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番外 今更七夕

 番外は常に現実のイベントとリンクする。例え本編が春でも冬のイベントをするのだ!

 直江家


 「七夕ってのは、7月7日にパンダの餌に短冊吊して叶いもしない願いを書くアホみたいな行事だ」

 「その説明はどうかと思うぞ?」

 遊人はマンションのベランダに笹を飾りながら妹の真夏に説明する。遊人の姉である愛花あいかはツッコミを禁じ得ない。

 「いやそしてなんで今更名前にふりがなが?」

 「某ラブプラスに同じ漢字でマナカって読ませる奴がいましてね」

 今更なふりがなも国民的恋愛ゲームが原因。遊人はゲーマーだが、ラブプラスはしていないそうだ。

 《いえ、そういうのは短冊売りたい会社の思惑と気付いていますので》

 真夏はホワイトボードに思いの丈を書き記す。女の子らしい丸文字ではなく、正統派な達筆であるのは真夏らしい。常にポーカーフェイスで無口キャラみたいだが文面はかなり饒舌。達筆にして速筆だ。

 「というわけで今回は達筆短冊コンテストだ!」

 「真夏の独壇場じゃね?」

 《こういうことをやってます》

 遊人の提案は、綺麗な短冊を作った奴が優勝というイベント。いつも家族でこんなことをしているという旨を真夏はベランダにいる客人二人に伝えた。

 「それはまた……」

 「どこから突っ込めばいいの?」

 愛花の婚約者、真田総一郎とその娘、真田理架。ごく一般的なシングルファーザー家庭には遊人達のぶっ飛んだ遊びは理解出来ないだろう。早速慣れた手つきで愛花と真夏は短冊を作り始めた。

 真夏も直江家加入は最近だが、さすが適応力が高い。

 「これは毎年やっているのか?」

 「そ、毎年。ただ短冊飾るのに姉ちゃんが人生20年くらいで飽きてな」

 総一郎は遊人に事情を聞く。なんかイベント事は捻りたい家系なのだ。遊人は大量の筆記用具を総一郎と理架に差し出した。

 「筆記用具なら死ぬほどあるから。真夏が集めたやつ」

 「う、うむ。ではやろうか」

 こうして真田一家も短冊を作り始めた。そして、順に短冊が発表されていく。

 「あたしのはこれだ!」

 愛花の短冊は既に短冊ではなかった。ペーパークラフトでドラゴンになっていた。妙に器用だ。

 「貴様のその紙が短冊で、あるものか!」

 「……。うちの弟は錯乱しているようだ。願い事が書いてあるだろ?」

 そんなドラゴンにも最低限の願い事が書いてあった。遊人と真夏がそれをしっかり見る。

 「何々……。いかん、近眼で見えん」

 《癒野の奴にも結婚相手が見つかりますように》

 真夏が願い事の内容を一字一句漏らさず遊人に伝えると、ベランダをよじ登って栗色の髪の、白衣の女性が現れた。

 「余計なお世話よ!」

 「ぎゃああああっ!」

 彼女こそ愛花の友人、癒野優。普段は穏やかなお姉さんキャラだが、よりによって初登場が番外でキャラ崩壊モードとはあんまりである。

 「すっかり結婚が決まって腑抜けたわね直江愛花! 結婚なんて人生の墓場よ!」

 「それよりベランダをどーやってよじ登ったし」

 地獄の底からはい上がった癒野は明らかにベランダを登ってきたわけだが、頭脳労働担当の彼女にそんな身体能力は無いはずだ。遊人はそこが気になった。

 「立体機動装置。最近某巨人アニメが人気だから警察でも採用しようかなーって猫谷が作ったの借りてきたのよ」

 「ああ、あいつパソコン出る前は機械担当だったしな」

 癒野は腰に、ポーチみたいな機械を付けていた。アニメにあったアイテムの再現なのだが、だとしたら猫谷凄い。実際にベランダ登れたわけだし。

 「プラス、母親が大量のお見合い写真抱えて我が牙城に侵入したからブチ切れて」

 「癒野さんがブチ切れるところが想像出来ない……。怒る時も笑ってそうですし」

 「結婚のこと聞かなきゃ怒らないわよ。ちょっとやそっとでブチ切れてたらカウンセラー勤まらないわ」

 理架は癒野が怒るところすら見たことがなかったという。付き合いの長い愛花や遊人すら、彼女が愚痴るところは見ても本気で怒るシーンは見たことがない。だからこそ、数多の壮年女性を退けて「岡崎署の聖母」たりえるのだが。

 「結婚の話は禁句よ。子供欲しいなら無理に結婚せず里親になればいいの。恋愛史上主義ロマンティックラブイデオロギーなんかクソ喰らえ! 恋愛を史上と思い込んでるバカップルを駆逐してやる! 心臓を捧げよ!」

 癒野は意味不明なテンションでベランダを飛び降りた。あんまりストレスを溜め込んでも悪いので、彼らはバカップルの2、3組が駆逐されることには目をつぶった。

 「で、真夏の短冊だが」

 「姉ちゃんが尺使い過ぎだよ」

 愛花が時間を使い過ぎて尺が足りないので一気に紹介しよう。真夏はやはり、筆ペンで達筆に書き上げる。総一郎も社会人らしく綺麗な字だ。理架は数式を書き込んでいた。

 「俺の番か。これだ!」

 遊人は大量の短冊を出した。なんと、クラスメイト全員に書いてもらったらしい。

 「どうだ、これが俺の人望だ!」

 「お前書いてないよな?」

 「うっ!」

 しかしそれは自分が書いてないことをごまかすための布石だった。そう、直江遊人には弱点がある。恐ろしく字が下手くそなのだ!

 「遊人って字が下手だもんね」

 《気にしなくていいんですよ?》

 「見るなあああ! 同情の目で見るな! あと理架は数式書いただけじゃねえか!」

 妹と後輩から同情の目を向けられ、完全に錯乱する遊人。いつの間にかあった立体機動装置を付け、ベランダの手摺りに足をかける。

 「ちょっと癒野と合流してバカップル狩って来る。心臓を捧げよ!」

 直江遊人はその場を離脱した。しかし悲しいかな、運動神経が癒野より低くてそのまま墜落。

 「イエエエェェェェェガアアアアァァ!」

 「なんであいつはあんなに運動神経が無いんだ?」

 愛花は地に落ちた鳥となった遊人をベランダから見下ろす。幸い、今回は番外でギャグパートなので生きている。本編なら死んでいた。

 こっそり世界紹介

 真田総一郎

 元宵越新聞記者。ただし前作第一部で内部告発に参加し退社した。理架の父親。

 紳士的な人物だが、実は非常に腕っ節が強く、愛花による不意の一撃も受け止めるほど。何故彼が表五家の一部でクソみたいな宵越新聞にいるのか。それは理架の生活を安定させるためである。

 つまり、総一郎は高い給料を散々毟り取るだけ毟り取って、内部告発で宵越新聞と宵越テレビを破壊してさっさと逃げたダンディさん、というわけだ。

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