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小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜  作者: るあか
第五章 暴かれる悪事と小さな皇女

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59話 小さな皇女

「ま、待ってください、私は確かにレベッカ・マリーゴールですが……皇女と言うのは何かの間違いではないでしょうか……!? だ、だって、国の名前は“ステラン”なのでしょう……?」

 レベッカはあわあわとそう尋ねる。

『確かに国の名前はステラン帝国だが、国を治めている……いや、“治めていた”のは“マリーゴール朝”だ。ふむ、記憶を失っているというのか……』


 ここで僕が割って入る。

「待って待って、れべちゃも驚いているから、ちょっと待って。一旦整理しよう。そのステランって帝国はどこにあるの? 今もある?」

 これに対しニーズヘッグが答える。

『大陸の西に広がる砂漠地帯、その地下にあるのが小人族の国ステラン帝国だ。今も実在しておるかは不明だ』

 エリージュ王国の西に広がる砂漠地帯の地下に小人の帝国があるなんて……小人族っていう存在を知っていただけで、国については何も知らなかったな……。


「そうなんだ……。れべちゃは、何も知らないんだね? れべちゃは僕の家に来る前は、どこに住んでいたの?」

「私……ガーネットのお屋敷に来る前は、エリージュ王国のあちこちを1人で転々としていたんです……」

「その前は?」

「その前は……実は、何も覚えていないんです……。母のような人に『人間に紛れて生きなさい』って、そう言われたことだけ覚えています……」

 そう言ってうつむくレベッカにざわつく一同。

『やはり記憶がないのか……』

 と、ノーム。そんなノームの大きな足に、小さなレベッカがしがみついた。

「ノーム様! ノーム様は私の事をご存知なのですよね!? もっと詳しく教えてください! 私、皇女なんだとしたら、なんでエリージュ王国に……」

『うむ。ワシの知る限りの事を話そう』


⸺⸺


 ノームを魔障から解放したと言っても、未だこのエリアは魔障が濃かったため、僕たちは念の為アース地下空洞の方へと移動した。

 魔物はほとんど一掃したため魔物の気配は既になく、レベッカの松明代わりの魔道メイスを囲うようにみんなで腰を下ろした。


『レベッカ皇女よ、今は自分が何歳なのかは分かるのか?』

 と、ノーム。

「はい、23歳……の、はずです」

『で、あれば今から7年前の話になろうか。ステラン帝国は皇帝エリック・マリーゴールによって統治され、地下にあるせいか他国とはあまり交流こそなかったものの、平和な日々を過ごしていた』

「エリック……それが私の父の名前……」

『ワシも常に皇族と共にあり、あなたの母である“フィアナ皇妃”が“地の巫女”を務めてくれていた。……だが、その平和はある時突然崩れた。国の宰相(さいしょう)であるクルーア・ディバンカーが大規模なクーデターを起こしたのだ』

「フィアナ……母の名前……クルーア……」

 レベッカはブツブツと呟いている。きっと今必死に思い出そうとしているんだ。クーデターによって崩された平穏。レベッカはこのまま知らない方が幸せだったかもしれない……。


 ノームは話を続ける。

『クルーアは人間の一部と手を組んだようで、彼の持ち込んだ毒薬によって国中が大混乱に陥った。ワシは皇族の血を絶やさぬため、エリック皇帝とフィアナ皇妃、そしてレベッカ皇女を地上へと逃した。あなたとはそれっきりで、心配していたのだ』

「3人で、逃げた……? でも、私は気付いたときには1人だった……父と、母は……それに国の民は、どうなってしまったのでしょうか……」

 ポタ、ポタとレベッカのローブに涙が染み込んでいく。みんなはそんな彼女を心配そうに見つめていた。


『実は、ワシもその後人間に捕まってしまい、その後の事は分からないのだ。あなたの母とも意思疎通が叶わなくなっている。生きているのかどうか……。これがワシの知る限りの帝国の話。すまない、レベッカ皇女』

「そう、ですか……いえ、教えてくださりありがとうございます……」


『ノームはなぜ人間に捕まってあんなことになっておったのだ?』

 と、ニーズヘッグ。

『うむ、どうやら魔障の苗床にされてしまっていたらしい』

「ねね、ノーム。その人間の名前とかって分からないの? シルバって名字だったりする?」

 僕がそう尋ねると、ノームは否定し、こう返した。


『クルーアとやり取りしていた代表の男はシルバという名ではない。奴の名は確か……“ゴールディ”』

「ゴールディ!? ゴールディ辺境伯!?」

 他のみんなは「誰?」って顔してるけど、ゴールディ辺境伯は、ペリドット辺境伯と並ぶ国境の2大領主だ。

 そんな偉い人が7年も前からこんな事を……? 一体これ以上何を求めているって言うんだ。

 僕の頭の中には次々と疑問が沸き起こっていた。


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