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62話 圧倒的翼竜【ガーネット卿視点】

⸺⸺ガーネット領主の屋敷、庭⸺⸺


 息子らがアカツキの国に出かけてから3日が経つ。

 鬼族の伝令によるとそのままアース山脈へと旅立ったとか。


 皆、無事だろうか。ちゃんと睡眠は取れているのだろうか、大きな怪我はしていないだろうか。そんな不安が私へとのしかかる。


 幸い、ガーネットとその周辺の地は魔物の出現こそ多いものの、(つど)ってくれた騎士団員のおかげで治安は良好だ。

 今は、息子らが無事に帰って来ることを祈るしかない。


⸺⸺そんな時だった。


 バサッ、バサッという轟音と共に私に吹き付けられる突風。思わず手で顔を覆ってうつむくと、私のいる周辺だけがなぜか影っていた。

「一体何なんだ……?」

 恐る恐る顔を上げると、私の視界は巨大な翼竜が降り立つ光景で埋まった。


「うわぁぁぁぁっ!? ど、ドラゴンの魔物……!?」

 あまりの衝撃に腰が抜けてしまい、ドサッと尻餅をつく。何だって急にこんな恐ろしく強そうな魔物がここに!? 結界は機能していないのか!?

 まさか、息子らがいないこの時に、この町もペリドットのような惨劇が……!?


 私の悲鳴を聞いてか翼のはためく音に気付いてか、屋敷の中からも補助団員らが続々と顔を出し、私と同じように絶叫して尻餅をつく。

 もう、この地はおしまいかもしれない……。


 すると、魔法杖を構えた妻が私の隣へと駆け寄ってきた。

「こ、この地の守護者はわたくしです! 息子に留守の間の守りを任されているのです! か、かかってきなさい……!」

 妻は全身がガクガクと震えている。無理もない。私など一瞬で腰を抜かしてしまったと言うのに、立っているだけでも妻は立派だ。夫としてなんと情けないことか。


⸺⸺遂に、翼竜が私たちの前へと降り立った。


⸺⸺雷上級魔法⸺⸺


「サンダーストーム!」

 妻の放った落雷が翼竜へと降り注ぐが、翼竜が上を向いて口から放った魔弾によっていとも簡単に相殺(そうさい)されてしまった。


『ちょ……危ないな……』

 ん? 今何かが脳内に直接語りかけてきたような……。

「わ、わたくしの魔法が全く通用しないなんて……そんな……」

 ガクッと膝を突く妻。やはりこの地はもう……。


『我、フィルから伝令を頼まれたニーズヘッグと言うものですけど。ガーネットさんのお宅はここで間違いありませんか?』

「っ!?」

 再び脳内に飛び込んでくる配達員のようなセリフ。私は恐る恐るコクンと頷いた。


『驚かせたようで申し訳ない。かくかくしかじか……』

 必死に事情を説明してくるニーズヘッグという翼竜。

 彼のインパクトがすご過ぎて話が全く入ってこない。何はともあれ、この地を襲いに来た魔物ではないと言うことだけは分かった私たちは、全員安堵してその場に倒れ込んだ。

『お主ら全然話を聞かんではないか……』

 ニーズヘッグはそう言って盛大な溜め息をついた。


⸺⸺⸺


⸺⸺



「ゴールディ卿!? 彼がこの一連の首謀者だと言うのか!」

 私は左肩を擦った。この怪我は昔ゴールディ卿からの応援要請を受けて西の砂漠の遠征に行ったときに負ったものだ。

 まさか、これも、彼の企てか……!? そんな倫理観のぶっ壊れた彼の発想を想像すると、ゾッとした。


「しかもレベッカが小人族の帝国の皇女だなんて……!」

 と、妻。

 レベッカはうちに来た当初から覚えていないことが多く、何か訳ありだとは思ってはいたのだが、流石に帝国の皇女だとは予想もしていなかったな……。それに、あの砂漠の下に国があるのも驚きだ。


⸺⸺


 とにかく、一刻を争う事態だ。私にできることは、息子が家に帰ってくるまでの間に全ての伝令を済ませ、包囲網を整えること。

 ニーズヘッグの話によれば(たか)の如く速く飛べる鳥人族が20人も参加してくれるとのことだ。早速彼らの力を借りることになりそうだな。


 伝令を済ませてアース山脈へと帰っていくニーズヘッグを見送ると、すぐに行動を開始した。しばらくしてフウガと新入団員らも帰還し、着々と息子が帰ってくるまでの準備を進めた。


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