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戦いの果てに※

流血表現、少し残酷表現、R15内容等があります。

了承の上、お読みください。




















「着いて来て欲しい」

手紙の内容を知らされて

俺が行くことを伝えると、抱きしめられた。


彼の言葉は静かで、覚悟を決めたととれる。

王女の心を変えられないのなら、彼は終結を望む。

自分の心に嘘はつけないから、彼は・・・。

最後を看取って欲しいとも聞こえ、俺はその日

女々しく泣いて過ごした。

でも、俺は絶対に未来を変える。

変えてみせる。





--------------------------------------------------------------



昨日の夕刻、王女から来た使者へ手紙の返信を持たせ、

ラゼスは、自分とマキト2人と護衛数人で王都へ向かうことを決めた。




青将軍達は、後方支援。

王都の民家や商店街にも、味方を配置。

王城では、3人の内2人の将軍が協力を申し出てくれて、王城へ入るまで

護衛をしてくれることになった。


王都へ入ると、小競り合いになっていた騎士達は戦いを辞め、

王女の命令で、手出ししないようにされているのか

終結を望んで期待しているのか

次々と道を開けてくれる。


門まで到達すると、門番達が一礼して道を開けてくれる。

「ラゼス公、我々は皆貴方方の味方です。存分に」

小声で気遣う騎士達があちこち一礼してくる。


やむを得ず、戦いに参加している者達や

王の安否の為に、残っている者達もいる。

ラゼスは、自分の味方だと思われる者達と視線を合わせ

頷いて行く。


一行が歩いて行くと、廊下側の柱から、ずっと待っていただろう

ひとりの将軍が現れた。

「赤将軍、エルハルド」

「殿下、お久しぶりです」

彼は、恭しく礼をする。

「私は、私がすることに意味はないと思っていますが、

王女の想いを知っているからこそ、貴方をなんとか王女の気持ちを

理解して頂きたい」

唯一彼は、内密に連絡を取った将軍3人の中で1人だけ断わっていた。


「リーシェの想いを知っている?」

「幼少の頃より、ずっと貴方を慕っていらした。話はよく聞かされていました」

「戦う必要性はないぞ」

「否、貴方を打ち負かし、王女の下へ連れて行きます」

「ええと、これから会うつもりだが」

ラゼスの言葉も聞かず、彼は剣を抜いた。

「将軍、辞めて下さい」

周囲の騎士達も止めるが、彼は勝負を挑む。


「どうして?」

ラゼスはマキトを後方へ騎士達と共に下がらせ、自分も剣を抜いた。

いきなり目の前に剣先が飛び込むが、なんなくかわし、横へ飛ぶ。

「誰も彼女の味方にならない。だが、私はその想いが分かる。

同じ立場の者ならば、その人しかダメで、その人が振り向く為なら

全てを捨ててでも欲しいと思うことが出来る」

カン。

剣の先が弾かれる。

何度かその繰り返しで、決着はつかない。


「相手の気持ちは?」

「そんなものは必要ない」

「身勝手だ」

「どう思われようと、私は欲しいものは手に入れる」

王女と同じだと言う彼は、ラゼスを倒そうと何度も剣先を突きつける。


「お前は、器しか手に入れることが出来ないと分からないのか」

「器だと?」

「相手が好きでないなら、ただの人形だ」

「何」

「それでも、お前は手に入れて満足か?自分を好きでもない者と過すことは

苦痛ではないのか?」


ラゼスは、剣を交差させたところで、力任せに体当たりして相手に尻餅をつかせた。

一瞬、迷った将軍は、喉元に剣先を突きつけられ、観念することになった。

「エルハルド。自分に置き換えてみてくれ。

お前はB嬢が好きだとして、そのB嬢はお前の事が好きで相思相愛。

前々からA嬢という女性がお前を好きだと言って

邪魔をしてくるとして、前からお前を好きだと言い寄って来ていたA嬢を選ぶか

