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クラスメイト編1.雅とガジェットマニア

 三好雅

 出席番号34

 男子

 3月3日生まれ

 得意科目:国語、体育、家庭科、音楽、美術

 苦手科目:数学、理科、情報

 趣味:乗馬、華道、茶道

 特技:武道、古式泳法、習字

 ブレイドクロニクルプレイヤーではない。愛馬のデイアフタートゥモローは元々競馬の競走馬だったらしい。ただ、女性以外乗せない性格だったため売られた。唯一、雅を男性でも乗せる。三好家の動物は『女性の言うことしか聞かないけど雅の言うことは聞く』という理由から連れてこられる場合が多い。

 動物にも性別間違われる雅ェ……。


 木島ユナ

 出席番号36(転校生のため)

 女子

 3月14日生まれ

 得意科目:情報、数学、英語

 苦手科目:国語、美術

 趣味:コンピュータ弄り、プログラミング、PC自作

 特技:歌、ダンス

 ブレイドクロニクルプレイヤーだが詳細不明。サイバーガールズ随一のガジェットマニア。

 旧額田町 三好家


 雅の実家は岡崎市と2006年に合併した額田町にある。そこそこ広大なお屋敷で、三好家は地元の名士でもある。

 「繋がった」

 「出来るのか」

 その和室で、クラスメイトの木島ユナと雅はパソコンを覗き混んでいた。地元の名士であり市議会議員を務める雅の両親はネット選挙対策に余念が無い。旧額田町の声を議会に届けるため、何としても当選せねばならない。

 市議会議員の父親、三好風雅は若い頃こそ頑固親父で昔かたぎなところがあり、結婚相手にも『夫は外、妻は家の中』を徹底しようとしていた。それが政治の勉強に上京して出会った現在の妻、三好桔梗の優秀さに触れて女性の可能性を知り、生まれた息子が『性別:雅』といった感じなので古い考えを捨てるに至った。

 そんな三好家に呼ばれた木島ユナはパソコン等コンピューターに詳しい。高校生で唯一スマホを使い熟していると噂だ。だいたいの高校生は流行りにかぶれて、ゲームアプリしか使えないザマである。

 しかし、それ以上に彼女はアイドルグループ『サイバーガールズ』のメンバーだったのだ。事件でグループが壊滅してからは長篠高校に通っている。アイドルというだけあり、普通にかわいい。サイバーガールズ総選挙において第2位という実力者でもある。

 「ち、近いです……」

 「あ、すまない。暑いか?」

 クーラーの無い部屋で密着していたため、ユナは非常に暑さを感じていた。物理的なものと精神的なものだ。ハッキリ言うと、ユナは雅のことが好きだ。雅は事件の際に、メンバーの泉屋宮に成り代わっており、ユナが危ないところを救ったのだ。一目惚れである。雅にこうして呼ばれた際も、夏っぽいファッションでバッチリ決めるほど。

 雅は今、紺色の仁平を着てるため学校での印象と大分違う。薄着だと線の細さが、濃い色の服だと肌の白さが際立つ。処理不要と言わんばかりにムダ毛が無い肌は、男性ホルモンの不足を感じさせる。

 夏休みの間は雅を追っ掛けてもみたが、ことごとく逃亡の憂き目に遭った。時には愛馬のデイアフタートゥモローを呼び、時には鷹に掴まって逃げるなど煉那に並ぶ超人ぶりが原因だった。しかし、今日は逆に雅からオファーがあった。

 「いやー、ネット選挙だなんていうから困ってたんだ。僕にも出来ないからね」

 「このくらいならいくらでもやるよ。なんたって雅は命の恩人だし」

 ユナは夏休みのあの日のことを思い出す。雅に助けられたあの日だ。


 一ヶ月前 東京都 宵越テレビ本社


 木島ユナはサイバーガールズのメンバーである。そのイベント、総選挙においてメンバーが虐殺される事件があった。その日のユナは撮影のため、控室にいた。畳の控室だ。

 「……」

 いつも通り、スマホでツイッターをしていた彼女の心境は微妙だった。原因は控室にいる浴衣の少女だ。座布団を敷いて、ちょこんと座る彼女はメンバーの泉屋宮。

 しかし、どうも噂によるとメンバーの上杉冬香の応援に来た男子高校生が入れ替わってるらしい。そして、泉屋は死んだのだ。

 そういえば、泉屋は人気の秘密であった綺麗な黒髪をバッサリ切った。それは切ったのではなく、元々短かったのだとすれば納得がいく。

 ユナには何故、この男子高校生が泉屋と入れ替わっているのかわからなかった。事件もあり、サイバーガールズメンバーというだけで十分危険だ。なのに何故だろう。

 (でも犯人はあの人なんだろうな……)

