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6話 騎士団の条件

⸺⸺ガーネット領主の屋敷⸺⸺


 屋敷に戻る頃にはもうとっくに昼を回っていたので、とりあえずみんなで昼食を取った。

 グレンは今日はまだ何も食べていなかったようで、美味い美味いと言いながら信じられないくらいたくさん食べていた。


 そして居間でみんなでくつろぎながら、お父様から騎士団についての説明を受けることになった。

「騎士団の設立は、まずその領の領主の許可を得て、その許可証が王都にある“王国騎士団本部”に受理されれば正式に認められる。領主の許可はもう得たから、後は私が許可証を発行すれば事足りる」

「そのおとーさまが作ってくれたきょかしょーって言うのを王都に持っていけばいいんだ?」


「そうだ。しかし、騎士団の設立には団長と副団長の他に最低3人以上の“戦える団員”が必要となる」

「えっ、僕とぐれちゃだけじゃ騎士団って言っちゃいけないの!?」

 衝撃の事実。年齢制限がないのは知っていたけど、最低人数の制限があるのは知らなかった……。

「うむ、残念ながらな……。私も数合わせに協力できれば良かったのだが、恐らくこの腕と、引退してからのブランクで“戦力”とは認められないだろう」


「旦那様は、その怪我は戦場で負ったものなんすね」

 と、グレン。

「うむ。昔は私が団長でこのガーネットにも騎士団があったのだが、この怪我の事件が原因で騎士団は解散になってしまったのだ。私の未熟ゆえだ」

「そうでしたか……命だけでも助かって良かったですよ。俺は……妹を亡くしてるので」

 みんなはハッとグレンを見る。そっか、グレンは大事な家族を亡くしてしまっているんだ。

「グレン殿も辛い思いを乗り越えてきているのだね……」

「あ、しんみりなってしまってすいません。だからこそ俺は、フィルを守りますよ。大切な家族を失う辛さはよく分かりますから」

「ありがとう。とても心強いよ」


「あっ、でも俺今仕事道具ないんでした……。つーことは、俺も戦力としては認められないって事か……?」

「ボロボロに崩れてしまったものね……」

 と、お母様。お父様が続く。

「刀は、この国ではなかなか扱っている武器屋がなくて入手が難しそうだけど、どこかあてはあるのかい?」

「まぁ、一旦国に帰るしかないですね。アカツキの都で何かしらを調達してきますわ」

「アカツキの国に行くの!? 僕も一緒に行きたい! もしかしたら、誰か騎士団に協力してくれる強そうな鬼さんがいるかも」

 僕はキラキラ光線をグレンに送る。本当はただ付いていきたいだけ。それに対しお父様が苦い顔をした。

「グレン殿……人間が行っても大丈夫だろうか? ほら、昔からあまり交流はなかっただろうから……」

「うーん、未知っすねぇ……。けど、鬼の俺はこうして皆さんに受け入れてもらえましたし、仲が悪い訳でもないので。旦那様と奥様さえ良ければ、フィルも連れていきますよ」

「分かった、良いだろう。何事も経験だ。アカツキの国に社会勉強に行って来なさい」

 と、お父様。お母様も「わたくしも賛成です。騎士団の団長になるのだから、見識を広げるのは今後の騎士団にとってもプラスになるはずです」と、言ってくれた。

「ありがとう! おとーさま、おかーさま!」


 話がまとまりかけたその時、レベッカが急に立ち上がり口を開いた。

「す、すみません! 私も戦えるようになって、フィル様のお役に立ちたいです! 私もアカツキの国にお供させてください。戦い方の参考にできる事があるかもしれません」

「れべちゃも戦うの!? なんだか想像出来ないよ……」

「いや、お前だけには言われたくねーと思うぞ、フィル……」

 と、グレン。そうだった、僕5歳だったんだ。

「レベッカ、無理はしなくて良いのだよ。戦わなくても騎士団をサポートする方法はいくらでもある」

「ですが、旦那様……私、私は……フィル様のおかげで今こうしてこのお屋敷にお世話になることが出来ています。フィル様への恩返しのためにも、私に出来ることはなんでもしたいんです! あっ、でも屋敷のお掃除とかしないとでした……」

 僕のおかげで……!? なんかちょっとそれは初耳だ。レベッカは一体いつから、どうしてこの屋敷で住み込みでメイドをしているのか、そう言えば知らなかったな……。

「屋敷の事なんか良いのよ。あなたが来てくれる前は自分たちでやっていたのだから。それに、戦わなくても戦力になる方法があるわ」

 と、お母様。

「ふぇ、奥様……その方法は、一体……」

「回復魔道士になればいいのよ。つまりヒーラーね。ヒーラーは戦闘において重要な役割だから、戦力として認められるわ」

 お母様ナイス。確かにレベッカの魔力は決して低くはない。チャレンジする価値はあるか。

「はい、私、すぐに回復魔道士の訓練をします!」

 レベッカは希望に満ちた表情でそう返事をした。


「ならせっかくだから、れべちゃが回復魔法覚えてからアカツキに行こうぜ」

 と、グレン。

「うん、賛成!」

「すみません、ありがとうございます!」


 騎士団結成に向けてやる事は山積みだ。でも、一人でなんでも出来ちゃうよりもずっと楽しい。

 家族のみんなで幸せになるために。領内のみんなで幸せになるために。


⸺⸺僕の幸せ騎士団大作戦が始まった。


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