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ラゼス夫人

「誰ですか?」






妻役を引き受けたマキトは、ストーカー被害に遭った高校時代のイケメン友人を思い出した。

あの時の友人の苦悩を知っているだけに

なんとかラゼスを助けたい気持ちが強かった。


女の子って、自分の良いように解釈してこっちの意見を聞いてないからな。

告白を断わっても断っても着いてくるし、知らない間に恋人として振る舞っている。

周囲にも付き合っていると勝手に宣言して、断わった本人を驚かせる。

他の女の子と会話するだけで勝手に嫉妬して、ただ話をしただけの女の子に嫌がらせをする。

ラゼスが話したいくつかは、友人と似たような話で、マキトは憤慨した。


「陛下の耳にまで入った時は、俺はもうこの国にいられないとまで思った。

だが、以前から王子には相談していたので、大事にならずに済んだ」


「今回王子はなんて?」

「年1回の儀式で、第2王女を外していたが、第1王女が妹姫の味方で阻止されたそうだ」

「・・・・。ところで、ラゼスさんて。王女を妻に娶るくらいの家柄?」

「微妙だな。一応貴族だが」

あえて彼は爵位は誤魔化した。


「でも、王子に相談出来るってことは」

「王子とは幼馴染。王子が3つ下で、俺は幼少の頃からよく一緒にいた」

「もしかして、その狩りがきっかけではなくて、前から?」


ラゼスは、一瞬黙った。




「前から兄のように慕ってくれていたが、行動に出したのは狩りの日からだ」

「ラゼスさんは、王女を娶る気は」

ラゼスは、首を左右に振る。

「先ほど言っているように、ない。マキトが言ったように、彼女に今のような生活を持続

させる力はないし、そもそも恋愛対象でない」

「王子の妹だよ。少しも?」

「ああ。どんなに望まれても好きでもない女性をどうしても受け入れられない」

「でも、王が言えば・・。政略結婚だって」


マキトが疑問に思ったことを口にすると、ラゼスは苦笑した。

「まあ、そういう結婚も世の中にはある。俺の家にはそのような結婚は

上手くいかないということで代々していない」

「へえ、そうなんだ」


「それで、マキトは引き受けてくれるか?」

じっとラゼスに見つめられて、ふっと息を吐いて。

「分かった。引き受ける」

内心、こんな熊みたいな男のどこが気に入ったんだろうと思いながら、

マキトは了承した。


人妻としての証として、男性側から男性の家の物を身につける風習がある。

妻である証として、話を引き受けた夜にラゼスの家の紋章が入った腕輪を受け取った。

それを手首にすると、ラゼスは妙にソワソワしていた。




そして、王族到着する当日の朝。

朝食をいつも通り、宿舎で準備し、皆がそれぞれやって来て、食事を始めた頃。

ガコッと音を立てドアを開けて入ってきた人物に、全員が冒頭の言葉を思い浮かべた。



「誰ですか?」




実際に口にしたのは、マキト。

入ってきた人物は、物凄い渋い感じのイケメンで、誰もが驚いていた。


「もしかして、ラゼスさん?」

「ええっ、それが本当の顔?」

20代の若い警備隊員達に言われて、ラゼスは苦笑。


モサモサだった髪形は、村の床屋で綺麗に刈られ、口髭も全部剃っている。

確かに青年の顔。しかも爽やかな好青年姿。


「うわ、若かったんだねラゼスさん。俺、てっきりバンハトさんと同じ歳かと思ってたよ。

夫婦役を言われた時、えらく年齢差があって大丈夫かなあと思ってた」

マキトが素直に感想を言うと、場は大爆笑。


「半年前は、口髭は確かにあったが、今回はスッキリさせたせいで、これはまた若く見える」

バンハトも苦笑している。



「はいはい。笑うのはそこまで。俺の面倒な頼みに協力有難う。

王族が帰るまでは、よろしく頼みます」

ラゼスが頭を下げると、皆が頷いた。


「では、練習」

ラゼスの胸へ目掛けて、ターラントに背を押され

マキトは抱きついてしまった。

「ラゼス夫人、しっかり頼みますよ」

「ラゼス夫人か」

「マキトの呼び名は、村長とも統一した呼び名を決めている。ラゼス夫人だ」

「ラゼス夫人だな、よし」


しかも、ノリノリだ。



大丈夫なんだろうかと、疑問が沸くが、村長にも村民にも話が伝わっているとのことで

なんとかなるかなとも思う。


だが、この時。

俺は、村民に話しが行き渡っていたことで、後日悩まされることになる。




その数時間後、王族達と護衛の団体の到着が、村の者の知らせで伝えられた。





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