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決死の覚悟

「じゃあ、連絡を待っています」そう言って高田は席を立ち一礼して喫茶店を出て行った。

俺は、高田がテーブルの上に置いていったメモ用紙を開いた。

そこには、高田の携帯番号が書かれてあった。

俺はそのメモを暗記し細かく破り捨てた。


まあ、やるしかないだろう。これが俺の仕事なんだから。

死ぬかもしれないな。いや、死ぬな。ふと、今まで味わったことのない恐怖が俺の背筋を震わした。

 俺なりに死はいつも覚悟している。

 この仕事を始めて、組織のある人物に手渡されたものがある。

 それは小さなカプセル。

 いつも首につけているネックレスのロケットにそれを潜ませてある。

 青酸カリだ。

 小さな小さなカプセルの中の白い粉。

 それを飲めば一分もかからず確実に死んでいく。

 なぜ持っているかって?

 殺し屋稼業だっていつも成功するとは限らない。逆に相手に倒される場合もある。

 ひとおもいにコロッと死んでしまえば世話ないが、案外、人間ってのはしぶといもの。

 もし、殺しの相手が闇の組織だったり、テロ組織、反体制国家の人間で、下手に捕まれば簡単には死なせてはくれない。

 拷問の一つや二つは覚悟しておいたほうがいい。

 俺達の組織を徹底的に調べ上げるだろう。

 つまり、青酸カリ入りカプセルはその時の為の物なんだ。


 早い話が組織保全のためのもの。

 自由な組織だが掟破りはご法度だ。


 忍びの者が敵方に捕まるとき舌を噛み切って死ぬ、時代錯誤も甚だしいその掟が俺達の組織にはいまだにまかり通っている。

 だが、今回はそのカプセルを使う必要はないだろう。

 あの大久保が三途の川に送ってくれるから。

 あいつに心を支配されてしまえば、俺がどんなに必死に抵抗しても無駄だ。


 あの時俺の心の中にジャックを撃てと強い意志が働いた。なんとかそれに抵抗したが、俺の人差し指が痺れたように感覚が亡くなった時、完全に俺は大久保に支配された。

 指がトリガーに触れ絞り込もうとした矢先にジャックは俺に弾を発した。

 俺の頭を撃ち抜かず、俺のベレッタの銃口に撃ちこんだ。

 ジャックだからできた神業だ。後頭部をしたたかに打ち、人差し指の捻挫はしたが。


 そのジャックも組織から離れた。


 元はと言えば俺が何の考えもなくこの仕事を請け負ったのが原因だ。

 ジャックは組織を離れたのではなく、俺を見限ったのだろう。

 俺のせいであいつは世界中のヒットマンから狙われる立場になった。

 俺が一言ジャックのことを組織に言えばの話だが・・・。

 しかしもうよそう。ジャックは俺のたった一人の戦友だ。

 あいつが俺の事をどう思っているか知らないが、少なくとも俺にとっては

かけがえのないたった一人の友だった。

 奴は奴の人生を生きればいい。

 とにかく、請け負った仕事を俺なりに命を掛けてやり抜くことだ。


 俺は心を新たにして大久保の行動を観察した。

 驚いたことに大久保の生活パターンは変わっていない。

 月に一、二度の三ツ星レストラン通いは週に一度になった。

 命を狙われていると分かっているのに、恐れを知らない大胆不敵な奴だ。ただ、三ツ星レストランでは窓際の席でなく中央に位置するテーブル席に変わった。

 真向かいのホテルから大久保を狙うには、水平な位置から狙うしかない。


 ジャックが狙ったのは一つ上の階からだ。窓際のテーブル席ならそこは狙うには最適な位置だ。確実に大久保の頭を狙うことができる。


 しかし中央のテーブル席となると話は別だ、同じ高さから水平に狙うしかない。しかも、窓際に人が座っていればそれを縫って大久保に命中させなければならない。


 至難の業だ。

 俺の腕ではまず無理だろう。

 結局、レストラン内で大久保を倒すしかないようだ。ただ、ホテルの窓から狙おうがレストランで狙おうが結局大久保の魔力には逆らえない。


 結局、死を覚悟でやるしかない。






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