相思相愛のB嬢か。

結婚するなら、お前はどちらを選ぶ」


真面目にラゼスが問うと、赤の将軍エルハルドはその場で胡坐を掻いたまま

腕組みをして考え出した。

「それは、やはり相思相愛のB嬢を」

答えを出したところで、ラゼスがにんまりとさせる。

「私と同じ意見だな」


エルハルドは、なるほどと感心して、ラゼスに手首を掴まれて

その勢いで立ち上がると、自分の間違いを恥じた。

直ぐに肩肘を付くと、頭を下げた。

「相手の立場に立ってから、物事を考えるべきでした。

申し訳ありません。殿下」

「いや、理解してくれて良かった」


ここで和解に2時間費やしてしまい、案内役の侍女を促し、先を急いだ。




簡単に会えるとは考えていなかったが、不意打ちを突かれ、

先へ急いでいたはずが

マキトは突風で身体を持ち上げられた。

「しまった。うわああ」

あっという間に2階の部屋へ運ばれ、いつも王女リーシェの背後に立っていた男

魔術師の腕に抱かれていた。

「な、な・・誰だ」

驚いて声が裏返りながらも腕から逃れようと抗うが、その力に抜けられない。

「なんと、美しい」

40代だろう容姿の魔術師の男は、癒し系美人顔のマキトに喜んだ。

(嫌だあ)


ラゼスは突風時に顔を背けたことで、マキトの身体が空中へ浮かび

2階のどこかの部屋へ入るところまでしか目で追えなかった。

「マキトを探す」

ラゼスが指示すると、何人かは2階のあちこちの部屋を調べる為に分かれた。



「離せ」

身体全体をマキトは抑えつけられたところで、

魔術の力なのかナイフが何本も空中に浮いていて

目の前で突きつけられる。

今にも自分を刺すようなので、無駄に動けない。

「うわ」

腕を背に回され固定されて手首を紐で縛られて、祈る暇、杖を出す暇なく

横へ転がされた。あまりにも無様でマキトは唇を噛みしめる。

「貴女はここで、王女の前でラゼス公が降伏するまでいて頂こうか」


その魔術師は、そこで放置しておけばいいものを縛った後に

男の性で、マキトが後ろ手に縛られたことで反り返った背のせいで

マスクメロンが一段と大きく前に突き出した形になった為に

視線を向けてしまった。


傍で王女側の人間で、もう1人の20代後半位の魔術師の男が部屋の中で控えていたが

一緒に目線が胸に行ってしまい

つい本能から、女性としてのマキトに興味を抱く。


もう1人の魔術師に合図を送り、2人が同意したことで

1人がナイフを持ちだした。

浮かんでいたナイフは、40代の男が回収。

若い方が、床で横になって足掻いているマキトの胸元前にしゃがみ込んだので

マキトは自分の身の危険を感じる。

「まるで女神のような・・」

モシャモシャになっている髪を手で避け、マキトの癒し系の顔を見る。

それから、シャッと音を立てて、着ていた簡易ドレスの衿に大きく切れ目を入れ

ナイフを床へ置くと、首元に両手を添え、切れ目を左右に開くと

ビリリっと裂けて、白い肌の大きなメロンの谷間までが露出する。

「ほお~、見事な」

「変態~」

目の前の若い魔術師は、真っ白な肌のメロンに感動している。


「や、やめろ」

身体を揺すり、後ずさるが背後で押さえつけている40代の魔術師の男に阻止される。

「ラゼス公は、どこでこのようなどこの馬の骨か分からぬ者を」

「まあ、もしもの人質にも使える」


辱められ、身分の差で貶められて、マキトは悔しそうにその男達を睨みつけている。

それも構わず、男はさらに肩口で止まっている衿に手を掛け、

肘当たりまで生地を下げ

胸当てを取り去ると、たわわな2つのメロンを完全に丸見えにした。

「へえ」

値踏みしている視線だ。

ドレスの裾を捲り、再度ナイフで切り裂く。

白くて長い足は切り刻まれた布から5割見え隠れ。

「へえ、足も綺麗だ」

ドレスではなく、もはやボロ布を軽く纏っているような状態だ。

「お前は、どこでラゼス公と出会い、心を掴んだのだ?容姿か?この胸か?

