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7.最終決戦?

 武器の知識まとめ

 武器のステータスは威力を表す『攻撃力』、より固い敵を切れることを示す『切れ味』、弾かれ難さに繋がり、攻撃力や切れ味にも影響を与える『重さ』、刃こぼれや壊れたりしにくさを表す『丈夫さ』、技の狙いにアシストが付く『正確さ』に別れる。

 武器は素材を使って強化が可能。強化すると素材によって『経験値』と『補正値』が得られる。例えば、『鋭い牙』を素材にすると10の経験値と切れ味に5の補正が入る。ただ、重さの補正が入ると結果的に攻撃力が増すなど、完全にステータスは独立してるわけではなく相関関係にある。

 属性を与える素材もある。この属性は膨大な経験値を持つ『無色鉱石』で打ち消せる。

 経験値を一定量貯めるとレベルアップ。武器の能力が底上げされる。重さだけは武器次第で重くなるものと軽くなるものがある。レベルが上限に達すると強化が出来なくなる。

 そのため、強化に使う素材は得られる経験値が少なく補正が大きいものが優秀とされる。

 特定の素材で武器を『進化』させられる。例えば、双剣のボーンスプラッシュは『大きな骨×1 鋭い牙×5』でボーンスプラッシュ改に進化する。この時、進化前の武器のステータスを一部引き継ぐ。そのため、レベル上限までの強化が好ましい。ただし経験値は0になりレベルが1に戻る。このため、同じ武器でも進化から作ったものの方が強い。

 属性に関してはあとがきで。

 岡崎市中央図書館 控室


 「あなた達がワタクシに用がありまして?」

 「そうだコンチクショーめ!」

 「あらあら汚い言葉遣いに白髪。これだから男は」

 俺は図書館に講演会に来たという梅面『名誉』教授と対面していた。派手なスーツを着て濃い化粧をし、男を侮蔑する発言をする彼女の姿はフェミニズムを『男性を差別する考え方だ』と誤解させるには十分なキャラクター性であった。

 黒澤教授によると、基本的に欧米のフェミニスト達は『男性と同じ責任負うから権利くれ』という主張が多いらしいが、日本はどうも違うみたいだ。少なくともこいつを見ていると、欧米フェミニストの様な不利益も飲み込む気高き平等思考は見られない。

 「白髪関係ねーだろが!」

 「そうですよ、これは作者がベタ塗るの面倒で……」

 「藤井さん、それもちゃうわ。ルパンとかスーパーサイヤ人とか作者が手間省く為にキャラデザ工夫した例はあるけど」

 関係無い白髪を責める辺り、こいつの人柄が知れる。最低の屑だ。

 「なんだハズレかよ。帰ろ」

 門田は梅面『名誉』教授をハズレと断定してさっさと帰った。そうだ、それでいい。こんな面倒な奴の相手なんか普通はしなくていいんだ。

 「逃げるんですか? 正論じゃ勝てないと知って逃げるんですか? 反論出来ないから逃げるんですか? これだから男は……」

 「面倒臭せえ!」

 しかしその面倒を避けた相手にも噛み付くとは面倒を通り越して一周回って面倒臭い。相手にもされてないってことに気付けよ。なまじ信奉者がいるせいで性格が悪化してるんだろうな。自分が取るに足らない存在だと気付かずに。

 「聞きましたよ。その白髪に長篠高校の制服、あなたが墨炎なんでしょ? そうまでして、愚かな男という性から逃れたいの?」

 「アバターごときでそこまで深読みされちゃあたまったもんじゃあありません」

 たまたまの事故で与えられたアバターをそんな風に捉えるだなんて……。ゲームは脳波で男女を認識してアバターを与えるのだが、俺の場合はそれが事故ったのだ。ブレイドクロニクルのサブアカウントでアバターを作ったのだが、そっちも性別反転しちゃったしもう仕方ないね。

 「ちょっと、本を探しに来たんじゃないの?」

 「あれ、椿?」

 後ろから草履っぽい音がしたから振り向くと、椿が夏恋と蛍を連れていた。蛍は誰かを拘束している。

 海原蛍。黒羽椿の側近で俺と夏恋のクラスメイトだ。なんかいろいろぶっ飛んだ奴だけど椿が信頼してるくらいだし、俺は特に警戒していない。ウェーブのかかったセミロングの黒髪に男子用の制服を着用した姿が特徴的だ。

