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第17話 怨恨に燃える反乱者

 私は冒険者とおもわれる男に肩を強引に掴まれ引っ張られ連れて行かれる。


 こんな状態で見たくなかった懐かしい景色が通り過ぎていく。


 小さいころに何度も通った坂、振り返ればルロダンの町々と見上げれば綺麗な星空。


 その景色を私はまたみる事ができるのだろうか。


 高い柵の内側には薄い膜がかかったように白壁が張られておりこのままでは入れないのだけれど男が大きな声で言う。


「開錠!」


 たちまち薄い膜は霧のように霧散して中へと入れるようになる。


 本当に反乱を企てている者達に占拠されてしまったみたいだった。


 その状況だけでも私は心がつらくなったけど、そこから目にする光景はとても悲惨なものだった。


 思い出の中にあった綺麗な庭は荒れ果て美しかった花は枯れており、雑草が生い茂っている。


 掃除もさっぱり行き届いてない状況の荒れた我が家を見てもうどうしよもないのかと目の前が曇っていく。


 こんな曇っている目で薄暗くてもよく見える。


 よく覚えている。


 小さいころに駆けて遊んだ中庭、重厚感のある屋敷の扉を開けて中へと連れられる。


 壁や床はところどころ汚れてしまっており飾られていた花瓶は割られたままになっていた。


 そこからまっすぐと中庭へと連れられ目にしたのは縛られている父と母の姿だった。


 お父様は驚きの表情を作り私を呼んだ。


「リ……リィナ?」


 久しぶりに聞くお父様の声。


「お父様、お母様……」


 続いてお母様。


「リィナなの?」


「……はい」


 私はお父様の隣に乱暴に連れられ地面に座らされるのだった。


 それから父は咄嗟に見張りと思われる兵士に言う。


「すまないドレッド! 娘は関係ないんだ! お願いだ!! 娘は解放してくれ!!」


「んー? レジナード卿。この期に及んで単なる兵士の俺に娘の命乞いか? お貴族様も地に落ちたもんだなぁ?」


「私のことは何とでもしてくれていい! だが……娘だけは、娘は!!」


「そうだなぁ……」


 鎧を気崩し両脇に直剣を2本差したドレッドと呼ばれた兵士は私の周りを歩き回り舐めるように見てくるのだった。


「確かに殺すにはもったいないかぁ?」


 懇願する父の背はとても小さく震えていた。


「頼む……」


「なかなか良い体つきじゃないかぁ? なめ回していたぶるにはいい色をしている。胸も大きいときたもんだ。俺の夜のペットにでもしてやろうかな?! それにあの半分石になった女も……ありゃ石になった後に見せしめに町の中央にでも飾ってやるよ。その石像の名は貴族制度最後の歴史。とでも題するか?!」


「ドレッドぉおおおおおお」


 見たことのない父の怒りに染まった目。


「おおっと?! なんだなんだ? その目は? おまえら貴族がやってきたことだろう?」


「ドレッド……あまりからかってやるなよ」


 大きな丸いトゲのある武器を背負った大男がドレッドをギロリとにらみつけていた。


「へいへい……」


「まあ、お楽しみは後にして……さてと時間だ。おまえら!!」


 響き渡り屋敷の中にいただろう反乱者と思われる人達が姿を現した。


 とてもたくさんいることに驚き手が震えて仕方がない。


「明日!! アメリア家領主……レジナードの処刑を決行する!! それを皮切りにこの国をひっくり返す第一歩が始まる! そこで我らが英雄、ナヴァルタスの亡霊こと元攻勢騎士隊師団長ダンテさんよりお話がある! 心して聞け!!」


