◆伝統の古都、京都
京都にやってきました。
我々は西へ車を走らせる。つまり、夕日へ向かって車を走らせる。今日という日を終わらせたくない。そんな感傷的な気分になる。そう、『走れメロス』の一節*4を思い出させる。もちろん、全裸で走ってはいないし、車で走っていたから吐血するようなこともない。そして、言うまでもなく安全運転であって、この一説と似ているところがあるとすれば、夕日が登場するという点のみである。
京都市街地へは、KICHOMが進入した。翌日の朝は、IGUCHIがドライバーを担当することになるわけだが、本人は非常に不安がっていた。高速道路すでに走ったとはいえ、彼は、ペーパー・ドライバー*5なのだ。
京都市街地へ進入する少し前に予約した、「国際旅館*6」に我々は泊まる。有料駐車場に車を停め、荷物を旅館に置き、夜の京都を散策する。これから夕飯をどこで食べるか考えよう。
夜の京都の商店街を歩いた。松屋*7、サイゼリア*8、和民家などのチェーン店が軒を連ねる。誰かが、呟く、「ここ、水道橋*9にそっくりだな」と。私自身は、サイゼリアでよかった、否、サイゼリアの「小エビのカクテルサラダ」が食べたい。猛烈に食べたい。京都でなくても、食べたいと思う時がよくあるのだから、京都に来ても、やっぱり食べたい。
しかし、私の主張は退けられた。「せっかく京都に来たのだから」とか、「どうせならいいものが食べたい」と言うのである。至極もっともな意見である。せっかくの旅行なのだ、普段の学校帰りに食べないような、料理を食べようではないか。
こうして、自分たちの知っているチェーン店は避け、どこか良さそうなお店を探すことになった。
*4「小川を飛び越え、少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。(中略)風態なんかは、どうでもいい。メロスは、いまは、ほとんど全裸体であった。呼吸も出来ず、二度、三度、口から血が噴き出た。見える。はるか向うに小さく、シラクスの市の塔楼が見える。塔楼は、夕陽を受けてきらきら光っている。」
太宰治『走れメロス』より
*5 書類上、普通自動車の運転技術を習得したことになっているが、実際はせいぜい仮免許を許されるレベルの技術しか持っていない者をいう。
*6 予約した旅館が「国際旅館」を名乗っていたが、定義は未確認。
*7 さまざまな丼ぶりを提供する飲食店
*8 イタリア風の飲食店。ミラノには存在しない味付けで、「ミラノ風ドリア」という商品を提供しているという。私は、「小エビのカクテルサラダ」がお気に入りである。
*9 我々の母校が設置された地域を指す。




