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第95話 禁門の書庫

 女王様の謁見が終わった後に俺とリィナは早速、禁門の書庫へと行ってみないかという話をした。


「体はもう大丈夫なのですか?」


「ずっと寝ていたおかげもあってか今はピンピンしてるよ」


「本当ですか?」


「え? あぁ。ありがとうね」


「無理はしないでくださいね」


「大丈夫だよ」


 なんだか過剰に心配されてるような気がする。


 まあ血まみれで気を失ってずっと寝たきりだったんだ。


 本当に心配をかけちゃったな。


 ただ今はいろいろと知れる良い機会だ。


 これを逃す手はない。


 勇者の事についてもそうだけど桃源郷の果実について知れるいい機会だと思う。


 考えすぎな気もするけれど、これを探してるとなると必然的に俺達はこの国を離れることになる。


 となれば全力で止められることもあるかもしれない。


 それから禁門の書庫に行きたいことを使用人に頼むと一度、執事長に確認をすると行ってしまった。


 ここまで大きい城となれば使用人の組織もそりゃ大きくなるというものだろう。


 そう言えばこういう所で働く人って自分からなりたいって働いてたりするのだろうか。


 見ている感じ所作だったり礼儀だったり、なんというか動作の端々で気品のような物を感じるから働き口がなくてしぶしぶなったって感じじゃない。


 それからお借しいただいている豪華な部屋でしばらく寛いでるとノックの音が響いた。


「失礼します」


「どうぞ」


 その呼びかけにリィナが応じる。


「お待たせいたしました。シーナ女王陛下よりお話を賜わっていらしたのですね。申し訳ございませんでした」


「あ、いや。さっきお話したばっかりでしたので……無用な手間を取らせちゃってすみませんね」


「とんでもございません。それでは禁門の書庫へとご案内いたしますのでこちらへ」


「リィナはもちろん行くよね?」


「もちろんです!」


「ニャーとザンカはどうする?」


「ニャーもいくにゃ!」


「んー、暇だし行こうかな」


「わかった。じゃあ行こう」


 それからまたしても廊下を歩きまわる。


 階段を下りに下ってどんどん下の階へと移動した。


 横目に通り過ぎる柱の数々。


 大きな螺旋階段をひたすら下へと歩き抜くと辿り着いた。


「こちらアーグレン地下、禁門の書庫でございます」


 光の紋様のある古めかしい扉。


 重そうな扉を開けると地下空間であるにもかかわらずとてもたくさんの書物が納められた棚が所狭しと並んでいる景色が広がる。


「すげぇ」


「にゃぁ……」


「まさかこれほどだなんて」


「へぇ」


 壁一面、上から下までが本棚。


 背など届かないのを見越し移動式の脚立が脇にいくつか備え付けられている。


 一番関心したのは光源だ。


 廊下は燭台であったのにここにある光源は謎の光の球だ。


 それらが無数に浮いていてとても幻想的な空間を作り出している。


 まさに異世界の図書館って感じがする。


「おや、お客人かな?」


 どこからか落ち着いた男性の声が響くと使用人の娘。


「はいメーゲン様。勇者様方でございます」


「ゆ、勇者様?!!」


 バサバサと本の落ちる音。


 そして走る音が反響する。


 あわただしく現れたのは長身のイケメンだった。


「わざわざおいでいただけるなんて……とても光栄でございます! 私は禁門の書庫の管理を任されているジール・エル・メーゲンと申します。以後おみしりおきくださいませ」


「カタナシ ソラです」


「お久しぶりです。リィナ・ルナレ・アメリアです」


「ニャーと申しますにゃ」


「ケンジョウ ザンカだ」


 感極まったようにメーゲン。


「あぁぁぁ……いいですね! 私は勇者様御一行と自己紹介できてとても光栄でございます! っとそうですね。アメリア様はお久しぶりでございますね。お変わりなさそうでなにより」


