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第59話 聖母様

 ザンカがパーティに加わることになった日のアメリア邸。


 レジナードはザンカを見て驚きを隠せない表情でいた。


 「あの……リィナが……二人も男を……連れてくるなんて!! まさかこんな日が来るとは思いも────」


 そう言いかけたところでリィナの握られた藍色の錫杖の突きがさく裂しレジナード。


「もう! お父様?!」


「ぐぉお!! 冗談……だって……我が娘よ。だがその恰好は────」


 倒れ込むレジナードがそう言いかけたところでリィナの母親ネメラ。


「年頃の娘をからかうからこうなるのよ? 反省してくださいね」


 よいしょとレジナードを抱えてネメラは続ける。


「ゆっくりしていきなさい。うちの娘がお世話になっていることに変わりないもの。それでケンジョウ君かしら?」


「ああ、ケンジョウ ザンカだ。 ザンカでいいよ。えっとお姉さん?」


「あらやだ! リィナ聞いた?」


 その言葉と同時に捨てられるレジナード。


「は、はい。お母様」


「お姉さんだってお姉さん?! もうお世辞がうまいんだから!! 私もまだまだね! がんばらなくっちゃね!」


 まあリィナの母親は年齢こそいっているのかもしれないが結構若く見える。


 なんならおれのちょい上くらいにしか感じない程に。


 だがそれを聞く勇気は俺にはない。


 なぜなら、どこかリィナ以上の怖さを少し感じるからだ。


「さあ、ザンカさん。ゆっくりしていってちょうだいね?」


「おう! 悪いな。世話になるぜ」


 思えばザンカは貴族相手に緊張とかそういうのはしなさそうだ。


 しかしザンカの目を見ていると不思議と、こいつなんも考えてねえなといわんばかりの気迫がある。


 アメリア邸にて夕食を摂る。


 そこで俺はザンカにパーティの目的と俺達がどういうパーティであるのかを話すことになった。


「リィナ……今の話は本当か?!」


 驚きのあまりレジナード。


 そういえば俺が勇者であることやニャーも勇者であることは話してなかったように思う。


 リィナの家族だし話したところで問題ないと思うけれどとても驚いている様子だった。


「はい。お父様。ソラさんとニャーさんは勇者様です」


「そうか……そうだったのか……ヒナはあまり驚いているようではないが?」


「ヒナは知ってましたよ?」


「え、お父さんだけ仲間外れか?」


 続けて思い出す仕草でリィナ。


「いえ、話すタイミングがなかったような……」


「お父さん悲しいぞ。愛娘に隠し事があっただなんて。ひどいと思わないか! ネメラ!」


「私は知っておりましたよ?」


 綺麗なグラスに注がれたお酒を一口つけてからレジナードにどや顔を決めるネメラ。


「なぜなんだネメラには話して何で私には教えてくれなかったんだ!」


 それから娘と父の家族団らんとしたような言い合いが続くが貴族と言うのはこういう物なのだろうかと改めて疑問に思う。


 最初の頃のレジナードの威厳を持った感じはもはやどっか行ってしまっている。


 ただ、俺たちの目的を話してザンカは何か反応を示すのかと思ってはいたのだが特になにもなかった。


「おお! この肉うまいな。この汁もうめえ。ソラの作る飯もうまかったけどさ。ここの料理もいいな。久しぶりに手の込んだものが食べれてうれしいよ」


 話した内容はというと料理の感想だけだった。


 そんな中でレジナードは意味ありげにリィナへ言う。


「リィナ……」


「どうされましたか?」


「わかっているとは思うがマリィ王女の王都招請の件……重責をお前に任せるつもりはなかった」


「お父様……」


「ソラ殿が勇者だと聞いて、もしやとおもったが……困ったら逃げてしまってもいい。私はうまく立ち回れずにいたが今は……リィナが希望の光だと思ってしまっている。どう転んでも私はお前の味方だということは忘れないでほしい」


