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王女 登場

女神への儀式も済み、昼食と休息が終わったところで

全ての従者達が明日の朝の出立に向けて準備を始めた。



「大所帯だから、来るのも大変、帰りも大変だな」

「王都から距離としてはどのくらいのものなんですか?」

支度をしている騎士達を見ながら、詰所へ入るラゼスは

暇になったからと遊びに来た村長から質問を受けた。

「普通にここまで馬で単独なら、丸3日かな」


この村の者は、村から外には中々出たがらない。

村長も妻も出たことがない。

どちらかというと、外からこちらへ来る率の方が高い。

辺境の地とはいえ、住んでみればそれなりで。

贅沢を好まなければ、天候、食物、生き物に対しては、女神の恩恵がある地だ。


辺境と呼ばれるのは、山を1つ越すことにあるだろう。


「あのくらいの規模なら、5日で戻るだろう」

「は~、よく来る気になりますね。そんな長旅を重要人物を運びながら。

警備はあんなに少数で大丈夫なんですかね」


「ああ、それなら大丈夫。何故かこの儀式については、昔から守られているんだ」

「守られている?」

「そ。女神の為に祈りにくるということだから。どうも女神の加護があるらしい」

「そうなんですか?」

「俺も殿下から聞いたからの話だが。何でもこの日に来てくれたら大丈夫とお告げが

あるらしい」

「あ、もしかして巫女に?」

「ああ。不思議だよな」

「不思議ですねえ」


そんな村長とラゼスの会話の前に、ひとり女性が詰所へやって来た。


「すみません。第2王女リーシェ様付きの侍女 サリアと申します。

こちらにユーシィ・ラゼス様がいらしているとお聞きしておりますが」

女性が頭を下げる。


「ああ、俺の事だが」

ラゼスは村長にマキトを呼んでくれるように頼んで、侍女へ向き合った。

侍女は丁寧に頭を下げた。


「ラゼス様お久しぶりです。姫様より夕食にお招きしたいと、言付かっています」

「それは、妻と一緒でも?」

「・・・聞いておりませんので、再度お伺いして参ります」

侍女は頭を下げ一礼すると、直ぐに踵を返し去った。

その後ろ姿を見送ると、同時に村長がマキトを連れてやって来た。


「どうでした?」

村長が心配そうだ。

ラゼスは、ふうと息を吐いて村長に相槌を打ち、マキトに視線を向け。

「今夜が勝負だ」

真剣な目にマキトも頷いた。



ラゼスは、詰所をベルダと交代すると、急いで王子クルスの元へ走った。

村長は自宅へ、マキトは夕食作りの為宿舎へ戻る。






その後、話は夕食を作っていたマキトのもとへロッサから聞かされる。

ロッサは、王子から渡されてきたという箱をマキトへ渡すと

王子付きの侍女2人を紹介してきた。

「こちらの2人は、王子付き侍女の方々。ラゼスさんからの要請で、手伝いにきてくれたそうです」

「初めまして、ラゼス夫人。ラミナです」

「お手伝いに参りました。メイアです。よろしくお願いします」

一礼する2人に、マキトは初めて侍女という存在を見て驚いた。

「え?王子付きの侍女?」

(うわ~、王族関連の人達~)


「夕食は、ラゼスさんと夫人は、王女達と取ることになってる。

ラゼスさんは先に王族のいる村長の家へ行っていると言っていた。

準備があるからと。

夫人は支度が出来たら、バンハトさんが付き添ってくれる話になってる」

淡々と思い出しながらロッサが説明すると、侍女のメイアが付け加えた。

「バンハト様は、食堂でお待ちになると聞いています」


「え、そうなんだ」

(侍女、仕事早い)


