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第67話 聖女を愛する騎士

 ニャーをくるりと巻いて起き上がるいつものルーティン。


 朝食を摂り終えてからいい天気なのもあって教会の庭園にて王城へと向かうまでの残り4日間をどうしようかと俺達は話し合っていた。


「レラデランを見て回るとか?」


「せっかくなのでニャーさんとも一緒に行きたいのですが……」


「にゃ~。難しいのにゃ」


 ニャーの反応に首を傾げるザンカ。


「どうしてだ?」


「周りの目がやっぱり気になるのにゃ……リィニャが言っていたことがよくわかったのにゃ」


「うぅ……すみません」


「リィニャが謝ることじゃないのにゃ。教会に登って町を見下ろしてみた景色はとてもよかったのにゃ。ニャーはそれだけで充分なのにゃ」


「ニャーさん……」


「んー……じゃあさ! ニャーになんか言うやつは殴っちゃだめなのか?」


「すみませんがザンカさん……お気持ちはすごいわかるのですが、それだけは控えてください」


「都会は面倒なんだな」


「んーとなると、じゃあやっぱり修行するか……」


「うぅ……もう気を失いたくないです……」


「ニャーは剣と語り合う時間ができていいのにゃ」


「俺もここへきて体がなまって仕方がないからな。賛成だ」


 ニャーとザンカは賛成の様子であるがリィナはとても嫌そうな顔をしていた。


 そんなこんなと俺たちは話しているとなにやら教会入口の方が騒がしいのにみんなで気づくのだった。


 その騒動をじっと見ると俺が着た事のあるあの青いコートを身にをつけた騎士達がいたのだった。


 国の紋様をつけた盾を背に腰には直剣を身に着けている。


 そして話し合っている僧侶の顔は知っているが名前は知らない。


 栗色の長い髪で背の低い娘だった。


 その娘は困る様に迫る騎士を抑えながら言う。


 「すみませんが困ります! レイーネ聖母様は今はお仕事で出かけられてます。また日を改めてください」


 どうやらレイーネに会いに来た連中のようなのだがなぜか揉めている。


 そして先頭に立つ騎士が焦る様に用件を話すのだった。


「すまないが俺はアメリア嬢に会いに来たんだ! ここに帰ってこられているのは知っている! 会わせてくれ!!」


「ですから! それはレイーネ様の許しがないと!!」


 そんなやり取りを繰り返している現場を覗いている俺とニャー、ザンカはリィナの方を同時に向くのだった。


「あの方は……」


 ボソッと言うリィナ。


「知り合い?」


「はい……前に私が僧侶だった時に騎士となりたいと申し込んできた……シルベス家の方です。名前は……デニスさんだったような気がします」


「偉いのか?」とザンカ。


「そうですね。王国貴族のドルダンにあるシルベス家の方ですのでアメリア家より格は上です。物資の流通の総括や商業の法律の管理、ミダスとのつながりのある家ですね」


「なんだかすごそうな貴族だな。行かなくていいのか?」


「はい……大丈夫です。その……彼のアプローチがひどいので教会を出禁になってるはずですので……」


「リィナへのアプローチがひどくて教会を出禁って……なにやらかしたんだよ」


「えっとですね……教会内部の無断侵入でしたり、私の修行を四六時中見ていたり妨害したり……女性宿舎に無断で入ろうとしたりと……問題行動を……」


「だめなやつじゃないか」


「はい……」


「まあ確かにリィナはかわいいからモテるのも仕方はないとは思うが……」


「か、かわ?!」


「あんな熱心なファンを作りだす程とはなぁ……まあここはやり過ごすしかってリィナ?」


 気が付くとリィナは顔を赤らめてなんだか縮こまってしまっていた。


「え?! あ、えと……その……」


 どうやら相当怖いらしいようだ。


「大丈夫だ。何かあっても俺達がいるからさ」


 そんなリィナの肩をぽんと叩く。


「はうあ?!」


 するとなぜかビクつくリィナ。


 これは重症だ。


「ニャーもいるにゃ」


 心配そうに見つめるニャーも元気づけようとしている。


 するとザンカ。


「よくわからなんだけどさ。なんかこっち来たぞ?」


「ぇえ?! ちょっ?! 隠れなきゃ────」


 時すでに遅く噂のデニスとやらがこっちへと来てしまっていたのだった。


 後ろに騎士を引き連れリィナの右手をとりひざまずく。


「これはこれはご機嫌よう!! アメリア嬢! あぁ僕はこの日を何度待ちわびたことでしょうか!! あなたがルクスリア教会へと戻ってこられていると聞いて急ぎ! 馳せ! 参じました!」


