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第74話 レラデラン騎士団

 いつもの道、いつもの街の風景。


 私は騎士としていつものように町を巡回する。


 任務の名目は女王陛下に仇名す逆賊がいないかの監視および民の秩序ある暮らしの確保だ。


 時には私のような貴族の護衛から金銭の護送、冒険者とのトラブルの仲介まで騎士の業務は様々。


 兵士との職務の区別は兵士達の上の職級が私達と言うことだろうか。


 なのでよく兵士を率いて戦う様を戦場で見られる。


 今は本当にメールヴァレイのやつらと戦争してるとは思えないくらいに平和が続いていて不気味だ。


 あれから着々と壊れた街並みや失われた都市機能が回復しつつあって人々の顔にも余裕が出始めている。


 そんな日常を取り戻している日にとてつもない光が上空を覆った。


 そこの現れたのは不気味な神々しさを持つ天使達だった。


 確か異端の神が操る存在がなぜ……。


 それに天使どもはなぜか人々を攻撃し始めたのだ。


 平穏な日常から瞬く間に状況は一変してしまった。


 レラデラン大門前。


 兵士達が懸命に避難を呼びかけながら応戦している。


 だがその刃はまるで届かない。 


 ぶつかりあう剣と槍。


「な、なんだこれ?! なんだこれ?!」


 焦る兵士達。


 無理もない。


 魔物や悪魔、魔人ならともかく天使など普通は見ることなどないからだ。


「現在負傷者多数! 防壁周囲……全方位取り囲まれているぞ!!」


 応戦した兵士達は飛び回る天使に一突きにされてしまう。


 機械のような作られた冷徹な顔。


 輝く羽を広げ両の手に持つ槍で一突き、また一突きと命を奪っていく。


 そんな地獄のような光景が一瞬で作り出されたのだった。


 これはあの時のメールヴァレイの侵攻以上だ。


 私は走る。


 この場にいる騎士達に応戦するよう指示を出してレラデラン騎士団庁舎へと向かった。


 重い両扉を開けてると重鎧を装備したレラデラン騎士団の団長キースがいた。


「各騎士団詰め所に伝令! 未知の勢力は国民ならびに兵士を次々と殺して回っている。防壁を取り囲んでいる大きな天使には近づかず即撤退し避難を呼びかけろ!!」


「は、はい!!」


「慌ててる暇はないぞ!! 思ってる以上に事態は深刻な状況だ。一時の迷いが死につながると思え!!」


「団長!!」


「帰ったか。キャロル副団長も準備を整えろ。そして中心地の民衆はまだ知らないはずだ。避難誘導を頼む!!」


「ですが私も戦闘指揮に参加した方が?!」


「大丈夫だ!! 俺は動ける奴らを全員連れて迎撃にあたる! みたところ全ての外壁から飛んできているようだ。少ないがキャロルはここにいる残りの騎士を連れてあたってくれ」


「わかりました! では緊急時の時と同じく教会へと避難誘導後に教会防衛にあたります」


「いや……避難先は王城だ」


「え? なぜですか?!」


「わからんが……やつら飛べるはずなのに王城へと行かず外側からつぶすように来ている。とても不可解だ」


「それは確かに……」


「レラデラン城塞を使うにはまだ危ない。ならアーグレン城近辺なら避難できるだろう」


「敵の目的は殺戮だとでもいうのでしょうか……」


「それはわからん。俺も物見の報告から予想できる最善がこれだと判断しただけだ。俺はもう行く! キャロル……一人でも多く救うんだぞ!!」


「承知しました!!」


 それから避難誘導を呼びかける部下を選抜しルクサリア教会ではなく首都アーグレンへの避難を呼びかける。


 しばらくして戦いが激化していくのを遠くから感じた。


 様々な魔術の一斉攻勢の音が響く。


 緊急選抜された騎士隊や兵士隊ががんばっているのだろう。


 それからしらみつぶしに避難を呼びかけ終わる。


 主要道にはたくさんの人々が王城へと目指す姿が見られた。


 着々と避難先は伝わっているようで安心する。


 現在私は4人ずつの分隊を5隊編成し避難誘導に当たっていた。


 3隊はこのままアーグレンへ……残りの2隊で王都防衛機構を担うルクサリア教会の防衛をすることにした。


 私の部下であるセスラン率いる部隊。


 2隊だけでは心もとないが団長率いる本隊が迎撃にあたっているならその加勢もあてにできるだろう。

 

