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閑話   王城の事情 (第1王子クルス視点)

第1王子クルス視点




辺境の地 ラシエ村から王城へ帰還して、しばらくして宰相が倒れた。

10日程城を空けただけだが、帰還してから40代前半の健康そのものだった

宰相の体調不良が続き、朝議中に。

必ず8時間睡眠を曲げない男で、健康には厳しい奴だっただけにおかしい。


絶対にこいつは死なないと思った程の男だ。


帰還して直ぐに、くどくど父上に説教をしていたのが思い出される。

父上が丸投げして逃げると、俺に矛先が変わって

「殿下、殿下もそろそろお考えください」

あの時は、どこの国の姫がお薦めだとか、俺の結婚相手を探してきて

あれこれ話をしてきたなあ。


あの丈夫な男が、倒れるとは。

睡眠不足でなければ、食べ物の中毒か、病気か。

何かあったか。

正妻とは仲が良かったし、子供達も息災。

2番目の妻は、どうだったかなあ。確か政略結婚で、困っていたような。


医師の話では、内密に教えられたのはわずかに毒の反応が出たということだ。

ひそかに探れば、屋敷で過ごす彼の飲み物は2番目の側室が出しているとか。

その茶葉から、隣国の毒草が混じっていた。


毒草を全て盗みだし、今は医師に頼み込んで

治療用の茶葉を飲ませるように指示させて、ようやく快方へむかっている。

誰が企んだのか。


しかも、知らぬ間に宰相の座に宰相の2番目の妻の弟が代理をしている。

半年前からきな臭いことをしていて、当時宰相自身が困っていた。

誰も反対しなかったのか?

紹介を受けた時は、驚いた。

「何故、そなたが?」

「元老院も推薦してくださいました」

にっこりと笑顔で返され、驚いた。

元老院側の大臣が数人、付き添っていたが、誰も何も言わない。

むしろ、何も言わず沈黙していて不自然な気がした。


その義弟について調べる手配をしたところで、今度は父上が倒れた。

どうしてそうなったのか、これも内密に医師に調べさせると、第2王女が

誰もいない時を狙って、薬に麻薬の花 レリイシーの成分を入れていたという事実。

信じられなかったが、こっそりと隠れて様子を伺っていたら

本当に薬を混ぜていた。

「殿下。今は医師がなんとか致しますので」

「解毒薬を手配します」

秘書的な事をしてくれている事務官は、信頼出来る医師に話を通してくれていたからこそ。


この女、実の父親を殺す気か。と殺意を抱いた。


一緒に見ていた医師に止められなければ、背後から蹴飛ばしていた。

侍女や医師と相談し、第2王女がいる時は、必ず誰かがこっそりと伺うことになり

王女が退室したと同時に、王女が構った全ての物を取り替えていた。

気が付いて2週間後から治療を始めたので、今は快方に向かっている。


それにしても、一体王城で何が起こっているのか。

第2王子と第1王女を呼び出し、リーシェについて相談した。

「ええ、医師に言われて私も確認してきました。信じられなかったですわ」

「俺も。どうして父上を」


「もう1つ。宰相の件だ。代理でバッフェル子爵が朝議に参加しているし

いつの間にか指示まで出している。大臣達の様子もおかしくて、調べさせているが

隣国にある麻薬の花がどうやら出回っている」

「まさか。ラシャ王子に問い合わせは?」

「丁度、王都へ向かっていると、国境から伝達が来ていた。だが、こちらへ来ると言う

話が実は来ていない。極秘なのか・・」


「ラシャ王子がそんなことをするように思えないわ。ユーシィお兄様とは仲がよろしくて

こちらの大学へいらした時は、とてもよくして頂いていたわ。

もしかして婚姻の話では?侍女達がリーシェが毎月贈り物と手紙を受け取っていると

聞いてるわ」

自分に直接妹が話してくれることはないが、侍女達の噂を聞いたことがあると

彼女が説明すると、クルスは眉間にしわを寄せた。

「その話は、事実か?」

「ええ、リーシェの侍女達を呼ぶとはっきりするわ」


第2王女が隣国へ婚姻の条件を出していたとか、

実はバーシャランからラシャ王子が近いうちに尋ねて来ることは

宰相代理で止まっていたとかは、この話が出るまで誰も知らなかった。


「お兄様。もしかして内乱が起きているのでは?」

「ああ、王が倒れ、宰相が倒れ、実権を今握って動かしているのは、宰相の義弟だ。

リーシェはその者に加担しているとなれば・・」




「そこまで」


低い男の声が部屋の中に響いた。

3人と数人の警護の騎士達、お茶を準備する為に控えていた侍女達の反対側の扉が

少し開いていたところが大きく開いた。

警護の為、そこにいたはずの騎士が2人、回廊で倒れているのが見える。

コツンコツンと靴音を響かせて、40代の宮廷魔術師ベナール・テオと

豪華なドレス姿の第2王女リーシェが

ゆっくりと入って来た。


「気付くのが随分と遅いようですわね。それに、城の中は随分と無防備ですこと」

にっこりとリーシェは微笑んだ。

「リーシェ。どういうことだ。父上の命を狙って、お前は謀反でも企てているのか」

「リーシェ。どうして」

アリシャと第2王子ウェンが詰め寄るが、あははははと高笑い。


「どうして?私の恋を邪魔したのは、お兄様方やお姉さまでしょ」

叔父であるユーシィに近づかせない為に、いろいろと邪魔が入る。

調べれば、長兄クルスだったり、次兄ウェンだったり。

味方だったアリシャは、いつの間にか反対するように。


「だから、私は私の味方になる方と計画させて頂きましたの」

「リーシェ様、どうしますか?」

魔術師ベナールは、魔法陣を目の前に浮かばせる。

「もちろん。大人しくして頂くのが一番だわ。

私がユーシィお兄様とこの国を治めるその日をぜひ見て頂かなくては」


まるで悪夢を見ているようだった。

「リーシェ」

「リーシェ、考え直して」


3人はそれぞれ別々に逃げたが、空中で展開する魔法陣にそれぞれ捕まり、

貴族や王族向けの牢で監禁されることになった。





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王女リーシェ視点


これにより、バッフェル子爵が宰相代理として指揮をとり、

第2王女リーシェが王代理で、常に宮廷魔術師を側近として連れ歩く。

朝議や政務にも顔を出し、完全に3人による政治が始まった。

「子爵。私を欺こうとしても無駄ですわよ。本物のロッサの手紙を将軍に渡したことくらい

お見通しよ」


「何の事でしょう」

子爵は薄く笑う。平凡な容姿なので、肯定したのか否定したのか判断はつかない。

「ユーシィお兄様は、生かして私の下へ。貴方には、その手紙にも書いてある奥方を

物にしてはどうかしら?」

くすくすと笑う王女に、子爵は平静を装って手紙を読みつつ

「女神のような女性ですか?本当にそのような女性がこの世にいるものでしょうか?」

普段見慣れている貴族社会では、そのような女性はいなかったはずだと思っている。

「いるわよ。私は会ったことがあるもの。凄い美人だったわ。

スタイルも胸も男性好みだと思ったわ。

その目で見てきてはどう?」

王女は子爵を揶揄してみた。


う~んと唸った子爵を後に、王女はその場から退出していった。


この同時刻、ラシエ村からラシャ王子達一行が出立して3日目のことだった。






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