 「控えおろぉ! こちらにおわすお方をどなたと心得る! 私も忘れたぁ!」

 「お前の主君だろ!」

 「……ってスケさんが言ったら視聴率上がるよね、お嬢!」

 いきなりこれだよ。さすが蛍。苗字からよく勘違いされるが、蛍はサイバーガールズの海原ルナと何の関係も無い。同性さんなんて山ほどいるんだよ。

 「とにかく事情を説明なさい! 夏恋さんを誘い出して何をするつもり?」

 「そしてスルー。途中参加の俺にもわかる様に詳しく」

 いきなり椿の話が始まった。多分、蛍に捕まってるオバハンが夏恋をおびき出して何かしようとしてたって話だろうけど。そこを夏恋に同行した椿達に捕まったんだな。

 「どうやら、秋穂の噂を流したのは私に用があるからみたいね。直接言えないのは、やましい用事だからか?」

 裏社会にいる椿や蛍と並んでも霞まない殺気を滲み出す夏恋。というか殺気の密度が一番デカイ。こいつの過去を知ればそれも納得だ。赤いオーラが見える。流石、元切り裂き魔。

 「誰かに悟られると面倒だからよ。特に、そこにいる白髪とか!」

 「また俺かよ。お前は俺に親でも殺されたのか?」

 こいつは俺になんか恨みでもあんのか? その理由を聞いたら面倒だと第六感が告げているが、つい口をついて聞いてしまう。

 「恨みならありますとも! 女性蔑視の象徴、大日本帝国軍の軍人、新田遊馬のクローンめ!」

 「何を言っている? クローン? スターウォーズの見過ぎじゃないか?」

 やはり遊馬絡みか。ならクローンなんて事実は公表しないであいつを頭おかしい扱いにすればいいや。

 「クローンなんてそんな非現実的な……」

 「だとしたらこいつの細胞は羊並よ」

 椿と夏恋は何とか俺の策略を察してくれた。ナイス、ハイセンスだ。しかし羊並は酷いんじゃないかい夏恋さんよ? 確かにクローン羊のドリーの命日と俺の誕生は一緒の2月14日だがな。バレンタインじゃないぞ、ドリーの命日だからちゃんとジンギスカンで弔おうな。

 「クローン? 何を言ってるんです?」

 「何って、クローンですよ。ジュルリ」

 佐奈と蛍も策略に乗ったか。いや蛍は素でクローンを食い物だと思ってるみたいだ。なんて奴だ。キャラが迷走してやがる。

 「ぐぬぬ……これだから男は! いいですか夏恋さん! あなたを道具の様に利用したのは男なんですよ?」

 「助けてくれたのも男のわけだけど?」

 梅面名誉教授が言ってるのは上杉季節のことだな。椿達が海外逃亡しかけたあいつをスカッとやっつけてくれた。夏恋の言うことこそ正論。男や女にだって色んな奴がいるさ。

 「その男はまだ本性を現していません! すべからく男は狂暴で愚劣なのです! 優秀な女性の皮を被った時にそれは現されるのです!」

 梅面名誉教授はトチ狂って3DSを取り出した。それを某ドラクエのラーの鏡みたいに使って俺の正体を暴くつもりか? ラーの鏡は魔物の変身とかを解く道具、俺に効果は無い。

 「わー、正体がバレちゃうよー」

 「怖がらなくても、そこの女性達は聡明にして既に気付いています。さあ、ブレイドクロニクルで対戦です!」

 俺は名誉教授を馬鹿にするつもりでわざとこんな下手くそな演技をしたのだが、梅面名誉教授は本気で俺がビビってると思ってるみたいだ。

 それにしても、あちらさんからこっちの土俵に飛び込んで来るとは意外だ。だいたいいつも相手を挑発するなり脅すなりで引きずり込んでるからな。今回はお偉いさんをゲームに引っ張る手間が省けそうだ。

 「よろしい。対戦ならいつでもウェルカムだ」

 「私、観戦します」

 「私も」

 こうして対戦が始まる。佐奈と夏恋が観戦するとさ。場所を会議室に移る。何でも、対戦の様子をプロジェクターで映したいとか。これで対戦の内容は全員の知るところになる。梅面の部下である若い女性達が機械をセットして準備完了。対戦スタートだ!


