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第99話 交渉

「私は良いお話だと思います。ただ……ソラさんの事を考えるとあまり賛成は……」


「え? 俺の事を考えるとって?」


「今以上にソラさんの負担が大きくなるからです。それを私が言うのって今更変ですけど……」


「あら、リィナにその自覚はあったのね?」


「ずるいというのは……」


「勇者をアメリアが独占してるという見方が他の貴族から出ているのも事実だからね」


 勇者を独占って過去にリィナのひいおばあさんが勇者と旅をしたって話と何か繋がりがあるのだろうか。


 あれ、一緒に旅をしたのであればもしかしたらリィナって前の勇者の血を引いていたりするんじゃないか?


 ひいおじいさんって勇者だったりしないか?


「わかってます。でもあんな戦いが今後あるのだとしたら……ソラさんの身にもしものことを考えると……身勝手だって言うのはわかってます。それでも……」


 そうか……。


 独占とか俺からすれば知ったこっちゃない。


 リィナは俺の事を心配してくれているんだ。


 マリィ王女の話ってリィナにとっては利があるだろうに……。


 そういえば俺自身、俺の事はあんまり考えてなかったな。


 勇者として強くならなくちゃいけないってなんだか義務のように思ってきてたけど……でも。


「そうだね……リィナ。ありがとう」


「え?」


 こんなことを言われて引き下がれるわけがない。


 リィナの生まれた国だ。


 リィナの大切な人達がいる。


 俺の力で何とかできるのならその時はどうにかしたい。


 結局、何があろうがなかろうがどういう状況であれ不測の事態なんていつでも起きる。


 その時がどうしよもなくても、なんだかんだどうにか頑張るしかないんだ。


 命を賭してでも。


 これはいきあたりばったりの精神論だ。


 でもそんな精神論でも覚悟のあるなしであきらめず頑張れるかどうかがきまる。


 思えばここまで頑張れてきたのってほとんどリィナがいたからだ。


 おかげで逃げずにここまでこれたんだ。


 俺を勇者にできたのは紛れもないリィナだ。


 キョトンとしているリィナを差し置いて俺はニャーに問う。

 

