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第79話 謎の変態紳士

 とても濃い霧の中で誰かが呼んでいる。


 けれど何を言っているのかわからない。


 すると遠くから白い光の球がフワフワとこちらに近づいてきた。


 不思議なことに、そのフワフワした光の球に触れた途端に声が聞こえるようになった。


「やっと……やっと見つけました」


 誰もいない。


 何もない。


 それなのに、なぜか姿が思い浮かぶ。


 白い髪、作られたような柔い肌。


 華奢で小さい姿なのに絶対の信頼があるほどの安心感。


 どうしてこう思うのかわからない。


 でも、なぜか。


 すごい愛おしくて。


 悲しくて。


 嬉しい。


 そんな気持ちが心を締め付ける。


「今はまだ……だね。私は大丈夫だよ」


 機械じみた表情。


 なのに少し困っているように見える。


 すると彼女は俺の胸に手を当ててしばらくしてから去って行ってしまった。


 刀の影響じゃない。


 でも刀の中に残った記憶が熱く彼女を想うようにつぶやいた。


 愛してるよ。ルクシア……と────



────ぱっと目を覚ます。


 何が起きたのだろうか。


 突然胸に強い衝撃が走って、それで……思い出せない。


 あと……誰かがいたような。


 それも思い出せない


 ルクシア。


 そうだ。


 ルクシアだ。


 ルクシアって……誰だ。


 いや、それよりも体中が痛い。


「っく、う……」


 声も出ない。


 息も思うようにできない。


 何も聞こえない。


 何か騒がしいのは聞こえるけど耳鳴りがひどい。


 ボロボロと瓦礫が落ちてきているのが見える。


 天井に大きな穴ができていた。


 あの衝撃で床を突き破りながら吹っ飛ばされて来てしまったのだろう。


 なんで生きているのかが不思議だ。


 そんなこんなと頑張って体を動かそうとしていると誰かが近づいてくるのが見える。


 そしてそいつは俺の顔を何度ものぞき込む。


 しかし反応がないと見るや俺のほっぺを叩きはじめるのだった。


「おーい! おきてますかー?」


 ようやくかろうじて聞こえるようになって聞こえたのがなんともイラっとするような声だった。


 なんなんだこいつ。


「葉っぱ一枚とかずいぶん大胆な恰好してんなぁ?」


 その男は真っ黒な紳士服に古めかしいステッキを手にぶら下げてシルクハットをかぶっている。


 もっとも特徴的なのは顔にドクロのペイントがあることだ。


「おきてるならへんじをしてくださいなー……ダメだこりゃ、のびのびしてんなぁ」


 くそ、返事ができるならとっくにしている。


「でも聞こえてるんでしょう? ほらほらあんたの刀を呼んでごらん? お名前わかるでしょう?」


 こいつ……もしかして刀のことを知っているのか?