 ユナの気分が消沈していた理由は他にもある。犯人に気付いてしまったのだ。自分は今まで騙されていたのか。

 「へ?」

 考え事をしつつツイッターをしていたら、冷たい感触があったので辺りを見渡す。すると、控室の扉からどんどん水が侵入し、控室が浸水していることに気付く。

 「これ…ゆかりの時に…」

 最初の犠牲者であるメンバーの縁が死んだのは控室で、何もないのに窒息死した。携帯には『水が入って来た』と書かれていたが、濡れた痕跡はなかった。連続するメンバーの不審な死。そしてユナは今まさに、それに巻き込まれていた。

 「ど、どうしよ……」

 咄嗟に、ユナはツイッターに現状を書き込む。『何か変な様な……水?』と混乱丸出しな文章になっていた。泉屋は目を閉じ、黙って座っていた。

 「あ、開かない!」

 扉も開かない。水圧が原因なのか。徐々に水が迫り、遂に顔に達した。普通の水なら浮かんで息継ぎが出来るが、何故かこの水は浮かべない。奇妙だ。

 (ダメ…息が……)

 もがくユナは目の前が暗くなるのを感じた。泉屋は相変わらず座っている。

 「そこか!」

 泉屋がいきなり立ち上がり、水中とは思えない動きで控室の畳を引っぺがす。その下に潜んでいた機械を引きずり出すと、難無くコードをちぎって破壊する。

 「ゲホっ、息が……できる!」

 すると、周りにあった水が掻き消えた。酸欠になりかけていたユナはその場に倒れこみ、朦朧とした意識で泉屋を見上げた。泉屋と入れ代わった男子高校生は何処かに向かって睨みを効かせ、呟いた。

 「甘いよ、プログラム。この僕、三好雅を殺すには程甘いんだ」

 それが木島ユナと三好雅の出会いだった。


   @


 雅の最高にカッコイイシーンを思い出し、ユナの体温も最高に上がる。知的で落ち着きがあり、女性の様な優しさを持ちながら、したたかで勇敢な男性的側面さえ持つ。カッコ可愛い、1人で2粒美味しい人物である。決め台詞にさえ育ちの良さが滲む。女装してアイドルとヒケを取らない美貌も魅力。泉屋宮は相当雅に似てもいたのだが。

 「ねぇ、汗かいちゃったから、シャワー借りていいかな?」

 「ああ、覗かないから安心しろ」

 ユナは急いでシャワールームへ向かう。汗だくでベタベタな姿など、とても雅に見せられない。好きな人の家でシャワーを借りるのもギリギリな気がしたが、まず汗が問題だ。雅は覗かないと言ったが、ユナは覗かれるくらいどうということはないと思っていた。むしろ、これが雅が自分をどう思っているのかのリトマス試験紙になるのだ。


 雅は脱衣所に消えたユナを見送ると、キッチンに向かう。冷蔵庫から麦茶の入ったピッチャーを取り出し、コップに注いで飲み干す。喉が渇くか渇かまいが、雅は定期的に水分を補給する。ピッチャーの中身が少なくなっていたので、コンロに置かれたヤカンから中身を継ぎ足し、冷蔵庫に戻す。

 「……」

 脱衣所の前を通りかかると、衣擦れの音が聞こえる。扉の向こうにユナがいる。そう考えると開けたい様な開けたらいけない様な、思春期男子らしい考えが巡る。シャワーの水音が聞こえた段階で雅はその場を去った。

 よく考えれば自分はユナのことを好きでも無かったな。なら見てはならないだろう。思春期男子ながら雅は女性に誠実である。


 果たしてこの結果はユナにとってどうなのか気になるところだ。

 (雅の性格からして、覗かないってことは私を特別扱いしてくれてる?)

