俺のお仕事は…
俺の名は鈴木欣一。
え?オレも鈴木欣一だって!
ああ、そうなんだ。君も同じ鈴木欣一なんだね。
そうなんだよね。
ヒョッとして読者の中には同姓同名がいるンじゃないかなあって思ってたんだよ。
案の定いたの。
まあ、鈴木なんてのはありふれた名字だし、欣一にしたってそう珍しい名前じゃない。
ごめんね、君がありふれた人間じゃないことは十分に分かっている。
まあ、勘弁してよ。
これから書くことは、同姓同名のあんたのことを書こうとしてるんじゃない。
第一、俺、あんたのことは知らないし、だから書きようもないから。
これは俺のこと。
と、言ったって物語の中の俺だからね。
間違っても、作者に置き換えないでくれよね。
作者の名前は鈴木欣一じゃないから。
作者の名前は…オッといけねえこれは言わない約束だった。
まあ、名前なんかどうでもいいんだけど、別にABCでもいいんだけどちょっと、それじゃあ味気ないからね。
ですから同姓同名の諸君、これから書くことにいちいち目くじら立てないように。
俺の年は二十七歳。
大学は中退、仕事が忙しくてね。
相棒が一人いる。
仕事仲間だ。名前は坂下雄一。
念のため同姓同名のあんたじゃないからね。
歳は俺より一つ上の二十八歳。
こいつは大学をまともに出ている。大学はどこだって?
笑っちゃいけないよ。これはマジなんだから。
ハーバード大学出身。
冗談かって思うかもしれないが、これがマジなんだよね。
何の因果か知らないけどね、俺たち妙に気が合うんだ。
かと言ってゲイじゃないからね。そんな趣味は持ち合わせていない。
お互いに、彼女はいる。
坂下の職業は某大学の非常勤講師。非常勤だからね。
教授、准教授、講師の下の非常勤だから、給料はスズメの涙。
だから、俺と同じ仕事をして生活費の足しにしている。
まあ、この仕事をコンビでやってるわけで、ツーカーの仲なのさ。
仕事内では俺達は別の名を使っている。
この名前が一般的に裏の界隈では知れ渡っているけどね。
俺がエースで、奴がジャック。
ジャックとエースって言えば知る人ぞ知るコンビ名なんだ。
えっ?何のお仕事かって?
大きな声じゃ言えないけどね、小さい声じゃ聞こえない、なんて書いちゃったりして…。
実は俺たちの仕事はヒットマンなんだ。
えっ?それ何って?
まあ、知らなきゃ知らないでいいよ。
そのうちわかるから。