身分の違いに気付かぬとは、なんとも図々しい女だ」

再度、その男の手で髪を掻き上げられ、視線が合う。

「王女には邪魔な女だ。何をしても良い許可は出ている」

髪を掴んでいた手は、そのまま頬へ唇へと触れていく。

「これほど肌も白く、容姿も美しいとは。貴族専用の高級娼婦コーティザンとしても十分だ」


(もしかしなくても、貞操の危機?それに勝手に娼婦扱い?)


なんと言っても天使が作った女神に見えるように作られた器で

容姿は癒し系、現在上半身裸体。

男なら女神風な美人さんで据え膳の状態なら、襲いたくなるよな。

気持ちは分かるが、襲われる側は恐怖だ。

娼婦なんて、させられたら困る。


横になっていることもあり、背後から押さえつけているもう1人は

真正面から見たいのか、俺の前が気になっている様子。

それでも背後から、マキトの正面にいるもう1人の男の行動を見守っている。

(どいつもこいつも、この国の魔術師は変態だ)


魔術師の1人がマキトのあられもない姿に、にんまりしているところ、

さらに拘束しようとしていたもう1人が

その上半身裸体姿を正面から見たさに手を放した。

拘束するなら、足もかと思っていたが、女だと思って油断している。

「おい、俺も前に回っていいか?」

(こいつらアホだ)

マキトは横になっていた身体の上半身を自分から起こし、

ニコっと目の前の男に微笑みかける。

男たちの様子を静観し、反撃のチャンスを待っていたせいで

目の前の若い魔術師に、メロンをまともに触れられているところだった。

(くそ。胸糞悪い。こんな男に触れられるなんて)


その白くて柔らかな感触に、にんまりしていたせいで、

起き上がった意味と、その笑みの意味を直ぐに理解出来ず。

同じように笑みで返してきた。

(全く、この野郎は)