 対戦フィールド コロッセオ


 「よし、いつでも来い」

 「今回の対戦フィールドはコロッセオですね。落ちたらゲームオーバーです」

 今回選択されたのはコロッセオ。ローマに有りがちな遺跡での戦いだ。コロッセオはボロボロで、観客席とフィールドの外周との間には水が流れている。ここに落ちたら外へ流されてゲームオーバーの厳しい戦いとなる。

 「佐奈がエレノアだったのか」

 「気付きませんでした?」

 観客席に見覚えがあるサキュバスがいたが、これが佐奈のアバターだ。リアルが清楚っぽい見た目のせいで、正反対なイメージのサキュバスになると大変わかり難い。ただ、素の部分に彼女元来の丁寧さは出ていた。

 「気付かなかったの?」

 「佐奈がゲームをやること自体驚きだ」

 夏恋のアバターはいつも通り。アバターの見た目こそドラゴンプラネットからコンバートしたといえ、よくそこで装備してた赤いドレスに似てる防具を見付けたな。真夏なんてそれが出来ないから見つかるまで防御性能ゼロの白いワンピースで代用してるのに。

 「武器変えた?」

 「わかる?」

 夏恋が俺の武器が強化されていることに気付いた。ボーンスプラッシュから強化したわけではないのだが、水属性の付いてる双剣『ダイダルウェイブ』なる武器に変えた。水属性を弱点とする敵は少ないが、綺麗な剣なので気に入ってる。刃が透き通ってやがる。

 これは素材を集めて一から生産し、強化もした。水属性は弱点を突ける敵が少ないため需要が無いみたいだ。残念。

 「よし、あいつが名誉教授のアバターか」

 「ガンバ!」

 目の前に鎧を着て、盾と槍を持った金髪のアバターが現れる。髪のふわりとしたウェーブや外見的特徴からイメージはジャンヌ・ダルクか。円錐の形をした槍というよりランスに近い武器は聖属性槍の基本、『オルレアンリベレター』だ。盾はまだそこまで高性能なものが作れないのか、丸い小さなバックラーみたいなもの。バックラーに張られた皮の模様からして、『ノシシバックラー』だな。

 装備品は及第点だ。初期の盾なんて紋章みたいな形で小さいという、壁をするにも受け流すにも不十分な代物。小さくてショボいとはいえ受け流しが可能なバックラーを装備出来たというのは初心者最大の壁、イノシシ型ボスモンスター『キバノシシ』を倒した証だ。バックラーにはコイツの素材が使われている。

 本来、槍を使うならコイツの素材から作れる装備を一式で揃えるのがオススメだ。攻撃時の突き出しや防御時の踏ん張りなどが強くなる『突進力強化』、ジャンプやフットワークに補助が付く『身軽』など、防具が与える恩恵もデカイ。防具には装備すると恩恵を与えてくれるものがある。

 例えば俺の鎧は闇属性が強くなる『闇属性強化【大】』、切れ味が増す最強の恩恵『剣聖』、攻撃力が増す『攻撃強化【大】』が付いている。また強大な防具にはマイナス補正が付くものや、恩恵を発動させるのに一式揃えるなど条件があるものがある。

 「名前は……ジブリールか」

 イスラム教徒大激怒シリーズか。たしかジブリールって英語読みでガブリエル、イスラム教においてはかなり偉い天使だったな。クラスメイトが言ってたぞ。

 「さあ天罰を下そう! 女性の皮を被った男よ!」

 「来いよ名誉教授! 名誉なんか捨ててかかってこい!」

 そんなわけで開戦。ジブリール名誉教授は俺同様、声をアバターに合わせて変えている。なぜこいつがゲームをしようだなんて思ったか謎だ。

 「【宵闇装束】、【奈落斬】!」

 俺は佐奈エレノアとのクエスト連戦の末に習得した新技を見せる。ただ闇を両手の剣に纏う技だが、切れ味や攻撃力の上昇率が高い。さらに、一回の使用で両手の剣に闇を纏わせられる。【苦悶撃】や【奪命撃】は二刀流向きの技じゃないのか、同じ闇の量で片方の剣にしか使えなかったからお得だ。

 「【光の盾】!」

 ジブリールは盾を輝かせ、俺の2撃を完全に防御。この絶対防御は異なる考えを受け入れない奴の偏狭さを示す様な技だった。

 「【絶断斬】!」

 だが、俺はまだ技1回分の闇を残している。新たな技をここで使う。苦悶撃の斬撃飛ばしバージョン。スリップダメージが無い分、ダメージや切れ味が大きい。

 「【光の盾】!」

 ジブリールはまた光の盾を発動。しかし、その防御は破られた。ゲームバランスを考えれば当然だ。絶対防御系の技は連続して出すと失敗する。そうしないと相手に一撃加えて絶対防御で逃げ切る戦法が流行ってクソゲー化が進むだろう。

