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R15以上な事は遠慮します。

認識が甘かったと言えよう。

しかも準備が万全でなかった。

突然思いついた計画だったから、アバウトだったことは認めよう。

だが、仕事速すぎだ。



俺は、確かに第1王女アリシャと対峙し、王弟だという事実を隠して

俺に妻役をさせたラゼスさんをギャフンと言わせたくて

いたずらしてやろうと計画を考えた。


王女をなんとか上手く説得し、誘拐されて慌てふためくラゼスさんを見てみたいと思った。

だからこそ、王女を誘い実行してみたら

いつの間にかバンハトさんがいなかったことに失念していた。


一体、いつのまにと思って、当時の担当していた騎士に聞けば

拘束されていたはずのバンハトさんは、覇気を失って俺の説教を聞かされている時に

逃がしてしまったのだと。


そういうことは早く伝えようよ。


幽閉する予定だったという川沿いの倉庫に着いて簡易夕食を

一緒に着いてきた騎士2人と食べていたところを

ラゼスさんとバンハトさん、村の警備隊の皆に発見された。


食事をしていたから、扉が開いた拍子に、3人で飛び上がって驚いた。

「大丈夫か、マキト」

蝋燭3本の薄暗い中をラゼスは入って来たかと思うと、俺をを自分の胸へ抱き寄せた。

「ラ、ラゼスさん・・・」

頭をしっかり彼の手で固定されて、身動きが取れない。

体に回されたもう片方の手が腰に回っていて、胸にあたっている。

「えっと、俺もごめん」

「ああ」

ゆっくり確かめるように手が動き回るので、くすぐったくて

俺は身じろいだ。


「バンハトさんから、全て聞いている」


その一言で、俺は片手で顔を覆い、しまったあという顔になった。

一緒にいた騎士達は、ラゼスさんの本当の爵位を知っているので、既に端に寄り

敬礼を行った。

「黙っていて、済まない。アリシャから俺の事を聞いたと思うが。詳しく説明していなかった為に、

姪が迷惑を掛けた。マキトに危害を加えようとしたと聞いて、心配した。

しかも姪に協力を申し出て、同じ立場だったらと、傷みを教えようとしてくれたことにも感謝する」

本当に全て知っていたこと、バンハトさんが機転(本当は、ラゼスさんをギャフンとさせたかったことを伏せて話していたこと)を利かせていたことに気付いた。


「アリシャ姫をお咎めなしにしてくれるだろ?」

俺が頼りない顔で見上げると、彼は苦笑した。

「君が望むように善処しよう。と、言いたいところだが父親である王に任せた。

本来は牢に入れるなど罰しなくてはいけないところを、姪は君に救われた形になる」

ラゼスは、肩を竦めた。考えを見透かされて俺は笑うしかない。

「はは、お見通しだ」

「有難う。王からも礼を言われた」

「そっか。まあ、隠れていたところを見つかるのは早かったけど、良かった」

「あ、全くのお咎めなしではないよ。未遂だったのだから、それなりにお仕置きはある。

王がアリシャには、1か月座敷牢と言われる幽閉部屋行きを命じた」


「え?幽閉?」

「まあ、誰も訪れない部屋で1か月謹慎というところだ」

「俺は?」

「マキトは、何も」

「アリシャ姫の騎士は?」


ラゼスが振り返ったことで、アリシャ付きの騎士達が狼狽える。

ラゼスは、その様子をそっと窺いながら

「ああ、近衛騎士の君達は主であるアリシャに逆らえなかったという話なので、

1か月騎兵隊のザス将軍のところで鍛えてもらえるそうだ」


「ええっ」

「あの将軍に?」


その慌て振りから、きっと凄い将軍の元へ送られるんだなと察した。

ワタワタしている騎士達は、可愛らしかった。

クスクス笑っていると、近衛の騎士達が泣き言を言う。


「夫人。我々は騎士達の中でも有名な、鬼将軍に絞られるということですよ」

「え?鍛えてもらっては、そういうことなんだ」

「はい」


ラゼスは、共犯したことでお咎めがないとでも?と言いたそうな顔だ。


「アリシャにも問質している。さあ、もうこの未遂事件は終わりだ。宿舎へ戻ろう」

「え?今更だけど、王様との夕食は良かった?」

「ああ、お開きだ。誘拐未遂が起きたんだ。王も断念した。

明日の出立で見送りの時に挨拶をすればいいということになった」

「そうか。緊張していたけど、それはそれで良かった。

いろいろボロが出ることを恐れてたからな」


近衛の騎士達は意味が分からなかったようだが、警備隊の皆は意味が分かって苦笑している。


村内では乗らないというユニコーンのような馬でのお迎えに感動してし

早速ラゼスが連れて来た馬の乗りこむ。

警備隊の皆は、それぞれ馬に乗り、跨ったばかりのマキトの周囲に集まり歓迎してくれる。

「マキト良かったな」

「心配したぞ」

皆に声を掛けられ、マキトは申し訳なくなった。


ラゼスの合図で川沿いをゆっくりと歩き始める。


馬のカッポカッポという蹄の音をバックに、暗闇を見つめながらマキトは

自分自身にも責があるのではと思う。

「ごめん。却って心配かけてしまったんだな」

「はは、まあな。でも、アリシャは俺の言葉や行動に驚いていた。ラゼス夫人が言った通りだったと

零していた。あいつは、反省している」


苦笑気味のラゼスに、マキトはほっとしたものの。

「そういえば、肝心な原因の第2王女の方は?」

姉のアリシャが俺を誘拐しようとまで企てたのだから、妹のリーシェはどうなったのか?

「第2王女か。彼女がどう考えているかは、まだ分からない。

ただ、俺が来ても沈黙していたし、姉が起こした事にも何も横やりはなかった。

先にマキトの救出しか頭になかったから、俺に何か言ってきたかもしれないが

聞かれたのか、言われたことも分からない。」


背後に控えていたバンハトも頷いた。

「俺は、急いでラゼスさんの居場所を聞きだし、報告することしか頭になかった。

王女に関しては、何もなかったと思う」

他の騎士に詰所へ連絡してもらい、ベルダからターラント、ロッサへ連絡が伝わり

落ち合って来たという話。


「仕事速いですね。」


「マキト。俺達はいざという時はやる男だ」

「そうそう」

ロッサとベルダが明るく答える。


「そうみたいだね。有難うございます」

「いえいえ」

「なんの」


ラゼスを始め5人の馬は、宿舎へ向かった。

流血沙汰にもならなく、この事件は幕を閉じた。






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