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第71話 王都議会

 柔らかいベッドを独占して眠る夜はアメリア邸と同じくらいに心地がいい。


 朝起きてからのいつものルーティンはなく、そのまま身なりを整えて美味しい朝食をリィナとルチアの二人で一緒に摂った。


 なぜかリィナは夕食の時と同じくどこかぎこちない。


 まあ、それも仕方はないだろう。


 今日はいよいよ王都議会が開かれる日なのだから。


 俺とリィナは議会が始まる前にマリィ王女に呼ばれて部屋へと招かる。


 俺の腰にあった刀は、お留守番のルチアに預けることとなりしばし相棒とは離れ離れだ。


 マリィ王女はどのように議会が進行してどのように俺達が発言するのかについての計画を話してくれた。


 政治の中心的な話をするのは初めてだからとても緊張する。


 俺が勇者ってだけでそんなにうまくいくものなのだろうか。


 それからさすがに軽鎧に羽織の恰好で出るわけにいかないので従者としての正装を貸してもらうことになった。


 使用人が持ってきたものをリィナとマリィが選別している。


 なんだかとても二人は楽しげでだ。


 そして二人にコーディネートされた結果。


 ジャケットにシャツ、ネクタイと言う現代日本でもありそうなスーツ姿になったのだった。


 もっと中世っぽいような衣装を想像していたけれど元の世界と遜色ないものを着せられて驚いた。


 マリィ王女に聞くと、このスーツは随分昔からあるのだそうで勇者集結の地と言われているロードグランデからの輸入ものらしい。


 目立たず清潔で主をたたせる服装に好ましいのだとか。


 これは勇者の影響だろうか。


 この文明の高さや技術力もそのおかげだったりするのだろうか。


 しかしスーツなんて久しぶりに着るものだからとても落ち着かない。


 一見地味目の黒いスーツであるが目立たず深い青色のネクタイにクリーム色の入った線がワンポイントあってギリおしゃれにできたとのこと。


 なんだか新卒気分だ。


 それから俺はマリィ王女、リィナと別れてから使用人に案内され一足先に議会の会場へと入るのだった。


 中はとても広々としており声もよく通りそうな不思議な感じの空間。


 とても大きな円卓の上に名前の書かれた立て札がいくつも置かれているのが見える。


 たくさんある椅子は議会の大きさを物語っているようだった。


 奥には、さも「王族が座りますよ」と言った具合に高級そうな椅子が3席並べられている。


 俺が先に入っているのは昔からの慣習なんだそうだ。


 議会は、まずそれぞれの家の従者が入場して円卓の席の後ろについて主を待つ。


 俺は早々にリィナ・ルナレ・アメリアの名札がある席の後ろに控える。


 ふと周りをみると他の従者たちも俺とほぼ同じような格好をしていた。


 蝶ネクタイをしていたりお洒落なバッチをつけている奴もいるがほぼ変わりない。


 それからしばらくして使用人達がいそいそと場を整え終わるといよいよ議会開催の時が来た。


 両扉が開かれて最初に入場したのはリィナだった。


 俺は思わず二度見してしまう。


 とても綺麗な恰好をしているので見違えてしまった。


 青色に白の入ったドレスはとても綺麗で、まるで晴天のような美しさを感じさせる程。


 それに加えて驚くことに……リィナがお化粧をしていたのだ。


 そういえば今までリィナがお化粧なんてしていた記憶は全くない。


 俺はどうやら本物のすっぴんをずっと拝んでいたらしい。


 素でもべっぴんとはこのことかと今更すっぴんの言葉の所以について思い出す。


 こちらへと金色の髪をなびかせて優雅に歩いて来る美女は、まるで別世界の住人のように感じさせられる。


 シルベスがほれ込むのも無理はないだろう。


 彫刻だったりフィギュア化でもしたら売れるのではないだろうか。


 なんてことを考えながら見惚れているとリィナは視線を俺からプイっと逸らしてしまう。


 なんだあの可愛い仕草。


 それから次々と王都貴族、四天の守護柱、聖騎士長、王族の順に続々と入場する。