「はい。メーゲン様もお変わりなさそうで────」


 リィナを遮るメーゲン。


「して!! 勇者様は勇者様の事を知りたいと伺いましたが間違いございませんか?!」


 なんだかのっけから異様な雰囲気のある人だと思ってたけど段々雲行きがおかしくなってきたぞ。


「ま、間違いはないですよ?」


「いいですね! 私めでは推し量れない思慮深さを感じます! それについての著書をと伺っておりましたが如何せん……まだ拾いきれてないのです。っく!!!!」


「ど、どうしました?」


「いえ、せっかく勇者様がいらしたと言うのに!! まだ数冊しか拾いきれてない自分の不甲斐なさに!! つい怒りが!」


「いや、さっきの今だし……集めきるだなんてそれはいくらなんでも難しいですよ」


「いえ!! 長くこの国の書物を保存し管理する生業の者としてこの上ない失態!!」


 ああ、この人だめな人だ。


 目がなんだか逝ってしまっている。


「どのような罰でも私には受ける覚悟があります!! さぁあ! なんなりとお申し付けくださいませ!!」


「ちょ、ちょっと大丈夫だから! 待って土下座しないで!」


「ぉお! さすがは勇者様。誠心誠意の謝罪を勇者様の間では《《ドゲザ》》! と呼ぶお話は誠でありましたか!」


「ほんとよく知ってるな」


「それはもちろんにございます! あぁ勇者様。それは私が子供の頃からの憧れ! いつしかお会いしてみたいと常日頃から願っていた次第にございます!!」


「お、おう。俺も……あえてよかったよ」


「くぅ……なんともっだいないおごどばぁあ……」


 勇者って言ってもいろんな奴がいたんじゃないのだろうか。


 勇者ならだれでもいいのかな。


「失礼……取り乱しました。趣味の研究や読書がここへきて勇者様のお力になれるだなんて私はもう阿鼻叫歓喜大喝采あびきょうかんきだいかっさいでございます!!」


「その謎の言い回しはこの際スルーするとして趣味の研究?」


「はい! 禁門の書庫の管理とはまあ暇なのです。管理環境の整備に本の質のチェック等々まあ様々ではございますが。故にたくさんの本に触れるわけです。加えて要らぬ知識も増えます」


「へぇ、でも研究については興味あるな。何を研究しているんだ?」


 ここでザンカがあくびをした。


「《《よくぞ》》! 聞いてくださいました!! 例えば魔術言語の違いによる新規術式の開拓です!」


「新しい魔法の開発みたいな?」


「はい! 例えば奇跡は神の用いた言語を使い。魔法は我々の使う言語を使うことで明確に違いがあるのですがそれらを組み合わせることによって神を介して新たな魔法を創生するというものですね。それでですね────」


「ま、待った! もう、もう大丈夫。ありがとう」


「あら、ここからが面白いというのに」


「面白いのはわかったからとりあえず要件を済ませる」


「はい。なんなりと!」


「まずここの本を読ませてほしい」


「どうぞお好きにお使いくださいとても光栄です!! あちらのテーブルと椅子をお使いくださいませ!」


「……次に収集した本を見せてくれないか?」


「それもあちらのテーブルに並べてございます!! 後ほど追加分をお持ちいたします!!」


「最後に……桃源郷の果実について知ってるか?」


「ほぉ。旧イーエン国のお伽の物語の果実ですな?」


「そう言われてもいまいちピンとは来ないけれど実のところ勇者についてよりも桃源郷の果実について知れるかと思ってきたんだ」


「ソラさん……」


「左様でございましたか。しかし……お力になれず申し訳ございません。あれに関する本は私の記憶の限りですとなかったと思います」


「そうか……」


「ですがそれについて詳しい人物がセイエンティアの魔導学院におりますよ」


「本当か?!」


「ええ、古い友人です」


「その人の事を教えては────」


「んーむ。そうしたいところなのですが……」


「何か不都合が?」


「いえ勇者様きってのお願いとあらば叶えたいところではあるのですが……」


 チラチラと何かを訴えかけるような目で見てくるメーゲン。


 そうだよな。


 何もただでというのも悪いだろう。


「お金か? まあそうだよな正当な対価は必要だよな」


「それは違いますね」


「え? じゃあなんだ? 何か依頼とかか?」


「そうですね。この私が書いた魔導学の論文に勇者ソラ様の直筆サインをいただけないかと!!」


「……は?」


「だめ……ですか?」


「だめじゃないけど……それでいいのか?」


「もちろんでございます!! この上ない喜びに存じます!」


 もうこの人のテンションが疲れてきたころ合いで颯爽と魔導学の論文とやらの本を持ってくるのだった。


 題名、破滅の光。


 神代の大戦にてバーディアが地表に落とし全てを無に還した魔術の解析。


 すっごい物騒な内容の物が書かれている。


「ここにするするっとご記入いただければとぉおお!」


「ああ、わかった」


 なんの羽かわからない羽ペンを渡される。


 インクがないけど書けるのかなと疑いながら筆を走らせると不思議と書けた。


 カタナシ ソラっと。


「すまないけど俺日本語しか書けないからね?」


「な、なんとあの日本語でご記入くださるとは?! なんという幸せ! 私この本一生大事にします!」


「ああ、うん。なんか……そんなに喜んでもらえてよかったよ」


 自分のサインがこんなに喜ばれる日が来るとは夢にも思わなかった。


 

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