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葉っぱの勇者 -葉っぱ一枚で始まる愛あり、友情ありの仲間との絆が紡ぐ異世界召喚冒険譚-  作者: 地雷源のチワワ
第四章 傾城傾国の女神様

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第49話 馬車は馬が引くもの

 異世界生活幾日目でしょうか。


 拝啓、元の世界でかかわりのあった方、お父様、亡きお母様へつづる心の声です。


 何から話したものでしょうか。


 この心の声が届くことはないのでしょうがきっと俺は元の世界では死んでいることになっているのかもしれません。


 召喚される前にそんなことになったような記憶が薄っすらとですが残っております。


 正直トラウマ物だったなと冷静に考えると思いました。


 けれどこの世界へ召喚されてからは驚きの連続です。


 まず突っ込むべきところが召喚された当日。


 私の衣服はなかったのです。


 あるのは葉っぱ一枚。


 切れない刀。


 それしか手元になかったのです。


 笑っちゃいますよね。


 異世界召喚特典みたいな天性といった訳の分からないものが力のある凡人でした。


 勇者って特別な人とか英雄って感じだと私は幼少より思っておりました。


 しかしこの凡人ってなんでしょうか。


 これは鼻で笑ってしまいます。 


 そうですね。


 まだそれだけでしたらいいのでしょう。


 生きて行く上で笑い話にもなりましょう。


 そんなこんなでアーグレン国に私は居ます。


 そしてアメリア領の貴族である聖女のリィナと出会い、お酒につられて依頼を受けました。


 安請け合いしたのかもしれません。ですがそれだけの価値はあると私は思っております。


 てっきり早く終わるだろうと思っていた依頼なのですがリィナの故郷では反乱を企てようとしていた人達がいました。


 あろうことかその人達はリィナとその家族を公開処刑しようとしていたのです。


 驚きです。


 もう発想がとち狂ってますよね。


 あれやこれやといろいろありましたが首謀者のダンテをリィナと一緒に力を合わせることで倒すことに成功しました。


 それからリィナの家族の命は助かり反乱は企てだけに留まりました。


 もうちょっとお酒を飲みながら平坦に生きたいものですね。


 そして今、私はもう一つの驚きを胸に歩いております。


 重たく重厚感のある馬車をひいて。


 坂は少し怖いです。


 勢いが付いたら止められるか不安になります。


 そんな馬車を馬達は引いているのかと思うと頭があがりません。


 横にリィナ。


「あ、あの……ソラさん大丈夫ですか?」


「うん。今まで生きてきてさ」


「はい」


「馬車は人力車になるって知らなかったよ」


「力が……あれば引けますからね」


「そうだね。俺ってなんなんだろうね。馬かな?」


「いえ、勇者様です」


「葉っぱ見えてて、よくわからない変な羽織を着て馬車引いてる人間って勇者に見える?」


「ぷふ……見えます」


「うそこけ!! 今笑っただろう?!」


 じれったいが時は少しさかのぼる。


 ドトールや村の人たちの墓を建ててから食事を摂り終わりニャーが俺たちのパーティに加わった。


 そこでニャーが二番目の勇者であることを明かした。


 俺は勇者ってそこらへんにゴロゴロいるものなのだろうかと疑問に思った。


 けれどこの世界には勇者が12人いるというし種族も色々いる。


 それに召喚された者ばかりが勇者である確証はない。


 このパーティには勇者が二人もいる類稀なるパーティとなったのだろうか。


 けれど外見上二足歩行のネコと葉っぱ一枚の酒屑が勇者なため傍から見れば大道芸人に見えても仕方ないと思う。


 リィナには悪いが。


 次は葉っぱ一枚にならないように自重しようと俺の心は決意で満たされた。


 そこで帰りの支度をしているとニャー。


「この馬車どうしようかにゃ」


「さすがに持って帰るのは難しいですよね……」


 家に改造されてる馬車。


 ニャーによるとこの家はすぐに馬車に戻せるようにしてあるとのこと。


 そしてこのニャアマートはもともとニャーの友達であるキータの父親の持ち物だ。


 驚くことにキータの父親は、この世界各地に点在し商いを営む最大手のミダスマーケトリアの行商人だったそうだ。


「これが証にゃ。ニャーにもキータの支えになるようにって修行をつけてくれたからニャーにも行商の証があるのにゃ」


 ニャーは見て見てと言わんばかりに銅色のペンダントを掲げる。


「これがミダスの商人だけが持てるっていう証なのですね……」


「ということはだけどさ。にゃーってアナライズすると物の価値が全部わかったりするのか?」


「そうだにゃ。でもそれは商会記録を魔法で呼び起こす必要があるのにゃ。全部の情報を引き出せるのは限られた一部の商人だけなのにゃ。ニャーは見習いの証だから簡単なものなんかは知れるし売り物かどうかは判別できるのにゃ」