思いきり振り上げた足で、顎から足蹴りを食らわせた。

「このど変態」


ガシッ。

「ぐは」

男は吹き飛んで気を失った。


マキトの後ろ手を放し、背後から前に出て、

マキトの裸体を見ようとしたとしたもう1人は、吹き飛ばされた男に驚き

慌てて戻ろうとして

くるりと回って勢いをつけて立ち上がったマキトに

固い靴の踵部分を頭の横へ食らわせられた。


ガキッ。

「おわっ」

バタンと大きな音をさせて仰向けで倒れた。

あっけなく終了。


腕が背に回され、後ろで手首を縛られているため、前の露出も凄いが

このまま戻れない。ひとりでどうしようかと考えていると

連れ去られたことで、2階の部屋を探し回っていて

大きな音が2回聞こえたことで、ラゼスは1人先にマキトがいる部屋を見つけてくれた。


ラゼスはというと、当たりをつけて部屋の扉を思いきり蹴飛ばして

部屋へ入って絶句。


「うわ、マキト」

彼の目には、髪はモシャモシャ、胸元は肌蹴て見事に2つのメロンは丸見え

腕は後ろに縛られて、ラゼスの顔を見て困った顔をさせている姿。

その前方と横では、伸びている男が2人。

「魔術師を倒せたのか」


背後からラゼスを追いかけてきた騎士達の足音が直ぐ近くまで来ていたこともあり

ラゼスは慌てて自分のマントを取り外し、マキトに被せた。

直ぐに手首の紐をナイフで取り外し、その痛々しい手首に付いた縄の痕を擦る。

「痛かったな」

「大丈夫」


ラゼスは背に腕を回し、マントごとマキトを抱きしめた。

「心配した」

その胸に抱かれて、マキトも少しばかり緊張していた為か、ほぉと息を吐いた。

「すみません、油断しました」

「無事で良かった」

まだこれから王女に会わなくてはならないのに

もうここで既に疲れてしまった。




「大丈夫ですか?」

ワッと数人、ラゼスと一緒に探しながら駆けつけてくれた味方の騎士達は、

マントなしの姿になったラゼスと

マントを羽織ったマキトを見て、首を傾げたが、ドレスの裾の切り裂いた跡を見て

納得した。


「着替えた方が」

ボロボロの姿が足元から分かるので、騎士達も心配そうな顔をする。

でも、時間が惜しい。

マキトは、ニッコリと笑みを作り大丈夫だと言う。

「このまま行きます」

ラゼスとしては、上半身裸なのが気になるが、

ドレスの中側の生地を切り裂き、それをメロンがまともに見えないよう

胸元にまきつける。

マントをしっかりと着こみ

大丈夫だから行きましょうと促すマキトに従うことにした。


気絶している魔術師が起きては困るので、身動きが出来ないように縛り、

味方の騎士達に2人を任せた。

「まだもう1人、魔術師がいたな」

「そうですね」

用心しなければ。





階下へ降りて行くと、その場で待機していた者達は安堵した。

王の庭と呼ばれる奥庭まで、案内の侍女と騎士に連れて行かれると、

そこは素晴らしい花の庭園になっており

今の季節に咲く花々が咲き誇っている。

その中央には、休憩する為に設けられた長椅子と花のゲートのような屋根がある。


そこから眺めると、綺麗な景色を見ている気分になるだろうなあと

マキトは微笑むとラゼスも同じ事を考えたのか

「あの椅子に座ると、一枚の花の庭の絵を見ているような気分になる」

「そうなんだ」

「今の季節は、特に花が綺麗で・・」

その昔の少年時代、兄の子達とこの庭で追いかけっこをした記憶が蘇る。




「ユーシィ兄さま」

王女リーシェの待ち望んだような憂いのあるか細い声が聞こえ、

城側の廊下の大きな柱陰から

侍女を2人連れ、ゆっくりと歩いてくる。


「リーシェ」

それに対し、ラゼスは低く呆れた声だ。


「この庭、思い出しませんか?私はこの庭で初めてお父様から、ユーシィ兄上に会わせて

頂いた場所です。兄さまが騎士学校へ行くまでの数年、ここで遊んだ思い出の場所です」

リーシェも思い出していたようだ。

「私は、ずっと兄上をお慕いしていました。どうして、私ではダメなんですか?」

キッと睨むように、こちらへ向ける目。

その視線は、ラゼスを通り越し、ラゼスの左側で腰に手を回されて

支えられながら歩いていたマキトに向けられていた。


「俺には、いつまでも妹のような存在だ。どうしてもひとりの女性として見ることは出来ない。

いつまでも俺に拘らず、もっと他に目を向けて欲しい。

お前を大切に想う者は他にいる」

「いいえ、私は兄さまでないと嫌です」

「どうしても?」

「どうしてもです」


物凄い執着に、マキトは気分が悪くなりそうだ。

ラゼスは、マキトの腰から手を放し、その先の手を1度握り締めてから放し

マキトから離れた。



ラゼスが一歩づつ前に進むと、リーシェも一歩嬉しそうに前へ進む。

マキトは、ラゼスが何をしようとしているのか分かり、止めようと一歩出ようとすると

魔術師達の気配を感じ、下がる。


隠し持っていた白い杖を振り上げ

「俺を守り、この魔術を相手に返せ」

マキトに拘束の魔術を施そうとしていた彼らは、