 廊下で入場の順番を待ってるのかと想像するとなんだか……。


 それはいいとして王都貴族は14名いる。


 貴族の男は皆、従者と違い簡素なスーツではなく、専用に仕立てられただろう装いでコートだったりマントを羽織っていたりと服装は様々。


 女性は、それぞれ綺麗で控えめなドレスを着用している。


 続いて四天の守護柱の4名。


 それぞれの隣に国旗のシンボルが入った赤いマントをなびかせる聖騎士を従えながら入場する。


 そういえば守護柱の隣にいるのは四天の守護騎士とか呼ばれていたことを思い出す。


 確かニャーのアスラの名を冠する騎士がいるのだとか。


 けれど誰が誰なのかよくわからない。


 どうやら四天の守護柱と呼ばれる人達は何か特別のようだ。


 そして守護柱の最後に入場したのは、このまえ教会に来ていたソネイラル神父だった。


 少しだけ目が合ったような気がする。


 続いてこの場で唯一、帯剣を許されている人物が入場した。


 とても綺麗な鎧を身にまとい国旗の描かれたマントをなびかせ堂々と歩く。


 その堂々たる者は王が座るだろう席の隣へと侍るのだった。


 次いで王族の登場だ。


 最初にマリィ王女の入場。


 白髪に水色のドレスがとても映える。

 

 マリィ王女の話では今日参加する王族は3名。


 マリィの後に続くのは第二王女のエネスレア王女。


 いろんな人の瞳の色を見てきて茶色や黒い瞳、そして青い瞳の人達が大半であったのだが、この王女は金色の瞳をしていた。


 マリィ王女のオレンジ色の瞳も珍しいのはわかるが王家の血が持つ特有の何かがあるのだろうか。


 淡い桜色の長い髪にマリィと似た顔立ち。


 歳は20代と思われ大人っぽい雰囲気があり上品にふるまう様は正に王女様といった風格を出している。


 続いて入場するは第一王子のウィラット王子。


 赤い色の短髪はオールバックで綺麗にまとめられ隙のなさそうな表情でまっすぐと入場する。


 ただ第二王女と違い威厳のようなものはあまり感じられなかった。


 最後に入場するのは、ここアーグレン現、国王のセドガル・ベル・アーグレンだ。


 威厳のある顔つきに整えられた赤い髭、視線の先にいる者に威圧を与えてしまうほどの鋭い眼光。


 大きな赤いマントをなびかせて堂々と入場し席へと到着する。


 それぞれの従者が順番に椅子を引いて国王が着席すると同時に全員が着席して議会の準備が整った。


 さて、マリィ王女から聞かされている作戦はこうだ。


 端的に言うと議会進行の途中でマリィが議題を投げかける。


 メールヴァレイにここまで攻められ失態を犯すことになったのは何故かと。


 それは他国からの受けられるはずだった支援をないものとした人種覇権派の責任ではないのかと言及するのだそうだ。


 前々から人種以外の種族を差別し迫害する風潮を是としない国際秩序があるのだそうだ。


 国の方針にそぐわないのもあり他国はこの戦争に協力しようにもできない状況であるとのこと。


 なぜそんなことまでして人種覇権派が実権を握っているのだろうか。


 そもそも政治の中核ってこの国王じゃなかったのだろうか。


 いやでも女王主体の国家がうんたらかんたらってリィナが言ってたのを思い出す。


 なんだかわけがわからなくなる。


 とりあえず思考をやめよう。


 それからリィナが従える俺こと勇者を筆頭に国民を誘導し広く種族の垣根を超えた国家を目指すのだと。


 国家防衛を盤石にし近隣諸国との協力関係を築いてメールヴァレイ帝国との早期戦争の決着を目指す必要性について言及するのだそうだ。


 筋書きはこうであるがどのようにパフォーマンスをしたものかと内心俺は緊張でどうにかなりそうだった。


 話術でどうにかできる程、俺の舌は回らない。


 期待に応えられるだろうか。


 ふとリィナの手が震えているのが見える。


 リィナも大分緊張しているんだ。


 なんだか抱きしめたくなるような小動物感のある後ろ姿を見ながらアーグレン国王の一言で議会は始まった。

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