「ニャーはどう思う?」


「ニャーは賛成だにゃ」


「んー。即答だな」


「もちろんだにゃ。ニャーは困っている人がいるのなら全力で剣をふるうのにゃ」


「でも誰これ構わず助けるなんて難しいぞ?」


「それはもちろんだにゃ。理想は理想にゃ。けどキータが焦がれた勇者に、騎士に……ニャーは答えを求めるのにゃ」


「ニャーらしいな」


「きっとそこにニャーの理想もあるのにゃ」


「わかった。それでザンカは?」


「ん? なんだ? あ、おかわりある?」


 手をあげてちょいちょいっとメイドを呼んでスープのおかわりを求めるザンカ。


「はい。ただいまご用意いたします」


 ささっとアツアツのスープを持ってくるメイド。


「あんがと」


 しかし、そのアツアツのスープをものともせず口に運ぶザンカ。


 なんてお気楽な奴なんだ。


「いざという時にアーグレンの力になるって話だよ」


「んん? 力になる? 強い奴と戦えるか?」


「場合によってはね」


「お? 最高じゃん。 で、いつ殺し合えるんだ? この前の黒い奴らと羽生えた奴らは弱かったからもっと強いのがいいな」


「いや、いざというときの話だって、そう何度も危機が訪れちゃたまったもんじゃないよ」


「そうか。なら俺は別にいいぞ。俺はソラを殺した奴を殺すだけだ。強い奴と戦えるのは嬉しい」


「ほんと野蛮なやつだな……なら一致したな。マリィ王女様、その話受けさせてもらいます」


「感謝いたします。あなた方と良い関係を築けることを願っていますわ」


 こうして重たい朝食が幕を閉じようとしていた時だった。


「あのぉ……このお話って私がいてよかったもの……なのでしょうか?」


 ぷるぷると震えるルチア。


「構いませんわよ? あなたのお話は聞いてます。リィナのお友達ですわよね?」


「は、はい。大変恐縮ですがレ、レイーネ聖母様の下で一緒に修行させていただいておるます! ルチアと申します」


「あら緊張されちゃって……ごめんなさいね。申し遅れましたわ。アーグレン国第四王女マリィ・ベル・アーグレンです。そんなに身構えなくてもいいのに。ね? リィナ」


「ふふ、そうですね。ルチアも自然体でいいんだよ?」


「リィナはともかく私が王女様の前で無礼な態度をとれるわけないでしょう?!」


「あら、壁を感じるわ。これはもっと親睦を深めないといけないわね? リィナは旅に出てしまいますしキャロルを呼んで週に一度はお茶会を開きましょうか?」


「も、申し訳ございません。私の心臓がもちません……」


「あら悲しい。振られたわ」


 それから重い朝食を摂り終えてマリィ王女、ルチアと別れる。


 俺達は城の庭園にあるという龍脈の秘跡へと訪れた。


 燦燦さんさんと輝く太陽の下。


 城の整えられた美しい庭園の奥に見たことのあるミミズクの像はあった。


 古くからあるだろうその像の周囲は入念に手入れをされている。


「それじゃちょっと行ってくるよ」


「はい」


「ん? どこへ行くんだ?」


「この龍脈の秘跡に触れるとなんだかよくわからない空間に飛ばされるんだよ」


「よくわからない空間?」


 ザンカはおもむろに龍脈の秘跡を触る。


 けれど何も起きない。


「なあ。何も起きないぞ?」


「勇者以外には反応しないみたいなんだよ」


「なんだか不思議な石なんだな」


「ほんとにな。ニャーは一旦……」


「ここで待ってるのにゃ」


「わかった」


 龍脈の秘跡は勇者だけに反応を示す。


 今のところニャーが勇者であることを知っているのはここにいるメンバーだけだ。


 後ろにはメイドが控えている。


 王城お抱えのメイドだ。


 俺たちの情報がどのように扱われているかはよくわからない。


 今のところ勇者の待遇はかなり高い。


 けれど裏を返せばそれだけの期待や狙いがあるのはさっきのマリィ王女との会話で明白だ。


 今後どのように巻き込まれるかわからない。


 まだマリィ王女だからなんとかなっているのかもしれない。


 これが善意であれ悪意であれ面倒ごとはやっぱり避けなきゃいけない。


 そしてニャーとはむやみに開示する必要はないという結論になった。


 リィナは明かしてもいいのではないかと言っていたけど俺とニャーはその反対の考えだった。


 勇者でないがゆえに必要な支援を受けれないなんてデメリットもあるだろうけれど……。


 あ、でもマリィ王女になら明かしても良かったかもしれないな。


 まあ今後どうなるかよくわからないから言わないが、やっぱり一番の理由なのだけれども。


 ニャーとリィナが見守る中で俺は龍脈の秘跡に触った。


 視界が歪み真っ白な世界へと飛ばされた。


「やっぱりこの何もなさが不気味だよな……」


 無音、見渡しても白い光一色で何もない。


「ほんと何もないな?」


「そうだな。さてと……は?!」


 俺は隣を見た。


 そこにはなんと物珍しそうに周囲を見渡すザンカの姿があったのだ。


「え?! なんでザンカがここに?!」


「ん? さあ?」


「さあ? って……待てよ」


 ここへ来る前一度ザンカがあのミミズク像に触っていた。


 もしかすると勇者が触れる前にあれに触ると一緒にここに来れる仕組みなんじゃないか?

 

「リンク!」


 前と同じ青い線が描かれる。


 俺は即座に退出をタッチした。


 再度光に包まれると元の場所へと戻される。


 すると慌ててるニャーとリィナがいた。


「戻ってきたにゃ!」


「ソラさん! ザンカさんが!」


「ああ、まさか向こうにいっしょに行けるとは思わなかった」


「ということは私も龍脈の秘跡に触れば……」


「ああ、どういう仕組みなのかはわからないけど触れば一緒に向こう側に飛べるらしい」


 というかそれならこれを手入れしてる人とかも一緒に飛んじゃわないか?


 とりあえずその疑問は置いといて。


「行ってみよう」


「はい」


 リィナがミミズク像の頭部に手を当てる。


「一応ザンカももう一度触ってくれないか?」


「ん? いいけど」


「よし」


 俺とニャーが目を合わせ二人で同時にミミズクを触った。



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