 周囲の者は歓声をあげ口々にこう言った。


「戦争の英雄!!」

「国を変える最後の希望!」

「いよいよやるのか!!」

「俺達を捨てた奴らに報いを!!」


 歓声がしばらく響いた後に屋敷の奥手にある両扉が開きナヴァルタスの亡霊と呼ばれる騎士……ではなく反乱者達のボスが姿を見せる。


 私はその人を目にした瞬間、背筋が凍るように緊張した。


 殺気に満ちた重圧が周囲を包み込み立ちあがれない程に足が震える。


 縛られた手も震え縄と皮膚がこすりあった所が痛い。


 その威圧の根源たる彼はススと血で汚れた赤黒いマントを羽織り、黒く染まった騎士の甲冑を身に着ける。


 腰に下げられたのは直剣というにはとても大きい。


 伸ばされた髭は威厳を見せるようなとてつもない覇気を感じさせるほど。


 入場してきた威厳ある男はゆっくりとこちらへと歩き私達の前で足を止める。


 そしてその男を前に父は言うのだった。


「ダンテ……国王陛下に忠を尽くすと誓っていたお前がなぜ?!」


 するとダンテは訝しむような表情で続ける。


「魔の手の届かぬ東にいるお前にはわからないだろう……故に言葉は不要だ。答えたところで理解できん」


 ナヴァルタスの亡霊と呼ばれる男は大きな剣を引き抜いて空へと掲げる。


「今宵……準備は整った。明日、ルクサーラ神に最も近づける正午にレジナード・イル・アメリアを処刑する!!」


 大歓声をあげる反乱者達。


 そしてダンテは続けた。


「後に占領したアメリア領を機転に他国との交易を軸としまずは北へと軍を進める

! 南のフラロ領、ハイデン領はどうせ手を出せまい。まずはトランドノート領。ザンドラレル領。 ノードランド領を手中に収め北のローデン領、ルーデン領を侵攻し最後にヴァルダン領の悪魔どもを討ち取る!!」


 歓声をあげる反乱者達は口々に「腕がなるぜ」や「憎き貴族どもに粛清を!」だったり「新しい平和な世を作るのは我らしかいない」と言っていた。


 その歓声を鎮めてからダンテ。


「四方を占領し国の血となる物資を枯渇させた後、仕上げに王都アーグレンを攻め落としこの革命は成るであろう!」


 異様な熱気の中で誰一人ちしてまともな目をした人はいない。


 ただその狂気に私は震える事しかできずにいた。


「同士達よ……つらかっただろう。ただただひたすらに神へ捧げる祈りを無碍にした為政者どもをかたずけ悪しき政治をここにただすべくここにルクサーラ神の掲げる真の自由と平等、護りと慈しみのある世界を共に見に行くぞ!!」


 その熱演に応えるような大歓声が邸内を包み込むがダンテの演説はそのまま続けるのだった。


「現在!! メールヴァレイの侵攻により、この国はあと一歩というところまで追い詰められている。もはや虫の息、これは好機である! 我々を虐げ、搾取し、隷属させた悪魔どもを見過ごしていいか?! 答えは否!!! 今こそ我らの力で傾いた体制に引導を渡してやろうぞ! 私は皆の奮戦を期待する!!」


 ある者は平和な世のためにという。


 ある者は仇が討てると言っていた。


 そんな悪魔のような大歓声の中で私は今までに感じたことのない情動を体験した。


 貴族や国への恨みは相当なところまできていることを思い知ってしまった。


 一部の者が石をこちらへと投げた。


 それが私へと飛んでくるのを母がかばう。


「お母様!!」


「おっと……動くなよ?」


 気持ち悪い視線を向けた男が私の前へ出て言うのだった。


「お願いします。お母様を治療させてください」


「それは無理な相談ってもんだ」


「どうして、こんな……」


「それすらわからないなんてかわいそうなこった。まあ貴族に生まれた自分を呪うんだな?」


 そう言って男は去ると広場に置かれた私たちは石を投げられる。


 次はお父様が私をかばうのだった。


「見ろよ。あれが貴族の姿だ」


 あざけ笑われる。


 罵倒される。


 悔しい思いと悲しい思いが心の中をかき乱す。


 そんな事態は長く続いてお父様がぱたりと倒れた時、私たちは屋敷の部屋へと連れて行かれるのだった。

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