 この予想は甘い……だろうな。


 けれど現状、王都の防衛機構である光壁をいともたやすく突破して侵入してくる点から教会防衛の重要性は一旦下げざる負えない。


 これが最善なのかわからない。


 そして私と部下達で教会へと向かうのだった。


 教会へとたどり着いたが状況は甘くなかった。


 教会のすぐそこまで天使達が来ている。


 しかも防壁周囲で見ていた奴らとは違う風貌をした二体の天使だ。


 4枚の大きな羽。


 杖を持って目をつぶっている天使。


 その隣には2枚の羽に銀色に輝く鎧を着て両手に剣を持つ天使がいた。


 この通りを抜けられれば教会に行かれてしまう。


 圧倒的な存在感を放つ奴らに私は覚悟を決める。


「標的は天使2体! セスラン隊、魔術式展開!! まずは前衛と思われる双剣の天使を狙う! 後に私が先陣を切り双剣の天使を倒す!」


 敵は地に足をつけることなくゆっくりとこちらへと向かってくる。


 十分に引きつけたのを見て合図をした。


「放て!!」


 放たれた火球と雷撃は双剣の天使へ見事に命中する。


「行くぞ! 私に続け!!」


 剣を構え走る。


 しかし、その判断は迂闊すぎた。


 目を閉じた天使は杖を構え光を集める。


 とてつもない光に敵を見失いかけると圧倒的な熱量を前方に放出した。


「まずい!! テラ・マルス!!」


 私は即座に大地の魔術で壁を作りその場に伏せる。


 何が起きたのか理解できない。


 光の線は私の大地の壁を粉砕しとてつもない衝撃を生み出した。


 気が付くと私は倒れ部下達も横たわっているのが見える。


「っく……そんな」


 圧倒的な破壊力。


 そんなものを前にさらに双剣を構えた天使はとてつもない速さで向かってきた。


「キャロル副団長!!!」


 セスランが前に出る。


 ぶつかりあう剣と剣。


 その速さに惜し敗けまいと盾を駆使して懸命に攻防を繰り広げる。


 しかし双剣の天使の正確無比の攻撃に圧倒され斬り飛ばされてしまった。


「セスラン!!」


 セスランは私の最初の後輩だ。


 これまで私は倒れてきた仲間をたくさん見送ってきた。


 剣を教えた者達が殉職したのを聞くたびに心がおかしくなりそうになる。


 そこへと双剣の天使は追撃を仕掛けようとする。


「させない!!」


 私は剣を握りしめ駆けだした。


 王都貴族、ジュベール家の長女。


 代々軍事や軍略、戦略の要を担う名家だ。


 けれど私はお父様と違い頭はよくなかった。


 あるとしたら剣の才能くらいなもの。


 よく、お父様から剣を握るのは駒だけでいい。


 剣を握らず知略で敵を討つのだと言われて育ってきた。


 けれど勉強ができない私にそんな器用なことはできなかった。


 そんな私に元剣豪の執事、ロルフはよく剣を教えてくれた。


「お嬢様は、アスラ家にも引けを取らない程の剣の達人になりましょうな」


 なんて言われた時はお世辞でもうれしかった。


 なんのとりえもなく剣を握るだけのばかな女でも認められる世界があるというのはとてもうれしかった。


 けれどそんな私にお父様は期待してくださった。


 その思いが強い分だけ私は、この家の道の凡才であることを憎んだ。


 剣だけでも強くありたいと願った。


 そして私はずっと剣を握ってきた。


 ここで敗けるわけにはいかない。


 なんども奴の二つの剣を弾いてはやり過ごして反撃のタイミングを見る。


 そして二つの剣が通り過ぎ今かという瞬間が訪れた。


 この切っ先をやつの喉元に当ててやる。


「ナイツ・ストラドル!!」


 体の軸を回転させ剣に重みをのせる技。


 しかし双剣はその一撃は横目に軽く避けた。


 反撃に転じる双剣。


 盾で防ぐも一撃がとても重い。


 無機質で呼吸すらしていないような鉄の表情を作る天使の次の手が読めない。


 私は必死に食らいついた。


 そして私は剣を振るい反動で後ろに持っていかれそうになった。


 がら空きになった胴体めがけ二本の剣が突きを繰り出す。


「シールド・バッシュ!!」


 盾を押して二本の剣を弾くと双剣の天使は態勢を崩した。


 ここだ!!


「ナイツ・スタッピン!」


 渾身の突きを繰り出すも奴は態勢を崩してきた勢いで蹴りを繰り出してきたのだ。


 それに腕をとられ剣を弾き飛ばされてしまう。


「しまった!」


 双剣の天使は構えなおす。


 ごめんなさい。


 斬られる直前、誰に謝ったのかもわからない言葉がポツリと頭の中に出てきた。


 剣の才能があってもここまでのようだ。


 名家に生まれ期待にそぐえない娘でごめんなさい。


 幾多の死を踏んで前へと進んだにも関わらず私はここで終わってしまう。


 生き急ぐ私に優しさをくれたリィナ。


 居場所を作ってくれたキース団長。


 せっかく私に剣を教えてくれたロルフ師匠。


 本当に……ごめんなさい。


 双剣が振り下ろされ交差しようとした。


 その瞬間、背後よりとてつもない衝撃が天使めがけ走るのだった。

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