「へぇ、商人にも階級があるのか」


「そうにゃ。キータの父ちゃんが2級商人でニャーとキータが見習い商人だったにゃ。最上は特級商人て呼ばれてて各地に支店を出してるのにゃ。商会の頂点だにゃ」


「階級なんか定めてさ、その記録? にアクセスしづらくするのは不便じゃないのか?」


「ニャーもそう思うにゃ。でもこの証があればだれでもアナライズで記録を引き出せちゃうから悪用されないようにしてるってキータの父ちゃんが言ってたにゃ」


「それでセキュリティを担保してるというわけか」


「せきゅりてにゃ?」


「防犯対策ってやつだ」


 そこへ何かを思いついたのかリィナ。


「ニャーさん!」


「リィニャどうしたにゃ?」


「行商人ということはですよ? お洋服や戦闘服でしたり何かあったりしますか?」


「にゃあ。おまかせあれにゃ! その手の類もお取り扱いがございますにゃ」


「ちょっと口調かわってない?」


「商いだからにゃ。商売はお客様とのやりとりにゃ。商人の愛想が商品をより際立てるって教えてもらったにゃ。それとその愛想が信用を生んで延いては取引を生むのがミダスって言ってたのにゃ」


「へぇ、すごいそれっぽい」


「ということで……何かソラさんに服をお願いしてもよろしいですか?」


「まかせるにゃ!」


 ニャーはその小さい体で馬車の中にある木箱をごそごそと漁る。


 そしてしょんぼりするような面持ちでこちらへと来た。


「ソラ。ごめんにゃ……」


「どうした?」


「木箱に穴が開いてあったみたいでにゃ。服がボロボロのものだったりカビが生えてたりしたものしかなかったのにゃ……ごめんにゃ」


「いや、まあ仕方ないよ。洗えば使えるんだろ?」


「んにゃ。虫食いだったりパリパリになってたり……でもこれは何故か無事だったにゃ」


 そう言ってニャーが差し出してきた物は、どこか懐かしく見たことのある形状をした羽織だった。


 しかし日本のものと違いパーカーのようにフードが付いている。


 黒い色であしらわれた謎の生地に袖や襟元の淵には赤黒い色の線。


 その線には何かの草の模様が精工に描かれている。


 背には赤黒い日の丸のような謎の日が燃えるように大きく描かれている。


 この赤黒いところはきっと鮮やかな赤だったんだろうなと思えるくらいに古い羽織だった。


 どこか中二心を揺さぶるようなデザインで少し着るのが恥ずかしい。


 加えてなぜか肌がピりつくような着てもいないのに謎の感覚がある。


「なんだか高そうだけど……」


「それがにゃ。これ売り物じゃにゃいのにゃ」


「売り物じゃない? そんな貴重な物いいのか?」


「何のためにあってどうして取り扱ってるのかわからないしにゃぁ……値段もついてないからソラにあげるにゃ。気が引けるのならお礼だと思って受け取ってほしいにゃ」


「あ、ありがとう」


 そのぴりつくような羽織を受け取り袖をとおすと心臓になにかが突き刺さるような感覚に襲われる。


 すると目の前に見たことのない情景が映し出されるのだった。



────「剣を掲げよ!!」


 知らない男の声。


「前戦力をもって我々を支配する神々を討て!」


「神殺隊!! 身命を賭してでも討て!! 我ら7種族の歩むべき道に神はいらない。我々は我々で我々の剣で未来を切り開く!! いざ前へ!!」


 その号令と共に繰り広げられる激戦。


 羽の生えた恐怖が目の前に立ちふさがるも一刀のもとに斬り伏せる。


 そこには見たことのある刀があった。


 鳴りやまない悲鳴と激しくぶつかり合う武器と魔法。


 そんな偉くやばい情景においていかれるように、もうろうとする意識が徐々に戻ろうとする。


 そして意識がはっきりしてきた時、俺はその場でうずくまって過呼吸のようになっていた。


「ソラ!! ソラ!! どうしたにゃ?!」

「ソラさん?! 大丈夫ですか?!」


 二人の声が聞こえ息も元に戻りつつようやく落ち着くことができた。


 俺は、さっとリィナとニャーの前に「待って」と手を出し深呼吸する。


 息を整えて落ち着きを取り戻した。


「いきなり心臓が……ニャーこれはいったいなんだ?」


「アナライズしても詳細がないのにゃ。名前は天葬の羽織ってあるのにゃ」


「天葬って……名前の時点で不吉さがやばい羽織だな」


 そういえば、この世界へ来てアロルドが俺の葉っぱを見て魔力装具がうんたらかんたら言ってたのを思い出す。


「もしかして魔力装具ってやつか?」


「魔力装具にゃ?……ごめんにゃ。ニャーもあまりしらないにゃ……」


「リィナは何か知ってるか?」


「そうですね。魔力装具のようなものなんだと思いますが……それとはまったく違うような……魔力装具は魔力を帯びた武具のことです。作り方は魔物の一部から作られたり技術者の魔術を織り込むことで作られたりするんです。ですが……魔法のようなものが感じられません。雨具に似てますので雨避けにつかわれていたのでしょうか」


