最後の晩餐、支配の女王
食卓に、湯気の立つ味噌汁と焼き魚。
表面上は穏やかな“家族の食卓”。
でも、空気は張り詰めていた。
義母の笑顔は氷のように固く、ヒロインの瞳は炎のように冷たい。
「最近は…あなた、随分強くなったのね」
義母がわざとらしく箸を置く。
「お義母さんが教えてくださったからですよ」
微笑むヒロインの声は、柔らかくて、刺さる。
義母はその一言に息を飲む。
いつもなら息子の肩を持つ夫も、今は黙って二人を見ている。
「あなたね、息子を変に操るような真似はやめて」
「操る? いいえ、支えているんです」
その返しに、義母の目が鋭く光る。
沈黙が落ちる。
時計の針が“チチ、チチ…”と響く。
「お義母さん、もういいんです。あなたの世界は終わったの」
ヒロインは立ち上がり、まっすぐ義母を見つめる。
「息子さんは“私の家族”として生きてる。
あなたの“子ども”じゃなく、私と並ぶ“人”として」
義母の唇が震える。
「何を…言ってるの」
「あなたが信じてきた“長男教”も、“嫁の上下”も、
もうこの家では通用しない。私が、この家を守るから」
夫が、静かに立ち上がる。
「母さん、もう…いいだろう」
その一言が、義母の心を折った。
椅子がきしむ音。
義母は何も言わず、ゆっくりと部屋を出ていった。
ヒロインは深く息を吸い、ふっと笑う。
黒い沼のようだった胸の奥は、不思議なほど静か。
嫉妬も怒りも、すべて“自分の力”に変わった。
――戦いは終わった。
けれど、支配者としての新しい日々が始まる。
「さあ、ごはん冷めちゃうよ」
そう言って笑う彼女は、もう“嫁”ではなかった。
この家の空気すべてを支配する、静かで恐ろしい女王。




