第83話 心に落ち行く
リースが連絡橋から落ちたのと同時にアルχに捕らえられていた人達は解放された。
しかし解放されたは良いものの宙に投げ出される形となってしまう。
その時、サーヴェリスの声が響く。
「ホワイトウォール!!」
大きな光の壁が宙を覆い足場を形成した。
その壁はどこかリィナの使っているルミニ・マルスと似ているようで違う。
まず国王がサーヴェリスに抱えられ降りてくる。
次いで他の人達も騎士達に抱えられたりして皆無事で降りることができた。
そして国王が俺のところへと来る。
「勇者殿、此度の活躍。お見事であった。深く感謝する」
早くリィナのところに急ぎたい。
けれど王様相手に無礼なことをしてしまえば後が怖い。
無難にやり過ごして先を急ごう。
「いえ、身に余るお言葉にございます」
「あの黒の長を退けるとは……勇者と言うのは見かけでは判断できぬものであるな」
まじまじと国王は俺の葉っぱを見る。
そこへマリィ王女。
「お父様。今は」
「であるな。此度の指揮権をサーヴェリスへ! これより国家転覆を諮るソネイラルを討つ!」
「はは! 城内は混乱しているはずです。先ずマーティン殿は城内の混乱をまとめる役目をお願いします」
サーヴェリスは国王陛下へと向かい会釈をしてから淡々と指示を出すのだった。
「おう、わかった。では早速行くとしよう。行くぞソロネ」
筋骨隆々の神父はカールした髭を撫でながらお付きの騎士に来るよう命じた。
するとソロネと呼ばれた騎士が俺を一瞥し早々にマーティン神父の後を追う。
何かしただろうか。
「次に────」
城内の治療や救護をする部門の立ち上げと王都貴族、王族の護衛を四天のエトレア聖母へと任せる。
その場に残ったのは俺とサーヴェリス、ステファン神父となる。
今はステファン神父についている守護騎士が各々の武器を取りに行って戻るまで待ている状況だ。
「今残った者でソネイラルを討ちます。ソラ殿時間をくれたこと感謝する」
「いや人数が多いことに越したことはないですからね……今にでも行きたいところですが」
「こうしている間にも新たな天使を召喚されては面倒だ。ステファン殿もこの采配に異存はありませんか?」
「ああ。妥当だと思う。さて、こうなってしまった以上、自らの手で奴に引導を渡してやらねば四天の守護柱として示しがつかぬ」
マリィ王女と議会の時に討論をしていたステファン神父は眉間にしわを寄せながら言った。
「心強いです。ステファン殿」
「だが破壊の神に染まった奴の実力は未知数。勇者とサーヴェリス聖騎士長には期待しておりますぞ」
そこへと早々に戻ってきたお付きの淡い赤色の長い髪をなびかせる女性の守護騎士。
「おまたせしました!」
「ありがとうノルン」
「お役に立てて光栄です」
ステファンは金色の錫杖を受け取ると空へとまっすぐに掲げて奇跡を唱えるのだった。
「では各々方。準備はよろしいかな?」
皆一様にうなずく。
「天より見守りし我らが主神よ。我が望むは世の守護。その御心に応えん我らに尊大な光の恩寵を与えたまえ。アルスエル・エンハンスメント」
地面に広く映し出された金色の紋様が輝き宙に浮かび上がり光が弧を描く。
瞬間、体が軽くなったような感じがした。
「さあ、行くぞ!!」
サーヴェリスの掛け声と共に俺たちはサンレリアス大聖堂へと続く連絡橋を渡る。
逸る気持ちが抑えられない。
時間をかけすぎてしまった。
それから大きな扉を開けて精巧につくられた大聖堂の階段を駆け上がる。
また現れた大きな扉を開けると外を一望でき程の広間へと到着した。
どうやらここがサンレリアス大聖堂の最上階のようだ。
奥には祭祀を行うような神聖そうな場所がある。
そこにリィナがいた。
「リィナ!!」
「ソラ……さん?」
よかった。
まだ生きている。
けれどリィナは光の縄のようなもので拘束されていた。
「無事で……無事でよかった」
リィナがそうつぶやくと横にいたソネイラル。
「おやおや、意外にも早いお付きですね」
そう言うのと同時に右手を前に掲げた。
どこからともなく光輝く錫杖のようなものを取り出し横に控えていた騎士が前に出る。
