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結局、わたしとマコは擦り傷と打ち身だけで、コウはわたしたちの代わりに瓦礫の大半を受けたにもかかわらず、奇跡的にも腕の骨折、肋骨のひびと軽度の頭の裂傷だけで済んだ。
なのに、1週間たった今も、コウの意識は戻らない。
わたしのせいで、コウは傷ついてばっかりだね。
あれから、わたしとマコは母の所で世話になっていた。
精神的に参ってしまったわたしを見かねてのことだった。
それにマコを見舞いへ連れて行くわけにもいかなかったから。
毎日見る、眠り姫のようなコウ。
キスをすれば目覚めたりして。
そういえば、コウの寝顔っていつから見てないんだっけ?
とりとめなく話しかける。
毎日、毎日。
「まま、コウ、どうしちゃの?」
隣でベッドの上のコウを見上げてる、マコ。
「コウはね、今眠ってるのよ。だから、シーっね。」
「うん、シーッ。」
今日は、マコがどうしてもわたしについて来ると言い出して。
おとなしくすることを約束させて連れて来た。
静かにしているように言っても、もう飽きてしまったのか、そわそわし出している。
ベッドの横のイスに座り、マコをひざにだっこする。
「マコ、じゃあ、ちっさい声でお話しよっか。」
「うん、ちさいこえ。」
「マコは、コウのこと好き?」
「うん、しゅき!まお、およねしゃんなゆの!」
「コウのお嫁さん!?」
「うん、およねしゃん!」
「そんなにしゅきなのねー。でも、だめなんだよ~。」
「えぇ!だめ!コウ、まお、きらい?」
もう、そんなにウルウルしちゃって、かわいいんだから。
「違うよ、コウはマコのこと大好きだよ。でも、ねぇ。マコひみつまもれる?」
悪戯心が出てきちゃったかな?
「ひみちゅ?」
「そ、絶対他の人に言っちゃだめだよってこと。守れる?」
ひみつという言葉に反応して、顔が輝いてるぞ。
必死に首を縦に振るマコに、さらに小声で伝える。
「コウはね、マコのパパなんだよ。これはひみつのひみつだからね。」
「ぱぱ!?」
「こら、シーッ。」
慌てて、口を手でふさぐマコ。
ピクッ
視界の隅で何かが動いた気がした。
え?
手?動いた?
はやる気持ちを抑えて、視線を顔の方へ上げていけば、ゆっくりとまぶたが開いて。
「ま、り?」
小さく、かすれた声が名を刻んだ。
「こ、コウ!」
あふれてくる涙は止まらないのに、声はつまって出てこない。
何が起こったかわかっていない、大小の2人は首をかしげている。
パニックになりながらも、マコをひざから下ろし、先生を呼んだ。
とりあえず、先生の診察が終わるまでの間に、マコを母へ預け、すぐに戻ってきた。