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思いつきで浮かんだストーリーです。短編にしようと思っていましたが 長くなりそうなので 長編にしました。
その日 王宮の執務室は、凍り付いていた。
なぜなら その場は、修羅場となってしまっていたのだから。
部屋の主である 王に詰め寄るお妃様。
「これは、事実なのですか?」
「だとしたら なんだというのだ」
王の言葉に お妃様は、青ざめてしまう。
そんなお妃様の様子を興味なさそうに 王は、溜息をついた。
「話が終わったのなら 出て行ってくれ、執務の邪魔だ。
景………妃を部屋まで 送ってやれ」
王の命に 壁際に控えていた騎士が、お妃様を執務室から連れ出す。
お妃様は、まだ 何か言いたげだったが。
あの様子では、今の状況が打開できなかっただろう。
無言を決めていた宰相は、書類に捺印をしている王を見つめた。
その視線を受けてか 王は、居心地悪そうに 顔を上げる。
「柳………一体 何が言いたい?」
「何でもありませんよ?何か 勘違いなさっていませんか?」
笑顔で答える 宰相に 王は、肩をすくめた。
「そ………それで 妃は、一体 誰から あの話を聞いたんだ?」
話を懸命に変える 王に 宰相は、目を細める。
「どうやら 萌花様のようです。
全く あの方にも、困ったものですね?駆け落ちしたと思えば 出戻って………今回の騒ぎを引き起こして。
まぁ 元をただせば 陛下が、原因なのですが」
宰相の棘の籠った言葉に 王は、何も言い返せない。
そして 宰相は、更に 言葉を続ける。
「お妃様をお決めするのに まさか クジ引きをするなど 以ての外ですと申し上げたはずですよね?
それを 所詮は、政略結婚なのだから と 実行なさって………結局 ご自分に 跳ね返ってきたではありませんか」
宰相は、そう 呟きながら 溜息をつく。
王は、返す言葉もなく その場で 小さくなってしまっていた。
確かに 王は、最初 結婚など 興味がなかった。
ただ 皆が、口をそろえてお妃をと煩かったので 提出されてきた 適齢期の娘達のリストで クジを作ったのだ。
そして 引き当てたのが、今 現在のお妃様。
妃として 最有力候補だった萌花に比べて 何の取り柄もなく 平凡な娘。
けれど 王は、初めて 彼女と顔を突き合わせた時 衝撃が走った。
自分の隣に並ぶのは、彼女だけだと。
けれど それを、お妃様に 伝えられずにいる。
だから 色々と不安になってしまう お妃様。
知らないのは、彼女だけ。
普段は、冷静沈着な王が、彼女の顔色1つで 崩れ去ってしまうのだ。
王のお側で仕えることが長い者達は、気が付いていた。
「陛下………悪いことは、言いません。いい加減 お妃様に告白なさってください。そして あの方の不安を取り除いて差し上げるのです」
「わ………わかった。今夜 頑張ってみよう」
けれど 王は、お妃様に 告白することができなかった。
なぜなら 2人の共同の寝室で待ち構えていた お妃様は、旅支度をした状態で 王に離縁を申し出てきたのだから。