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嫁いびりはナンセンス  作者: 櫻木サヱ
結婚と新しい家族
3/16

義母との初会話

義実家での初めての朝、目が覚めると外はまだ薄曇りで、窓から差し込む光が柔らかく部屋を照らしていた。少し眠い目をこすりながら布団から起き上がると、夫はすでに顔を洗い、台所で義母と話していた。その声が聞こえるたびに、心臓がちくりと痛む。


「私はこの家で、ちゃんとやっていけるのかな…」

小さくつぶやくと、自然に夫の胸に頭をもたれて甘えたい衝動が湧く。子どもの頃、母の肩に頭を預けて安心を得ていたあの感覚と同じだった。今は母の代わりに、夫が私の世界の全ての安全地帯になるのだと信じている。


朝食の席に座ると、義母がにこやかに話しかけてきた。

「この家はね、こういう風にやるのよ」

優しい口調だったが、どこか試すような響きもあった。私はぎこちなく微笑みながら、「はい…わかりました」と答える。心の奥では、言われたことを完璧にこなせるか不安でいっぱいだった。


義母の視線が私の手元や料理の取り方にさりげなく注がれる。その瞬間、私は無意識に夫に目を向ける。彼の優しい笑みや小さくうなずく仕草に、ホッと胸を撫で下ろす。夫がそばにいてくれるだけで、こんなにも心が落ち着くなんて、自分でも驚くほどだった。


義母の口調は柔らかいけれど、細かい指示や家のルールが次々と出てくる。子どもの頃、母に「こうしなさい」と言われて反抗したくなる気持ちと同じような、複雑な感情が胸に渦巻く。でも、私は素直に従うことを選ぶ。なぜなら、もし何かうまくいかなくても、夫が間に入ってくれると信じているからだ。


食後、夫がそっと手を握って囁いた。

「大丈夫だよ。君はよくやってる。無理しなくていい」

その言葉に、胸の奥の小さな緊張がふっと溶けていく。義母に指摘される不安や、自分が間違ってしまうかもしれない恐怖を、夫がすべて受け止めてくれるような気がした。私はその瞬間、自然に甘えた気持ちでいっぱいになり、夫の腕の中に頭を預けた。


午後になると、義母との会話も少しずつ落ち着きを見せる。けれど、まだ家の空気には微妙な緊張感が残る。私はそのたびに夫に意識を向け、心の安全を確認する。ここで頼れるのは、やっぱり夫だけなのだと再認識した。


夜、布団に入ると、一日の出来事が次々に蘇る。義母の柔らかいけれど鋭い言葉、夫の優しい笑顔、そして自分の小さな不安と甘え。胸の中でそっとつぶやく。

「大丈夫。あなたがいるから、私は頑張れる」

結婚生活の中で、まだ見えない課題は多い。でも、夫がいてくれる限り、私は何とかやっていける――そう心から思えた、初めての義母との朝だった。

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