はおとなしく頷く。遊人はさておき、真夏と理架が上手くやっていくことを願うまでだ。
真夏と理架は大浴場の女湯で背中を流し合っていた。理架が総一郎から聞いた距離の縮め方なのだが、その古めかしさが彼らしい。
「ふぅ。なかなかね」
「……」
2人は曇る鏡に数式を書いて解き合っていた。参加していた濃尾と涼子は初戦で2人に敗退した。
真夏はホワイトボードを持ち込んでいないので、言葉は伝えられない。いつも首にかけてるホイッスルだけは安全の為に持ち込んではいた。声が出せない彼女には万が一の時必要なものだ。
《頭と腹の傷は大丈夫でした?》
「大丈夫大丈夫!」
それでも真夏は鏡に文字を書いて伝える。理架は切り裂き魔事件の時に、切り裂き魔に刺された上歩道橋の階段から転んだ。夏恋とわざわざ時間をずらして風呂に入ったのも、これを気にしてのこと。切り裂き魔、夏恋はまだ理架に負い目を感じている。
「でも正直、殴ったりしたからまだ気まずい……」
《あっちは刺したので、おあいこです》
そういう理架もカッとなって夏恋を殴り倒したので互いに気まずい関係のままだ。刺されたからおあいこというのも奇妙だ。ちなみに殴ったことと刺されたことは関係無いとのこと。でも気まずい。
気まずいといえば夏恋と佐奈も加害者、被害者の関係だが、やはりクラスメイトだから既に関係が修復されていた。佐奈の傷が浅く、既に消えているというのもある。一方の理架は腹に数針、額に数針でまだ抜糸していない。がっつり傷が残ってしまった。
「顔の傷くらい気にしないのに……こっちだって顔殴ったし」
殴ったと殺しかけたでは全然違うのだが、そんな些細なことを気にするほど日常には生きていない。理架がこの夏体験したのは日本を揺るがす大事件だ。
「何か関係を修復する事件が……」
理架がそんな地味に他力本願なことを考えた時、何かが倒れる音がした。
ゲームセンター
「俺のコインが光って唸る! 景品掴めと轟き叫ぶ!」
風呂から出て浴衣を着た遊人はゲームセンターでクレーンゲームをしていた。ここのクレーンゲームにはもうゲームセンターから撤去された古い景品があり、転売すれば儲かると考えたのだ。
「ん? この足音は総一郎と……だれだ?」
遊人はピロピロと鳴るゲーム音に足音が混じっているのに気付く。『観察眼』で総一郎とだれかということには気付いたが、残る一人がわからない。
そのもう一人と共に総一郎が姿を見せた。彼の腕に抱き着く愛花だ。雰囲気が違うのは浴衣と下ろした髪のせいだと思いたい。
「あ、遊人だ」
「クレーンゲームか」
「……姉ちゃん」
すっかり変わった姉に遊人は落胆する。それに連動して、クレーンも景品を取り落とした。浴衣を着た猫のぬいぐるみが地に落ちる。ポテ、とかいう効果音がお似合いだ。
「夫婦になる前からいい夫婦とはナンセンスだなあ! くっそー、俺もエディと来たかった!」
遊人は本気で頭を抱える。死んだ元カノはそんなことしても戻ってこない。
「さあ、行こう、遊人はショックを受けている」
総一郎と愛花はクールに去った。遊人は腹いせにそのクレーンゲームの景品を掻っ攫う。ゲームは空になった。
大量の景品を抱えて歩く遊人は、ホテルのロビーに出た。そこでは、ソファで理架が夏恋を膝枕していた。山積みのぬいぐるみを抱えつつ、遊人は近づく。
「なんだ?」
「あ、遊人。大変なの、夏恋さんがのぼせちゃって」
最近、遊人は理架が自分を直江先輩と呼んでくれないことが寂しかった。いつからだろうか。遊人がよく病院で理架と遊んだ男の子とわかってからだろうか。
「なにこれ?」
「乱獲の結果。あー、夏恋は普段冷水のシャワーで風呂済ますって佐奈から聞いてたし、のぼせるのも納得だ」
夏恋は見事に茹で上がっていた。そんな生活をした人がいきなり風呂に入ればそりゃそうなる。
「おーい夏恋、大丈夫かー」
「う……」
ようやく夏恋も目を覚ます。夏恋からスポーツドリンクを受け取り、それを飲んだ。
「え…てっきり佐奈だと……」
夏恋は自分を膝枕してる人物が佐奈だと思っていたらしく、目を丸くする。実は自分が刺した相手とはとんだホラーだ。
「なんで、あんたが? 私は……あんたを……」
「え? いいじゃないですか。切り裂き魔事件だって夏恋さんがやらされていただけですし」
夏恋が言いたいことを言う前に、理架が結論付ける。遊人は和解の予感を感じ、そそくさとその場を離れた。
(助けて……)
「なんだ?」
声が聞こえ、遊人は周りを見渡す。この感覚は、理架のインフィニティ能力に近かった。本人曰く制御出来ないから封印したという能力は、脳波で他人と交信する能力。
「理架? なんか言ったか?」
「え? 何も」
理架は何もしていないとのこと。だが、この声がインフィニティ能力であることは確かだ。インフィニティとは人類特有の情報化競争社会に対応して進化した人類のこと。遊人の『観察眼』もその一つ。
(私を、探して)
「お前は?」
遊人の目の前に、一人の少女が現れた。長い銀髪をなびかせ、漆黒のドレスを纏う少女だ。ドレスは特異なデザインをしていた。肩、胸元、背中にかけて大胆に露出しており、スカートも右側にスリットが入っている。何故か鋼鉄のコルセットと篭手も身につけ、大鎌も手にしている。何かのキャラクターに見えた。
それから数日後、再びゲームで遊人とその少女、ネフィが再会する。この会合が最終決戦の戦端になる。
決戦ってのは前作の事件にケリをつけるってことだったらしい。