「食事の方は、私達が引き継いでおきますので、大丈夫です」

支度する手伝いを王子から任されてきたと侍女が2人笑顔で答える。


「早く支度に掛かりましょう」

「王女を待たせると、また何を言い出すか分かりません。お早く」

「分かった」

侍女の1人ラミナは、夕食の支度を引き継ぎ、もう1人メイアは着替えと髪形を担当すると言い

マキトはメイアと部屋へ戻ることになった。



早速部屋で箱を空けると、ラゼスが王子に頼んでいたドレスと髪飾り等の装飾品がいくつか入っていた。

「凄いドレス」

まさか自分が着ることになるとは思わなかったが、今の姿なら似合うだろう。

「クリーム色の髪に、ドレスの色が似合いますわ」

「そ、そうなんだ」

侍女は真っ白なドレスを見つめ、広げるとマキトへ着せはじめた。

生地は胸元部分がかなりきつく、侍女はそのメロンにあくせくする。

「い、痛い」

「我慢です」


ビリ。


谷間部分に裂け目が出来、メイアは慌てて針と糸で補正し、それを隠す為に

アクセサリーを縫い付けた。


「うう、なんて胸なんですか。羨ましい」

「すみません」



何事もなかったように仕上げが終わり

髪形も可愛く結いあげ、髪や首回りにアクセサリーを付けると、

ふんわり系の可愛らしいお姫様の出来上がりだ。

「まあ、可愛い」

侍女は癒し系美女になったマキトを褒めまくった。

「さあ、皆さまにも報告して、村長宅へ行きましょう」

「あ、ああ」

侍女のペースに乗せられて、マキトは食堂で待機しているバンハトを呼びに行こうと

ドアを開けたら、マキトのドレス姿を見ようと待っていたロッサ達

4人は言葉を失って出迎えてくれた。


「あ、ちょっと王女に会いに行ってきます。バンハトさん、付き添いお願いします~」

軽くマキトが声を掛けたつもりだったのだが、

「な、夫人?マキトなのか?どこの姫様かと思った~」

「俺も」

「元々美人だとは思ったが、これほどとはなあ」


「皆さん、俺が何の為に行くのか分かってますよね?」

「分かってる、分かってる」

「はははは、まあ、ラゼスさんもいることだし、頑張って」

「それにしても姫様としてやっていけそうだな」


(着飾ったことを褒められても・・・男としてどうよ)

感心しまくりで、マキトの微妙で複雑な男の心境は、気付かれることはなかった。


「行ってきます」

「がんばれ」

「行ってらっしゃいませ」

警備隊の4人と侍女達に見送られ

食堂から出口へ向かい、詰所の横を通り、大通りに出る。


そこから村長宅までは徒歩5分と掛からない。

普通は夫人は家まで歩くということはないが、マキトは馬車を使うほどの距離ではないと

判断し、バンハトと王女がどんな作戦でくるのか対策を話しながら歩いた。


着いた先、村長宅の敷地内では、あちこちで護衛や従者達の宴会が始まっていて

大変な賑わいだ。


そこを通り抜けると、王族を護衛している騎士達が両脇に立ち、

こちらの名前を名乗ると、侍女を呼んでくれた。


「ラゼス夫人、ようこそ。私がお部屋まで案内致します」

美人な侍女が一礼し、マキトとバンハトを誘導し、案内した部屋の扉を開けた。

「どうぞ。こちらでお待ち下さい」

「有難う」

マキトが部屋に入ると、バンハトは扉の前で待つよう侍女に指示され、扉は閉まった。


バタン。


(あれ?夕食に招待されたはず。ラゼスさんも誰もいない?)

部屋の中は真ん中にテーブル、テーブルの上にはローソクが灯っている。

椅子が対になっていて2客。

(おかしい)


ガタン。

背後の扉が開き、振り向くと可愛らしい着飾った少女が入ってきた。

様子から貴族か王族か。


「あの、どなたでしょうか?」


疑問を口にすると、少女はくすくすと笑いながらマキトの横を通り過ぎた。

テーブルの前に立ち、窓側の方向に向いている椅子に座った。

「私は夕食に、貴女を招待した覚えはないですわ」



もしかしなくても、王女?


驚くマキトに、彼女は口元を綻ばせ。



「私は妹の為、貴女を誘拐しに参りましたの」






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