 シャワーから出たユナは服を着て、リトマス試験紙の反応を分析する。生徒会長の佐原凪が言うに、雅は男らしさを証明する為に、わざわざ夏恋がバイトしてるコンビニでいかがわしい本を買おうとして、他でもない夏恋に止められたらしい。

 『お客様、間違われています。女性向けのはあちらになります』

 『僕は男だぁ!』

 そんな漫才をした噂話から、こう分析したが間違いである。遊人が聞いたら『どこをどうしたらナンセンスだな!』くらい言いそうな分析だった。

 移動した雅を追い、さっきいたのとは別な和室に向かうユナ。

 「なぶっ!」

 そこで彼女はショッキングな光景を目の当たりにする。

 「お、ユナ。今カラス避け作ってるんだよ」

 今しがた雅が作っているカラス避けとは、カラスが農作物に被害をもたらさない様に、CDなど光るものを吊すアレである。そのCDがユナの所属していたサイバーガールズのものだというのが問題だ。

 「このCD……」

 「総選挙の投票権をこれに、しかもアルバムに付けるか。阿漕な商売だよね」

 ユナはCDの扱われ方に落胆した。そのCDは解散したサイバーガールズ最後のアルバムである。投票権目当てに大量購入され、いらなくなってポイされたのだ。元ファンもメンバー死滅というチャゲ&飛鳥より復活が望めないグループの布教活動に限界を感じていた。

 生き残ったメンバーは木島ユナ本人、直江遊人の幼なじみで長篠高校にいる稲積あかり、同じく長篠に先輩としている黄原彩菜、ドラゴンプラネットの巨大攻略グループ『学園騎士』のサブリーダー『スカーレット』こと赤野鞠子、そして入院中の海原ルナ。事件で生き残ったが、上杉冬香は実の姉に惨殺されて死んだ。

 二度と復活出来ないグループ。それがサイバーガールズ。主要メンバーが無惨な死を遂げ、生き残りも日常に帰ったのだ。

 「そうガッカリしないでよ。1枚は貰うからさ。ほら」

 雅はCDプレイヤーにアルバムを入れ、イヤホンを指す。イヤホンの片方をユナの耳に入れ、一緒に聞こうとする。すると、必然的に密着する形になる。

 「ユナが歌ってるの、どれ?」

 「へ?」

 「たくさん人数いるからさ、歌ってる曲とそうじゃないのあるよね?」

 「5番の、『あなたの心にダウンロード』……です」

 ユナがセンターを勤めた曲を教える。死んだ秋庭椛とのデュエットだ。あまり親交は無かったが、二度と会えないとなると悲しくなる。

 「この曲……あ、ゴメン!」

 雅が慌ててユナの頬を拭う。気付けば、ユナは涙を流していたのだ。ユナ達生存者組はあの事件で多くの仲間を失った。その傷は未だ癒えない。普段は気丈に振る舞う彼女達だが、いつそれが崩れるかもわからない。

 「ううん、大丈夫……」

 生存者組だけではない、あの事件に関わった人間は何かしらの爪痕を残された。それこそ直江遊人みたいに感情が腐った奴で無い限り。

 雅は秋庭椛が目の前で落馬するところを見ている。黒幕の策略で暴れた馬から振り落とされ、コンクリートの地面で首を折った。その音を嫌に覚えている。屠殺を見たことがある雅でも、人の死は初めて見た。

 (救えなかった分、目の前の奴を救おう。そうすればあっちで秋庭も安心できる)

 雅はユナの肩を抱いて引き寄せる。もしかしたらユナが自分を追い掛けるのは、事件の傷をごまかす為かもしれない。雅はそう感じていた。

 今回、雅が聞いていたアルバム

 『サイバーガールズ 足跡のアルバム』

 価格 4800円→後にブックオフで100枚10円

 あまりに大量購入されすぎたため。雅は地元のファンから回収し、カラス避けにした。

 オリコンチャート ウィークリー1位、マンスリー1位

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