杖のはね返しで、逆に拘束の呪文に掛かり、それぞれが転倒した。


魔術師を恐れていた背後に控えていた騎士達は、その魔術師達の姿に一斉に捕獲に動き

1人とその弟子達はあっけなく拘束されたままの状態で捕まった。

王城にいた3人の魔術師達とその弟子達は全員捉えられたことになる。

その様子を影から見ていたあの天使は、

マキトの杖を見て、かなり驚いた。

「まさか、あの杖を・・・」


防御の杖で、天使の力をもはね返す。

どうするべきか、天使は試案していた。


「きゃああああ」


周囲に響き渡る大きな悲鳴が上がった。

マキトが慌てて視線をラゼスに向けると、ラゼスが王女の胸に剣を突き立て

ラゼスの脇へ侍女がナイフを刺している。

「え?な、何故?ま、間に合わなかった?嘘・・嘘だ」

慌てて、ラゼスの下へ走る。

背後で魔術師達を捉えた騎士達も視線を向けた。


1人はリーシェを支え、その胸の剣を抜こうとする侍女、

もう1人は、ラゼスを刺したナイフを脇から抜いて、マキトへ向ける。

「来ないで。ラゼス公爵様は、リーシェ様の物。貴女が横から浚わなければ」

侍女はラゼスを刺した興奮から、マキトへ向けて振り回してくれるので

中々ラゼスの止血が出来ない。

このまま血が流れ続けば、危険だ。

ラゼスは脇の刺された部分を手で触れているが、刺されたナイフを抜かれたことで

かなりの血が吹き出て、膝を付き

そのまま倒れてしまった。


「引っ込んでろ。お前はユーシィを殺す気か」

大声で怒鳴ると、侍女はびくんと体を揺らし、自分の手に付いている返り血で

自分が人を刺したことに気付き、

倒れているラゼスという男の脇から流れる血を見て、卒倒してしまった。


もう1人の支えていた侍女は、王女を助けようと医師を必死に呼んでいる。

マキトは、ラゼスを助ける為、必死に祈る。

民も騎士達ももう争うこともない。

この国は平和になる。

だから、死なないで欲しい。血よ止まれ。

その刺された場所よ、治ってと。

ポロポロと涙が止まることなく零れていく。


「治れ、治って。ユーシィ」


騎士達は、追いついた青の将軍の「終結。幽閉されている者や傷ついている者達を助けろ」

という大声により我に返り、王の寝室へ、王子達が幽閉されている塔へ

救出へ向かう。


刺されたユーシィを診る為、一緒に城までの戦いに参加していた医師が来てくれたが

中々止血が進まない。

「深く刺されている」


「嫌だ。絶対に治す。治って」

一生懸命、マキトは祈った。


直ぐ傍で、別の医師に診察されていた王女は、血を吐きながら

意識を持ち、はあはあと息が荒いものの

応急処置でなんとか保てている。

侍女の手を借りて、立ち上がった。

「王女、このまま医療室へ」

「王女」

医師や侍女の言葉を無視し、彼女はゆっくりとラゼスの下へと歩き始める。

後でその姿を見た騎士達は、魔女のようだと語られるほど

鬼のような形相で。




ラゼスにばかり気を取られ、ずっと止血をしつつ心の中で祈っていたマキトは

止血されていく傷を見ながら、安堵し

気を取り戻したラゼスに微笑む。

ラゼスは、目を見開きマキトと視線を合わせることが出来た。

「良かった」

「助かったんだ」

ラゼスの無事に、周囲も安堵の声がする。

「マ、マキト」

本人の掠れた声に、マキトは涙を零す。

「良かった、ユーシィ、止血間に合った。良かっ・・」

溢れる涙を拭おうと、腕をあげたところで動きが止まる。


ズプリと嫌な音がした。

確認しようにも、身体が急に動けなくなった。

自分の胸からマント越しに血が滴り

えっと本人が思った時には、マキトは何度も刺され

騎士達が慌てて、背後で意識朦朧としながらもマキトの背に

ナイフで刺している王女を止めたが、既に3回胸を突かれた後だった。


背後からもナイフを抜いたことで血が吹き出し、マキトは苦しさに胸を抑えるが

流す血は止まらなく、回復してきたラゼスは慌てて自分の服を破り、止血しようと

するが流れは止まらない。

「マキト、マキト」

背から流れる血を止めようと手で抑えるが意味がなく。

ラゼスは必死で医師とタオルや包帯で巻くが

直ぐに染みていく。


ラゼスの脇を刺した侍女のナイフをいつの間にか掴んだ王女が

マキトの背後を襲ったと

気付いたのが遅れたのは

ラゼスの止血に皆が注目してしまったせいだった。



そのまま心臓を貫かれたマキトは、前方へと、ラゼスの胸へ倒れて

意識を失い

その生涯を終えようとしていた。





マキトの身体から魂が離れ、光輝きながら天界へ向かおうとしているところへ

隠れていたあの例の天使が羽根を羽ばたかせて、魂を追いかけてきた。

その魂の球体を魔法で捉えると、嬉しそうに胸の中へ抱え込んだ。

「今度こそ」

天使は、上空へ、外へと羽根を広げて飛び去った。










ラストまで後2話。

全30話になっています。



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