片割れ
王子達は三人で力を合わせて、まっくろな結晶と、王様だった"精霊"を封じ、まっくろになってしまった世界を元に戻しました。
――そうして今、この世界があるのです。
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――これで、"光の噺"はおしまい。……………そう思っているよね? ……そう、違うんだ。本当は、このおはなしにはまだ続きがあるんだよ。……それなら聞かせてあげよう。このおはなしの、続きを。
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しかし、その救われた世界には、三人の王子達はいませんでした。
青の王子がつくりあげた術は、それはそれは強い術でしたから、その代償も大きく、三人の王子はそれぞれの瞳と同じ、紅と翠と蒼の結晶になってしまっていたのです。
封印が成り、まっくろな世界を覆ったまっしろな光が消えた時。その三つの結晶は、火山の国と樹海の国、そして蒼氷のお城へと飛んで行き、
火口と
御神木の幹と
太古の氷の中へと
消えていきました。
遺された片割れの"精霊"達は、それぞれの結晶を追いかけて、結晶となった王子達を守ることにしました。
王子達が王子達だったあの頃と同じように。
――片割れの"精霊"達は、今でもそれぞれの結晶を守っています。しかし、それを見た人は誰もいません。
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――どうだい、面白かったかい? ……それは良かった。………えっ? "どうして見た人がいないのにそんなことがわかるのか"だって? ふふっ、簡単なことさ。言葉の通り、見た人はいないんだ。つまり、…おっと。どうやらもう行かなくてはならないみたいだ。
そう言って荷物を肩に担いだ旅人は、男の子の頭をその白い手で撫で、たくさんの大人達に追われるようにして去って行った。
その弧を描く唇から零れた小さな言葉は
空に溶け、何者にも届くことはなかった。
――ワタシが、碧の王様の片割れだからだよ。
歴史の真実を知るのは、当事者のみ。