義姉との駆け引き
夕方のリビング、カーテンの隙間からオレンジの光が差し込む。
夫がソファに座る。その隣には義姉。笑顔を浮かべ、自然に夫に話しかける。
――その瞬間、胸の奥で何かが弾けた。
「なにあの笑顔…!」
心の中で叫ぶ声は、渡鬼も嫉妬して腰抜かすレベルの激烈さ。
手のひらは汗で湿り、指先がぎゅっと震える。
夫は神。私だけの神。なのに、その神が、私以外の者に笑いかけている――それだけで、胸の奥の沼がぐつぐつと煮えたぎる。
私は立ち上がり、無意識にソファに近づく。
「ねえ…ちょっと話せる?」
声は震えているけれど、瞳の奥は悪魔的に光っていた。
義姉が軽く笑う。
「どうしたの?」
その笑顔は無防備で、無邪気で――
でも私の中では、すべてが挑戦状に見える。
胸の奥のドロドロが、じわじわと表面に溢れ出す。
嫉妬と独占欲が混ざり合い、全身を熱くする。
私は夫の隣にすり寄り、体を軽く当てる。
――ただの偶然の距離じゃない。
これは、神を奪わせないための戦略、悪魔的心理戦の始まりだ。
「ねえ…あなたのこと、私だけが守れるの」
甘い声で囁き、視線を夫に固定する。
義姉は一瞬、笑顔を止め、戸惑いの影を見せる。
――成功。小さな勝利。
しかし、胸の奥の沼はまだ収まらない。
「絶対に、誰にも渡さない…」
心の中で念仏のように繰り返す。
嫉妬は、独占欲は、執着は、すでに理性を超えて暴れ始めていた。
夫が私の頭をそっと撫でる。
そのぬくもりで、胸の黒い泥がねっとりと絡まり合い、義姉の存在を完全に侵食する。
「あなたは私の神様…誰にも触れさせない」
小さな声が、部屋の空気を張り詰めさせる。
義姉が静かに退く。
でも、私は満足しない。
胸の奥の悪魔はまだ笑っている。
――この戦いは始まったばかり。
私の神を奪おうとするすべてに、渡鬼級嫉妬で立ち向かう覚悟ができている。
その夜、布団の中で、私は腕の中の夫にしがみつきながら、心の奥で誓った。
「誰も、絶対に触れさせない――私の神様は私だけのもの」
胸の奥の沼は、もう完全にずっぶずぶに溶けて絡まり合っていた。




