家に馴染めない夜
夜、家の灯りがすべて消え、静寂だけが部屋を支配すると、胸の奥がぎゅっと締め付けられるような感覚が襲った。義母の視線、義姉の笑い声、家中に漂う「私を試す目線」が頭の中をぐるぐると回る。布団の中で丸くなる私の心は、まるで泥のように重く、絡みつく不安に覆われていた。
「私は…ここでちゃんとやっていけるのかな」
声にならない呟きが、暗い部屋に響く。胸が押しつぶされそうで、涙が自然と溢れる。幼い頃、母の腕の中で安心を感じていたあの感覚。今も、あのぬくもりが恋しくてたまらない。けれど母はいない。私を完全に守ってくれる存在は、今はただ一人、夫だけ。
布団の端で丸まった私は、自然と夫の存在を想像して頭の中で繰り返す。
「あなたがそばにいてくれたら、私は何も怖くない…」
長男教に入信した信者のように、私は夫を絶対神のように崇める。夫が微笑むだけで、義母や義姉の目も、家の圧力も、すべて溶けて消える。全身の神経が夫に集中し、胸がぎゅうっと熱くなる。
しかし、心の奥のどろっとした部分は、まだ完全には消えない。
「義姉が夫を見たあの視線…私の居場所を奪う気だったんじゃないか」
嫉妬が重くのしかかり、胸の奥で粘りつく。夫が私のものだという確信を、私は何度も何度も自分に言い聞かせる。信じたい。信じなければ、心が溶けてしまう。
布団の中で目を閉じ、夫の手を握る姿を想像する。ぬくもり、安心感、優しさ…そのすべてが私を支えてくれる。小さな声でつぶやく。
「お願い…私を見捨てないで。あなたがいれば、私はここで生きていける」
涙が頬を伝う。甘えたい、抱きしめてほしい、守ってほしい。全ての願いが、夫だけに向かう。長男教の信者が神にすがるように、私は夫に自分の心も体も委ねた。
その夜、私は泥のような感情の中で眠りについた。嫉妬、不安、甘え、依存…すべてが絡み合い、胸の奥でぐつぐつと煮えたぎっている。でも、唯一確かなものがあった。
それは、夫という絶対的存在。夫がそばにいる限り、私はこの家で生きていける。
その想いに全てを委ね、私はようやく深い眠りへと落ちていった。