「あ、あぁ……ごきげんようシルベス様。今日も……そうですね。お天気が! ですね。とてもいい……ですね」


「はい!! この晴天もあなたの綺麗な瞳に比べれば霞んでしまいそうなほどではございますね!」


「あ、あはは……ありがとう……ございます」


 うわぁ。


 この心の声が漏れてないことを祈る。


 リィナのテンションがとても低く顔も引きつってしまっている。


 ニャーは帽子を取って低い姿勢でいるがザンカは物珍しそうな目で見下ろしていた。


 つづけてシルベス。


「して! この度は聖女昇礼おめでとうございます! 私事のようにとてもうれしく思っております!」


「あ、ありがとうございます……」


「延いては騎士の任命式もあります故……我がシルベス邸にご招待したく伺いました! さて、私の仕事も夕方ごろに終わります故、その時にお迎えに────」


「あの!!」


 何も聞かなさそうなシルベスにリィナは大声で言うのだった。


「アメリア嬢……いかがされましたか?」


「私には、その……もう騎士と決めた方がいるのです!! シルベス様のご好意はとてもうれしく思うのですが────」


 そう言いかけた途端にシルベスの表情は一変するのだった。


「その……も……は……」


 俯いており何か小声で言っているのが聞こえる。


 ごにょごにょと続けるシルベスにたまらずリィナは聞くのだった。


「な、なんでしょうか?」


「その者は今どこに?!!!」


 とんでもない覇気で半ば怒鳴るようにリィナへと問うシルベス。


 びくっとリィナは驚き震える手で、その者を指差すのだった。


 はい、私です。


 シルベスはゆっくりと立ち上がり俺に向き直る。


 何故かは知らないが、この修羅場にザンカは目を輝かせていた。


「貴様か……アメリア嬢の騎士となろうとしている輩は」


「え……あ、あぁ。そうだ!」


 思うのだがこのことってオフレコとかじゃないのだろうか。


 俺が勇者であることを前提でリィナの騎士になるはずであることだったし任命の儀とやらもマリィ王女の目論見を考慮して先に延ばしてたような気もするのだが……。


 そんなことを考えていたところでリィナを見るとちょっと涙目になっているのが見えた。


 とてもかわいそうな小動物を見ているようでいたたまれない。


 しかし騎士になろう者が主を涙目にさせてどうするのだろうか。


 そして俺を見定めるようにシルベス。


「ほぉ……しかし貴様。見たところ女王様の騎士ですらない流れの棒振り野郎と言ったところか? 鎧の着方がなってないではないか。偽物の騎士殿?」


 鎧の着方がなってないらしい。


 とりあえずくっつけばいいやみたいに着ていたのがまずかっただろうか。


 それに。


「流れの棒振り野郎って的を射ているような……」


「ちょっとソラさん!」


「貴様など……可憐で清楚なアメリア嬢の隣に相応しくない。これが聖騎士様であるのであれば話は別であったが私は我慢ならない!!」


 瞬間あろうことかシルベスは抜剣したのだった。


 すると周囲の騎士達もざわつく。


「シルベス様! 抜剣はまずいです!」

「ここは一旦お納めください」

「この者が本当に騎士になれるかもわからないでしょう?」


 嗜める騎士達は加担するのかと思いきやいたって冷静だった。


「だまれ! 断る口実……であったのだとしても私はあきらめん。私はアメリア嬢を愛しているのだ。ここで確かめてやろうではないか。この者が……アメリア嬢の騎士として相応しいかどうかを!!」


 焦る様にリィナ。


「シルベス様! 戯れが過ぎます剣を収めてください!」


「アメリア様。これは私達の問題です。あなたとより良い関係を築けるのは私しかいないことを証明してみせましょう。安心して見ていてください! この不逞ふていの輩から見事あなたの目を覚まさせましょう」


 なんだかとんでもない奴だ。


「ですが暴力で解決するのが正しいやり方ではありません!!」


「いえ……騎士たるもの女王様や民を護るべく常に命がけ! それに愛する人を盗られて黙っていられるほど男を捨ててはいないのですよ!!」


 とんでもないが、なんだかめちゃくちゃかっこいいことを言っている。


 俺が言えた義理ではないのだが、その性格さえどうにかしたらリィナと本当に騎士の関係になれていただろうに……なんだか惜しいような気もする。


「へぇ……傲慢で温室育ちのお貴族様かと思ったが……言うじゃないか?」


「もう、ソラさん!!」


「さあ、抜け!! アメリア嬢の隣はどちらが相応しいのかはっきりさせようぞ」


 その言葉と同時に俺も刀に手をかける。


 騎士とのやりあい。


 ダンテ程の使い手には見えないが、どの程度の強さが騎士の一般的な強さなのかも気になる。


 女を賭けた戦いというのはとても好きではない。


 まるで女性を物のように扱うような胸糞わるい賭け戦だからだ。


 やる気が下がるにもほどがある。


 だが俺は万が一こいつに敗けた時のことを考えた。


 こいつがリィナの騎士になったことでどうなるかはわからないがレイーネの言葉が引っかかる。


 自由がなくなるとはどういうことなのだろうか。


 リィナは、これまで妹を助けるために頑張ってきていたんだ。


 その努力を無駄にさせるわけにはいかない。


 もしシルベスが騎士となり結ばれることによって自由がきかなくなってしまうのであれば、確約してしまうのはなんとしても避けたい。


「なあ……あんたとの勝負、受ける代わりに一ついいか?」


「ん? あぁ、なんだ?」


「俺が敗けてもあんたがリィナの騎士になるって件に一切関係しないってことにしないか?」


「は? それに……貴様ぬけぬけと!! アメリア嬢を呼び捨てに?! ……それに敗ける前提で決める騎士がどこにいる?!」


「いやさ。リィナには、んー……なんだろうな。俺が死んでも……まあ目的は達成してほしいしさ。その代わり俺を倒したのなら好きにアプローチなりなんなりするといい」


「ソラさん……」


「ふん……いいだろう。決闘の合図を!!」


 ざわつく騎士達。


 ニャーは静かに見ている。


 リィナは何かを考えるように俯いていた。


 なぜかザンカはわくわくしている。


 そんな緊張感とわくわくの詰まった状況で後ろにいる騎士の一人が、この決闘の合図の役目を押し付けられた瞬間。


 笛の音が鳴り響き周囲にいた騎士達は直ちに抜剣した。


 直後に俺とシルベスを取り囲むのだった。


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