その騎士は剣を抜き盾を構えた。
「そこまでだ!! ソネイラル。あきらめて投降しろ!」
「投降ですか……」
ソネイラルは溜息をつくのと同時に続ける。
「それではこうしている意味がないのですよ。サーヴェリスさん」
その時、ステファンは叫んだ。
「ノルン!!」
勢いよく前に出たステファンの守護騎士。
次いでサーヴェリス。
「ギガント・カープ!!」
ノルンの横を通り過ぎる巨大な斬撃。
ソネイラルは金色に輝く錫杖を振るって巨大な斬撃を払いのけてしまう。
加えて後に続いたノルンはソネイラルの前に立つ騎士に抑えられてしまった。
その間にソネイラルは錫杖を床に突き刺すのだった。
「主の空を汚す哀れな者に御身の御力を示せ。ログズィール!!」
まずい。
どう動くか観察してから動く癖が抜けてない。
出遅れた。
その時、天より大きな光が中央の広間へと雷音を轟かせぶつかった。
爆発でも起きたかのような衝撃。
中央にいた騎士二人は吹き飛ばされてしまう。
強い光が一面を覆いつくし収束する。
神々しい光の中に現れたのは威圧的な雰囲気を放つ天使だった。
右手に大剣。
左手に槍。
白い鎧に白い6枚の翼。
鋼鉄の仮面のような顔が不気味に微笑んで俺達を見ている。
こちらへと剣を向ける天使。
「ライトレイ」
機械音声が響く。
目を焼かんばかりの熱い光が剣先に収束すると同時に光線が放たれた。
「ルミニ・マルス!!!」
ステファンが咄嗟に光の壁を張る。
光の壁は耐える。
しかし建物がその衝撃を受けきるには足りなかったようだ。
崩れていく広間。
その時だった。
この衝撃にリィナが飛ばされてしまい外に投げ出されてしまったのが見える。
自然と体が動く。
天使の強烈な光線は続いているが関係ない。
光線の軌道の外にいたサーヴェリスが天使へと一撃いれる。
軌道がそれて下へと光線が放たれた。
それを見逃さず俺はリィナのところへと狙いをさだめる。
「神風!!」
すれ違いざまに天使と目が合ったような気がした。
けれどそんなことにかまっている暇はない。
音速を超えて大聖堂の外へと出る。
そして追い付いた。
「リィナ!!」
「ソラさん!」
左腕でリィナを手繰り寄せる。
「すまない。遅れた」
「いえ、生きてて……生きててよかった。もう、ダメだと……」
「あぁ……で、ここからどうしよう」
「……ですね」
勢いよく落下する俺とリィナ。
気が付かなかったが王都を一望できるくらいの高さから落ちている。
やはりとんでもない建築技術だと言いたいところだがそれどころじゃない。
さすがにこの高さから落ちればただじゃすまない。
いや普通に死ぬ。
せっかくリィナを助けられたのにこれでは二人そろってあの世行きだ。
どうすればいい。
何か方法は……。
この瞬間なんだか世界がゆっくりに見え始めてくる。
走馬灯と言う奴だろうか。
『我を使うがいい』
何かが聞こえる。
『何を躊躇しておるのじゃ』
そういえばあの時、リィナを贄にされたかもしれないって聞いた時に怒りと一緒に聞こえてきた声だ。
『使い方は知っておるじゃろう?』
わからない。
けれど体がなぜか覚えている。
本当に気持ち悪い感覚だ。
刀を持つ右手の甲で顔を拭うようにした。
すると燃えるような熱い感覚が顔全体を覆う。
「ソラ……さん?」
リィナは驚きの表情を浮かべて俺を見つめる。
『良い。ぁあ! 久しぶりの感覚じゃ!!』
体の中に今までなかったものが流れているのを感じる。
力が増している。
もともとあった何かが体の中を駆け巡っている。
地面まであとわずか。
体を捻り下に向かって放つ一閃。
「天雷一閃!!」
響く雷の音。
以前のものとは比べ物にならない程の威力だった。
そんな強力な衝撃と共に俺とリィナは吹き飛び着地する。
気が付くと顔の熱い感覚は消えていた。
驚きのあまり互いに何も言えずにいる中でリィナを縛っていた光の縄のようなものが消える。
右腕が怪我をしている。
「その腕────」
そう言おうとした時だった。
俺は思いっきりリィナに抱き寄せられた。