「ほほん……さすがリィナ先生。これだけでよくわかるな」


「修道院では優秀でしたので!」


 どや顔のリィナ先生。


「まあ……びっくりしたけど考えても仕方ないか。とりあえずニャーありがとな」


「まさかこうなるなんてごめんにゃ。大丈夫かにゃ?」


「ああ、心なしか……なぜか体がなんだか軽くなったような気がするよ。気味が悪いな……それよりもだ。ニャーの荷物をどするかだ。貴重なものも結構ありそうだし置いておくのは怖い気もするんだ」


「そうですね……では、ひとまずここに置いとくとして近隣の村で馬を用意してから戻ってきて運ぶというのはどうでしょうか?」


 地図を取り出して広げて現在地を照らし合わせるリィナ。


「今ここですので────」


「いや、そこはこっから北にいった別の村だ」


 顔を赤く染めて小声で小さく謝るリィナ。


「すみません」


「どうしたにゃ?」


「ん~。まあそうだなリィナは、なんかその……可愛らしいって話だ」


「かわいらし?!」


「顔が赤いにゃ。健康的な子はかわいいにゃ」


「なんですか?! ニャーさんまで」


「とりあえずだ。この場所がここだから一番近いのはトランドノートのネトレ村だな。ここで馬を借りるという方法もあるか」


「う~む。今取れる手段はそれしかないにゃ」


「一旦、放置することになってしまうけどいいか?」


「仕方がないのにゃ。馬車だけでも無事だったならニャーは満足だにゃ。キータの父ちゃん分もニャーが頑張ってみるにゃ」


「ニャーさん……ニャーさんは偉いです」


 リィナがニャーをぎゅっと抱きしめる。


「にゃ、そんにゃに抱きしめるにゃ。にょ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


 俺が最初にやっていたことをリィナもやっていた


「えへへ、良い匂いです」


「おみゃあら変態だにゃ! でもリィニャのその笑顔は反則だにゃ……」


 中年男性の体臭嗅いでるっていうのを考えると少し感慨深いものがある。


 リィナはそっとニャーを解放しそそくさとニャーはニャアマートの中へと入りドア付近で体を隠してこちらを見る。


「にゃ、ニャーは戻ってきたときのために家を馬車に戻すにゃ! ちょっと時間かけちゃうけどごめんにゃ」


「気にしなくて大丈夫ですよ。ニャーさん」


「特に急いでる訳でもないからな。今すぐ行ってもつく頃には真夜中だ。出発は明日くらいがちょうどいいだろう」


「ありがとうにゃ! さっさとやっちゃうにゃ」


 ニャーはいろいろな工具の入った箱を取り出して小さな手で器用に馬車の改造に取りかかるのだった。


「私達はお夕飯と朝ご飯の支度をしましょうか。保存食は残しておきたいですし調達ですね!」


「お、旅らしいな。何が食べれるとかリィナ知ってるの?」


「少しの知識ですが……」


「へぇ、あてにしてるよ」


 ニャアマート周辺をリィナと散策しながらいろいろ採った。


「この木の実いけるんじゃない?」


「すごい色してますよ?」


「ゲテモノほどおいしいかもしれない」


「ソラさんが食べるのなら私は止めませんが……」


 その夜は採ってきた山菜や魚をニャーに食べられるか判別してもらって食事を作った。


 今までリィナと二人であったが一人、いや一匹と言うべきかわからないが一人加わることによってより賑やかさが増した。


 二人だけでも面白かったが寝食を共にする仲間が増えるというのはいいものだと実感する。


 元の世界では得られなかった経験だ。


 そして問題の朝が来た。


 しっかりと馬車になっているニャアマート。


 荷台にはいろいろ詰め込まれ捨てられるものはちゃんと捨てられている。


 不法投棄ではないかと思ったがこの世界にそんな概念はないだろう。


 馬車を一旦おいて立ち去ろうとした時、ニャーは心配そうに馬車を何度か見る。


 どうしたものかとリィナ。


「だ、大丈夫ですよ。すぐ戻ってきますし」


「おいらだけ残るとかも」


「ルプスの残党がいるかもしれないからな。ニャーは大丈夫なのだろうが一人にしておくのはちょっと心配だな」


「にゃー……」


「そうですね……あ! もしかしたらソラさんなら馬車を引けたりして!」


 なんて冗談のように言うリィナ。


「さすがのソラもそれは難しいにゃ」


 無理ならば。


 叶えて魅せよう。


 ホトトギス。


 ここで俺の好奇心に火が付いてしまったのが運命の分かれ道だった。


 がっしりとした少し大きな帆のついた馬車。


 重さはどれくらいあるのかわからないが荷台にはそこそこ荷物が詰め込まれている。


 そして俺は馬車の前に立って両端に出ている棒を片方だけ引っ張って動かしてみる。


「この馬車……うごくぞ!」


 こうして俺の馬車デビューが始まったのであった。

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