ヒットマン
ヒットマンって言うのは、ザックバランに言えば殺し屋。要するに人殺しをする商売。でも、俺と坂下はヤクザの元でたむろする鉄砲玉じゃない。
つまりマルボウには属していない。
えっ?マルボウって何?
そこらへんは、ググルで知らべてよ。
とにかく、ヒットマンの俺達は気に入らない仕事はしない。
上からやれと言われて「はい、はい」って顎で使われはしない。
気に入らない仕事は断るというか、引き受けない。これは、俺達が属する組織の特徴だ。
ただし、いったん引き受けた仕事は命がけで達成しなければならない。
途中で、投げ出すことはもってのほか。そんなことしたら、組織から逆に狙われる。
殺し屋というのは基本は、一匹狼の生業がほとんどだ。ペアを組むことはマレだ。
なぜなら、ヒットマンは基本、他人を信用しないからね。
俺達のように二人で組んでやるというのは極めて珍しい。
ペアを組んでするという事は、それだけ相棒を信用しているという事だ。もちろん、仕事においてだけ。
プライバシーはお互いに極力秘密にしている。
ところで、仕事の依頼は封筒で送られる。封筒は私書箱に貯まる。毎日相当の数だ。
それを取り出して持って来てくれるのが高校生のよっちゃん。
一応バイトのお兄ちゃんを雇っている。
バイト料は時給いくらではなく、封筒一通50円として計算している。最近は毎日三百通ぐらい来るから、よっちゃんの一日のバイト料は15000円前後。
郵便局に行って封筒を取り出して持ってくるだけで15000円。
時間にして一時間もかからない仕事だ、高校生のバイト料としては破格だろう。
えっ?
その物騒な封筒の中身を、そのよっちゃんに見られないのかって?もちろん、興味本位で見るかもしれないが、例えその封筒を盗み見てもよっちゃんにとっては意味不明なものだ。
なぜなら、封筒に書かれている言葉は、全て暗号だ。誰が見たって、チンプンカンプンで理解不能さ。
その暗号解読書は俺達の頭の中に入っている。
誰も見破ることはない、と確信している。
その、三百通前後の中から一通か、せいぜい二通を選び出すわけだ。
俺達は一応全ての封筒に目を通す。
ジャックとエースの名前は殺し屋界ではブランド化されている。
だから、簡単な仕事は来ない。
最近は開発途上国の首長の暗殺、闇組織、反社会組織の幹部やらトップの殺し、そして特に目立って多くなったのはテロ組織の黒幕の殺しの依頼。
まったく勘弁してくれよ…だ。
そんな仕事をいちいち引き受けていたら命が幾つあっても足りはしない。
あまりに重苦しい仕事はパスだ。それに、いくらギャランティーがよくてもこの日本を出てまで仕事はしたくない。
やはり、日本が最高。
なぜかって?
言葉は通じるし、同じ東洋系人種だから目立たない。そして、何より世界一安全な国だからね。
これが一番重要な事。
殺し屋のくせに安全第一だって?
どんな仕事も安全が担保されてない国でやり遂げるには苦労する。いらぬ神経も使う。
殺し屋も同じさ。
安全な環境なら。集中して仕事を遂行できる。
そういうことで、今日はこの封筒を選んだのさ。