 「く、貴様!」

 ジブリールのHPを3割削っただろう。ここからが本番だ。コロッセオのフィールドギミックを使うことにする。コロッセオの壁にはいくつか檻はめ込まれている。こいつを破壊して猛獣を解き放つことが可能だ。その放った猛獣次第では恩義を感じて味方になる場合や見境無く暴れ回る場合もある。

 まさに蛇が出るか鬼が出るか。多数のコロッセオでの対戦動画をニコニコ動画で見続けた俺でも、さすがに一番ヤバいという『グレンシシ』を出した奴は見たことがない。普通のクエストでボスとして登場しても無対策で倒せる相手ではない。

 「檻を破壊するつもりですか!」

 俺の企みに気付いたジブリールが先行して檻の破壊に出向く。俺は後退してジブリールの檻に対する攻撃回数を数えた。

 壁とフィールドの間には水路があるのだが、ジブリールがいるところは檻に到る為に橋がかかっているのだ。

 オルレアンリベレターの攻撃力なら檻はどの程度で破壊できるか。武器の見た目からして強化はしていないだろう。武器は強化すると年季が入った様な古めかしさやあちこちに戦いの傷が出来る。それが無いってことは無強化に近いはずだ。強化したからってすべからく全武器に年季が入るってわけではなく、俺のダイダルウェイブなんかは強化すると輝きが増すタイプだったりする。ただ、オルレアンリベレターは年季が入るタイプだから間違いない。

 「【スワローテイル】!」

 俺は剣から青い帯を放つ。スワローテイルが届くまでにジブリールは1回ほど攻撃できるから、それを計算に入れたタイミングでの攻撃だ。

 「よし」

 「何!」

 計算通り、ジブリールの一撃の後にスワローテイルが檻を直撃。そのまま破壊する。この方法をとった理由は、狂暴な獣が檻にいたら真っ先に近いジブリールを狙い、従順な獣なら俺に従い、やはり近いためジブリールを攻撃しやすい。

 中から猛獣が出て来る。ジブリールは猛獣が吐いたらしい炎に吹き飛ばされた。これは大ダメージだ。

 「まさか……」

 しかし俺は絶望することになる。だって出て来たのがグレンシシだもの。獅子という名前が指す通り、でかいライオンだ。サイズをいえば2トントラックくらいだ。それがどれだけデカイか、お分かりいただけただろうか。真っ赤なライオンが怒りに吠える吠える。

 「私、グレンシシを出す人初めて見た」

 「俺自身もだよ」

 夏恋もコロッセオでグレンシシを出した人は初めて見たらしい。何を隠そう俺め初めて。まさか自分が出すことになるだなんて。

 「何とかしなさいよ!」

 「断る!」

 「男でしょうが!」

 クエストのボスで出るならまだしも、こんな場所に出るだなんてな。準備無しで何とかなる相手じゃねーよ。こいつはタイタンバイソンみたいに乱入とかじゃなくてれっきとしたフィールドギミックだからエレノアや夏恋の手は借りれない。

 しかしながら偶然の悪戯なのか、俺は奴の弱点水属性の剣を持っている。武器の属性は、武器の攻撃力全てに付与されるわけではない。例えばこのダイダルウェイブなら攻撃力とは別に『水属性:160』が付いており、こいつの160の威力は防御力ではなく敵の属性耐性に左右される。グレンシシは水属性が弱点だから、ダイダルウェイブで斬りつけると属性ダメージが倍加して一撃で320相当のダメージになる。しかもそれは相手の防御がいかに固くても、防御力ではダメージを減少させられない。

 簡単に纏めれば、敵の弱点を突けば大ダメージを与えられるってわけ。双剣は特にその大ダメージを手数多数で叩き込むから弱点の見極めが重要になる。また敵によっては、頭は火属性が弱点なのに胴体には火属性が効かないなんてこともあるから注意だ。ともかく、属性を利用する利点は『防御無視の大ダメージ』一点だ。

 「ダメ元で倒すか」

 というわけで倒すことに。まずは頭を狙って牙を破壊だ。檻の破壊ボーナスで貯まった必殺技ゲージは十分。

 「【宵闇装束】、【奈落斬】! 【奈落斬】!」

 まずは頭に切り掛かる。奈落斬を2回ぶっぱしたらひたすら通常攻撃連打で必殺技ゲージ補充。闇属性が付く宵闇装束からの派生技だが、残念ながらグレンシシは闇属性に耐性がある。しかし俺が欲しいのはこの技の威力。属性も上書きされずに、ちゃんと水属性が残ってる。