「結構緊張……してますが、大丈夫です! ソラさんもニャーさんもいますし、ザンカさんはわかりませんが……」


「ニャ?」

「へ……?」


 食べるのに夢中で何も聞いていないニャーとザンカ。


「見ない間に成長したな」


「はい!」


「ニャーがなんてにゃ?」


「俺達が希望の光らしいぞ?」


「ニャー! それは頑張らなきゃいけないにゃ!」


 へんな所でずれてる二人はなんだか嚙み合っている。


 レジナードの勇者だと聞いてもしやと思ったがという文言に違和感を感じたまま夕食を摂り終えて部屋へと戻る。


 そこで俺はザンカに聞きたかったことを聞くのだった。


「俺とニャーが勇者だって聞いて驚かなかったな?」


「え? ああ……まず勇者ってなんだ?」


「あー……」


 そもそも勇者をご存じでなかったようだった。


 父親が魔王であるとということについてもなんなのかさっぱりわかってなさそうだ。


 親父を殺すために旅に出てるのであれば俺もザンカの親父を殺すためにいる存在となる。


 ドトールの時と同じように殺される相手を選んで望まれているような関係性であったのならいずれ戦わざる負えない可能性もある。


 俺はなんとなくだが勇者についてザンカに話す。


「勇者は魔王を倒したりするためにいたりするんだ。つまり俺は……」


 俺が言葉を慎重に選んでいるとザンカ。


「よくわかんないんだけどさ。俺はあんた達がくたばるくらいに強い奴を倒せればそれでいいよ。途中親父に会ったら殺せればいいよ。ただそれだけだ」


「……そうか」


 よくわからないが単純なだけにザンカの考えていることが分かったような気がした。


 それから俺たちは貸してもらっている部屋へと行き疲れをとるべくふかふかのベッドに埋もれながら就寝するのだった。 



 部屋には確か俺一人だったはずである。


 いつのまにかニャーは相変わらず俺のまたぐらをハンモックにしていた


 これはもういいだろう。


 よくないが百歩譲ってまだいいのかもしれない。


 けれどなぜか隣を見ると床にザンカがすやすやと眠っていた。


 ベッドがあるのに何故なのかとすごい気になった。


 なんだかんだで好待遇なことに俺、ニャーの部屋とザンカの部屋も用意されているのだ。


 けれどニャーはここになぜか来る。


 加えてザンカもなぜかいる。


 どうせならこんなむさくるしい奴らとじゃなくてリィナと寝たいものだ。


 さすがに未成年をどうこうする気にはならないが異世界だし、その倫理感もどうなのかはよくわからない。


 それから二人して寝言をいきなり言い始めるのだった。


「やめるにゃ。それはお魚にゃぁ……」


「ちがう肉だって……」


 こいつらはどんな夢を見ているのかがすごい気になる。


 起きてるんじゃねえだろうな。


 俺は習慣のようにニャーを布団で包みザンカを踏まないように支度をするのだった。


 朝食を摂り終えてからアメリア邸の広間にて急にリィナから今後のことを話そうということで集まることになったのだった。


 とても気になるが、どんなことを話すのかと思えば王都へ早々に向かおうということだった。


「ごめんなさい。思えば私は王都でレイーネ様に何も言わずに出て来てしまってたのです」


「レイーネ様って?」


「ルクスリア教会は覚えてますよね?」


「ああ、世話になった」


「はい。あの教会を管理されている聖母様なんです。つまり……私のお師匠様です……」


「リィナの師匠か……でもあれは事が事だったしな。レイーネ聖母? はその時いなかったよな?」


「はい……王都の守護に出向かれ私達僧侶と聖女、騎士と聖騎士が防衛をするようにとおうせつかってました……襲撃の後は敵もなく手紙は届くしで……他の方もいましたし、その中で私は職務を放棄して……」


「あらら。しょうがないとは思うが、こりゃ帰ったら怒られそうだな」


「そ、そうなんです!! もうどうしたらいいか……私もう昨日の夜眠れなくて……」


 どうやらレイーネはリィナにとってとても恐るべき師匠のようだった。


「そんなにすごいのか?」


「はい……聖母様と聖天の杖の修行なんてさせられたら私もう立っていられる自信がありません!」


「聖天の杖の修業?」


「はい……私達、聖女、聖人、僧侶は祈りにより奇跡を起こして貢献することがパーティを組む上や何かの仕事で同行する時に果たす役割です。ですが、あまり戦闘に秀でる者が少ないので、それでこの杖を使って近接戦闘の修業を行うのですが……」


「ほほぉ。確かに戦いとなると合理的に考えれば回復のできるリィナが一番に狙われるからな。それは敵が迫ってきたら役に立つ良い修行だな」


「はい……でもなぜかレイーネ様は私を執拗に打ちのめしてくるのです!」


「おぉ……まあ愛がすぎるのかもな?」


「かもしれません……実はおばあ様の後輩でレイーネ様の師匠が私のひいおばあ様らしく……」


「ああ……」


 確かリィナのおばあちゃんがラウナって言ってひいおばあさんのほうはカールが言っていたリーアという人物だっただろうか。


「それでですよ?! 聖女でありながらおばあ様とひいおばあ様はなんて呼ばれてたと思います?!」


「いや、想像もつかないけどさ。強かったってこと?」


神像破壊しんぞうはかいの聖女って呼ばれてました」


「なんか飛んでもなさそうな……」


「はい……ひいおばあ様が発端なのですが王都にある大聖堂修行場で女神様の像に修業相手をぶっ飛ばしてぶつけて粉砕したと……」


「おう……そりゃその二つ名も納得だ」


「それを親子そろってやってるのです……加えておばあ様は聖騎士様を相手に一歩も譲らない聖天の杖の使い手だったと聞いてます」


「なるほど……つまりそんな系譜を継いでいるレイーネは」


「とても厳しいお方なのです……あと聖母様ってつけてくださいね? ソラさんも直されますよ?」


「お、おう肝に銘じておくよ」


 話を飲み込めてなさそうにザンカ。


「それでさ。そのレイーネってやつのところに挨拶に行きたいのか?」


「レイーネ聖母様ですよ?! ザンカさん!!」


「あ、あぁ……わ、わかった」


「そうにゃ、気を付けるにゃ? レイーニャなのにゃ。間違えたら失礼だにゃ」


 とくにザンカは言い間違えてないがニャーはどや顔だ。


 しかし焦る様にリィナ。


「ニャーさんも聖母様つけてくださいね?!」


「にゃ?……ニャー聖母様?」


「ち、違います!! レイーネ聖母様です!」


 こうして俺たちはリィナの要望により王都での議会を9日前の時点で準備を整えて出発することになったのだった。

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