 何者なんだ。


 それに……。


「か、たな……をよぶ?」


「そうそうそう! かたなを呼ぶの!! って! おお!! 聞こえてるんじゃないか?! さっさと返事をしたまえ君!」


「お、まえは……だ、れだ?」


「あー。私の事なんて聞いたってしょうがないぞ? そうだなぁ……通りすがりのイケメン紳士だ!! イケシンとでも呼んでくれ」


「なにを……ふざけて……」


「まあ、落ち着きなって俺は至って真面目だよ?」


 そして男はちょうどいい大きさの瓦礫に腰かけて続けた。


「なんの因果かはわからないけどねぇ。こんなパーティ始めちまう奴がいるんだからびっくりだよね?」


「パーティ?」


「そう。パーティだよ~? 王都まるまる使った大! 大!! 大殺戮パーティ!! 天使は容赦ないからねぇ? 悪魔よりひでえよ」


「てん……し? どういう……ことだ?」


「しゃべりにくそうだな。それ聞こえずらいから治すわ。ヒール」


 瞬間、体が軽くなり痛みが引くのを感じて飛び起きる。 


「治った……奇跡か?」


「あっはっはっはっは! 奇跡だなんて褒めすぎだぞ? でも動かれると面倒だな。パラライズ」


「な?!」


 そして俺の体は痺れて動けなくなる。


 こいつが何をしたいのかわからない。


「どういうつもりだ?」


「これは前時代の魔法ってやつだ。今みたいに細かく指示できるもんじゃないがありがたく身に刻むと良い……ってよくよく見たら君君君君?」


「な、なんだよ? ってかお前は誰なんだよ」


「だから、それはいいんだって」


 すると目の前のドクロ顔の男は目元に手をやりモノクルを瞬時に出す。


「お前……嫌われてんなぁ? いや好かれてるのかぁ? ま、わからんが……これじゃ面白くねえよ?!」


「だから何を言ってるんだよ」


「これをやろう」


 シルクハットを手に取りポンっと変な効果音と共に帽子の中から出てきたのは奇妙な白いキツネの面だった。


「その様子じゃ龍脈の秘跡もろくすっぽつかえてないだろう?」


「それは……って俺が勇者だってわかるのか?」


「わかるも何も……見りゃわかるわ。それに魂の灯を繋ぎし不知火刀しらぬいとうの所持者。天性も魔に疎まれし者だってな?」


「なぜそれを? それに不知火刀しらぬいとう?」


「質問がつきないなあんた? そんなんじゃ女の子に嫌われちゃうよん?」


「それはしったこっちゃないが、この世界以上に俺が一体なんなのかもわからないからな。知ってるのなら教えてほしい」


「お? 深いこと言うねぇ」


「そんなことを言ったつもりはさらさらないぞ?」


「でもなぁ。んなこた知ったところで先が変わるわけでもあるまいて、ゆっくり行こうぜ? 兄弟?」


「兄弟?!」


「ふむ。しかし魔法、魔術、魔力で力を誇示し、示して力量を測る。この世界の常識にそぐわないのに、よく今日まで生きてこれたね?」


「それは俺が一番知りたいわ。だけどそこまで知っているあんたは何しにここへ来たんだ?」


「え? ああ見学だよ」


「見学?」


「まあまあ、聞きたいこといぃっぱいなのはわかるけどね? こんな悠長なことしてていいのかなぁ???」


「どういうことだ?」


「君がおねんねしてる間にお姫様盗られちゃってるよ?」


「まさか、リィナ?!」


「おっほぉ?! 誰とは言ってないのにねぇ。自覚はあるんだねぇ?? イロコイは私の大好物だよ。あぁあぁああ!! ルクシアのクソには勿体ない!!」


「あんたさっきから一体なんなんだよ……」


「あー。歳いってるだけあって初心な照れはしないか……つまんねえなー」


「そんな今更……それよりルクシアって誰だ?」


「え? ここで崇めらてる神の名だろ? ルクサーラなんて呼ばれちゃって名前間違えられてやんの。ぷぷ」


 瞬間、おちゃらけたような態度から一遍してドクロ紳士は立ち上がる。


 帽子を深くかぶって続けるのだった。


「ある約束から……自分の肉体を世界にばらまいて守護を完遂させた酔狂な神だ」


 ゆっくりと俺の近くに来て仮面を床に置いた。


「さてと、そろそろ時間だし特等席に移るとしよう」


 男は綺麗な革靴をカツカツとならしながら歩いていく。


「まて! まだ話は!!!」


「あーそうそう。その仮面なんだけどねぇ?」


「なんだ?」


「つければたちまち今の君でも前みたいに魔術や魔法の力を扱うことができるだろう」


「前みたい?」


「あぁ、そうか……君にとっては会っているが正しいのか?」


「誰にだ?」


「内緒さ。その仮面をつける時間はそうだなぁ……5分までが限界かな? それ以上はやめた方がいい」


 それからドクロ紳士は徐々に霧のように消えていく。


「待て! お前何か知ってるようだけどあの刀はいったい……」


「あばよ。兄弟? 借りは返したからな?」


 そう言い残してたちまち男は消え去った。


「……借り?」


 なんだったんだ……。


 ドクロ紳士が去るとしびれも解けて体が動けるようになった。


 それから立ち上がって一旦状況を整理することにした。


 刀の名前。


 奴は魂の灯を繋ぐ刀だとか言ってた。


 呼べば……刀が来るのか?


 にわかには信じがたいが試してみる価値はあるだろう。


「来い不知火刀しらぬいとう……」


 おれはそっとつぶやいた。


 しかし何も起こらない。


 この台詞を言うのはなんだか恥ずかしい。


 葉っぱ一枚でいる方が恥ずかしいか。


 そう思った瞬間、手元に何かを掴んでる感じがした。


 徐々に重みを感じるとそこにはいつもの俺の刀があったのだ。


「わぁ……ほんとにきた」


 あのドクロ紳士の言っていたことは嘘じゃなさそうだ。


 本当に何者だったんだ?


 ということはだ。


 俺は置かれた不気味な白いキツネの面を見る。


 限度は5分って言ったし奴の口ぶりからすると魔法が使えるようになるとか。


 いやいやいや、こんな怪しいもの付けられるかよ。


 とりあえずこれは回収してと。


「わぁああああああ?!」


 思わず声を上げてしまった。


 俺はお面を回収しようとしてつかんだ瞬間に体の中にすっと溶けていってしまったのだ。


 なんと気持ち悪い。


「なんだったんだ……?」


 ああ、そうじゃない。


 それよりもだ。


 リィナが盗られてるって話が気になる。


 こんなことをしてはいられない。


 とりあえず外の状況を確かめよう。


 それと服だ。


 あんな衝撃を食らってしまったせいで葉っぱ一枚だけになっていてはまたリィナに怒られる……。


 そうじゃない。


 そんなことを言ってる場合じゃない。


 一刻を争う事態だ。


 もう堂々と行こう。


 俺は、このまま外へと出るべく歩きだす決心をつけた。


 すると、とんでもない現象が起こる。


「こ、ここは?!」


 どこからともなく男の声がしたのだ。


 しかし、周囲を見渡しても誰もいない。


 警戒しつつ刀を抜く。


「な、なんだ?! この姿はあああああ?!」


 驚くことにその声の主は以外にも近いところにいたのだった。


 なんと俺の恥部を隠すための葉っぱがしゃべったのだ。

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