 俺はこの得体の知れない技を徹底的に調査した。基本的に属性付与の技は武器との相性が重要になる。例えば宵闇装束から派生する技を光属性の武器で出すと相性が悪くて闇属性は付かなくなる。しかし、ダイダルウェイブは闇属性と相性がいい。このダイダルウェイブを特定の素材で『進化』させれば将来的に闇、水属性複合の『酷ク冒涜的ナ水流ノ双剣』っていう武器になるからだ。極論をいえば、属性の無い武器が一番属性付与の技と相性いいけどな。

 「【宵闇装束】、【奈落斬】! 【奈落斬】! 【宵闇装束】、【奈落斬】!」

 貯まったらただただ必殺技でフルボッコ。ひたすらフルボッコ。よっしゃ、何十発奈落斬喰らわせてやっとだが頭一段階破壊。グレンシシは頭だけで数段階の破壊がある。まず、右の牙が折れた。切れ味が悪くなっていそうだが、ダイダルウェイブは切れ味に定評があるし、もう属性でごり押しだ。切れ味不足で弾かれたとしても属性だけは通る。相性を見極めて弱点属性の武器を引っ提げてくだけで戦いが楽になるからいいよな。

 「【宵闇装束】、【奈落斬】! 【奈落斬】!」

 また同じことを繰り返す。頭は割かしダメージが通り易い。早めの撃破を狙うなら頭を切り刻め。

 「【ライジングスラッシュ】! 【シザーネイル】!」

 必殺技ゲージの微調整とマンネリ化を避ける為に秘伝書で覚える水平斬りと突き攻撃を撃つ。元々ゲームをプレイして、その画面を動画に撮ってサイトにアップすることを生業としていた俺は自然と魅せるプレイをする様になっていた。まずゲームをしていて考えるのは、素材や経験値集め効率より自分や見てる人が楽しむことだ。

 「【ライジングスラッシュ】!」

 水平斬りを綺麗に決めてもう片方の牙を破壊した。まだだ、まだ頭は破壊出来る。もう一度、宵闇装束からの奈落斬で頭を斬り続け、右目を潰した。隻眼の猛獣は強い風潮があるのだが、部位破壊では格好がつかんな。

 そのまま俺は奴の後ろに回り込み、尻尾を狙う。グレンシシの弱点は水属性だが、それは頭と尻尾、前足にしか通用しない。それとプラス尻尾も切断したいからだ。グレンシシの尻尾はライオンのそれと違い、太くてしっかりしたものだ。これは切り落とし甲斐がある。肉厚だ。

 「オーラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ! よし尻尾ゲトー」

 またも通常攻撃連打。さすが弱点突いてるだけあって尻尾切断も早い。ここまで戦ってみて、やはりグレンシシは対戦に支障が出ない程度には弱体化してるのだと断定出来た。普通なら弱点突いてもこんなに楽な相手じゃない。

 「遊人、早く決着を……」

 「よし、死にさらせ!」

 「いやそっちじゃなくて!」

 夏恋の忠告も聞かずに倒れたグレンシシに畳み掛けたのはゲーマーの悲しき性か。右の前足に今度は連打。それが終われば左の前足。これでグレンシシは全ての部位を破壊された。

 説明を忘れて戦ってしまったが、敵の中には部位破壊出来るものがいる。部位破壊すると敵が弱体化したりレアな素材が手に入るから積極的にやろう。

 「後はトドメだ!」

 「させません!」

 敵が弱ったのを確認したのか、ジブリールがトドメを奪いに行く。しかし左前足が放つ猫パンチに吹き飛ばされ、そのまま突進攻撃を喰らった。南無三。

 ジブリールは既にHPの大半を失い、ギリギリで持ちこたえてる状態だ。一撃喰らったら死ねる。このまま自滅による決着も不満なので、俺はジブリールを助けてやることにした。

 「これでトドメだよっ!」

 渾身の一撃をグレンシシに喰らわせて倒す。グレンシシは崩れ落ち、青白いウインドウが死体近くに浮かんだので触れる。

 ジブリールもそのウインドウに触れに行ったが、なんと哀れ、最後にグレンシシが身をよじったわけだがその時に前足にぶつかってダメージを受け、戦闘不能だ。普通、これで死ぬHPならグレンシシの攻撃掠っても死んでるもんだがな。

