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危険な仕事

 殺し屋家業は大雑把な人間には、まず務まらない。

 案外、細かい雑務の積み重ねが必要不可欠なんだ。人一人殺すのだからね。行き当たりばったり、当てずっぽうで殺る事は俺自身は嫌いだ。

 相手が国の大統領、首相だろうと、そこら辺の浮浪者だろうと何の違いもない。俺達はいつものように詳細に調べ、順序だてて綿密に計画し、そして実行する。

そこには何一つ漏れはなく、省略もない。要するに、失敗は許されない。

 失敗は命取りになるからね。失敗したことによって依頼者に恨まれることもある。下手すれば、その依頼者が逆に俺達をターゲットにすることさえあるんだ。

 組織の仲間が仲間を殺す。

 そんなつまらん理由で殺されたヒットマンをよく耳にする。

 考えてみれば割に合わない仕事かもしれないね。

 案外厳しいんだよ。相当の金は頂くが、決して楽な仕事とはいえないかも。


 今回、俺達が選んだ仕事はまったくもってチンケな野郎の殺しだった。

 名前は、大久保雄治。

 六人の女性を結婚詐欺で騙し、金を貢ぎさせた男だ。

 しかも六人とも不慮の事故死や自殺で死んでいる。

 その六人全員に保険金が掛けられていて、その保険金の受取人が大久保雄治本人だ。

 誰が考えたって保険金殺人事件を疑うだろう。

 ところが警察は単なる事故死、自殺として片付けた。

 だが、被害者の身内達の心に疑惑は残る

 死んだ娘たちの親兄弟は再捜査を求めるが警察はケンモホロロの対応。

 要するに、崩せない堅牢なアリバイがあるのだろう。

 

 被害者の肉親達は苦肉の策でマスコミに訴えた。

 動いたね。

 マスコミはこういうネタにはピラニヤのような嗅覚があるんだね。

 視聴率と販売部数が全ての世界だから、そりゃあ飛びつくさ。

 マスコミは調べた。警察も舌を巻くくらいの執拗さでね。

 しかし、考えてみれば人権問題だよね。被疑者にもなっていない男を容疑者のごとく扱い、徹底的に調べ上げるんだから。

 しかも捜査権を持たないマスコミがやるんだから。

 もちろん、名前を伏せ匿名て報道しているがこの事件は誰でも知っている有名な事件、思いつく男はただ一人、しかも完全に犯人扱いさ。


 記者達は競って大久保の身辺を洗いはじめた。週刊誌は仮名、太田という名前で書きまくった。

 その匿名、太田はこんな人物だ。

 パチンコ、競馬、競輪に溺れ、借金は数百万円。

 年齢は四十歳、無職。

 前科十犯。

 犯歴はほとんどが詐欺。

 たまに傷害事件も起こしている。

 そんな男の周りで女性が次々と不審な死に方をする。


 女性達の死亡に事件性がないと言い張る警察に国民は不信感が募る。

 それにここのところ、色々警察の不祥事があったから、国民は捜査自体に疑いを持ち始めた。

 警察も色眼鏡で見られるわけだ。だが、さすがだね。こういう報道があっても警察は動かなかった。

 意地でも動くかって感じだね。これが国家権力って代物だ。

 連日のようにテレビは女性六人の不審な死を取り上げている。

 テレビの報道も日増しにエスカレート。今まで低迷していたテレビの視聴率はこの問題を取り上げるだけでうなぎのぼり。

 民法各社は特番を次々作り始めた。国民の関心は頂点を極める。

 

 毎日の話題がその事で明け暮れ、その内「なぜ警察は動かないか、職務怠慢ではないか」と社会問題にもなる。そして国会議員も売名行為よろしくまるで正義の鉄槌を下さなければ日本は笑いものになると喚く。

 

 ここまでくれば、警察も動かないわけにはいかない。そんなこんなで渋々再捜査が始まったわけさ。


 俺達はそんな大久保をターゲットにしたわけだ。

 簡単な仕事だと思った。ものの五分もあれば始末できる仕事だと思った。

 もちろん、奴が真犯人とわかり次第即あの世に送ってやるつもりだった。


 でもねそれがね、実のところ、この仕事は結構厄介で極めてあぶない仕事だったんだ。


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