 「ありえん!」

 『対戦に勝ちました』

 「……」

 「……」

 「……」

 結果のウインドウが俺の目の前に浮かぶ。なんか釈然としない。ジブリールはHPを失い、青い光となって砕け散る。これは酷い。

 「素材」

 「ん」

 『炎獅子の鬣×1、炎獣の骨×3、炎獅子の毛皮×3、炎獅子の血液×5を入手しました。部位破壊報酬! 炎獅子の王冠×1、炎獅子の牙×2、炎獅子の尻尾×1、炎獅子の爪×2を入手しました』

 夏恋が手に入れた素材を確認する様に促す。仕方なくウインドウを確認すると、かなり豪華な報酬が入っていた。だから尚更やるせない。

 「帰るか」

 いつまでもここにいたって仕方ないので、現実世界に帰還した。会議室に意識を戻した俺は、椿達やアシスタントらしき女性達が決着に呆然としていたのを見た。なんだこの空気。あの騒がしい蛍すら黙るレベルか。

 「前半の後半が一気に覚めましたね、お嬢」

 「それを言うなら興奮。確かに興行としては最悪なレベルよ」

 それでも口を初めに開いたのは蛍だった。確かにあの決着は無いわ。

 「ライオン倒してた時はゲームわからない私達も楽しかったですけどね……」

 「自分の考えに自信無くしました」

 アシスタントらしき女性達は何か考えを改めたのか、さっさと会議室を去った。誰かの価値観を俺のプレイで変えることが出来たなら、俺が戦った甲斐があったんだろうな。

 「お前……何でこのゲームを潰そうとしたんだ? 潰そうとする奴があそこまで真面目にやるわきゃないだろ」

 俺は梅面名誉教授に聞いてみた。ジブリールの装備は初心者を離脱した時に作れるもの。かつてドラゴンプラネットオンラインを潰そうとした奴らはデータを書き換えて強くなるチートとやらを使っていたな。

 「ゲームというのは常に男の欲望が表出されているのです。優れた女性は面と向かって潰すことくらい容易なのです」

 まともな答えを期待した俺が馬鹿だったよ。やっぱりこいつはこいつか。

 「では帰ります。こんなアホなことはしていられません」

 「アホはオメーだ」

 梅面名誉教授は会議室を去る。今回の敵の特徴は大方掴めた。とにかく面倒臭い、これに限る。

 武器の知識まとめ

 属性編


 武器の属性は攻撃力とは独立している。例えばダイダルウェイブは攻撃力と別に『水属性:160』という数値を持っている。属性ダメージの計算はこれで行われる。

 属性ダメージに影響するのは敵の持つ属性耐性。弱点を突けば防御力を無視したダメージが入るが、耐性と武器の属性が被れば1ダメージたりとも通らないなんてことも。属性武器は同ランクの無属性武器と比べると元々の攻撃力は低い傾向にある。そのため、属性武器を使う時は相手の耐性に注意。

 状態異常系の属性は、例えば『麻痺:25』という数値の場合、攻撃を繰り返して敵の持つ『状態異常達成数値』に達すれば状態異常を引き起こせる。例えば、麻痺の状態異常達成数値が200の敵を前述の『麻痺:25』という数値を持つ武器で麻痺させようとすると、最低でも8回攻撃させて相手に200分の数値を与える必要がある。つまり、状態異常系の属性数値はダメージではなく、敵をいかに早くその状態異常に出来るかということを示す。

 この属性も素材で強化可能。無属性武器にも属性補正のある素材を使うと属性が付く。しかし『進化』させる際、進化した結果生まれる武器が属性を持っていた場合はそちらが優先されるため、進化前に持ってた属性が無くなる可能性がある。

 進化後と同じ属性を持っていた場合、単純に属性の数値が合計される。例えば進化前に、無属性を強化して『雷属性:100』を持たせた武器を、基本として『雷属性:50』を持つ武器に進化させた場合、雷属性の数値は150になる。

 違う属性の場合は2つの属性の相性で両方の属性を持つか否かが決まる。相性が悪いと進化前に持っていた属性が消えて進化後の属性になる。例えば光属性持ちに進化する無属性武器に『闇属性:100』を強化で与えても相性が悪くて消える、など。

 いろいろ例外もあるためわかりにくい要素だが、基本的に『光と闇』、『炎と氷』、『炎と水』、『雷と土』は相性が悪いとされ、風属性はさほど相性の悪い属性は無いとのこと。状態異常系の属性はまだ研究中。

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