56話 アース地下空洞
⸺⸺アース地下空洞⸺⸺
アース山脈の山道に頑丈な鉄の扉で閉鎖されている入り口があり、その先には天井の高い洞窟が広がっていた。
真っ暗だったためレベッカに自身のメイスに火をエンチャントしてもらい、それを松明代わりに進んでいく。
そこら中に魔物の気配があり、みんなで蹴散らしながら進むとやがて地底湖の広がるだだっ広い空間へと出た。
「地底湖……綺麗ですね……」
と、レベッカ。
「これで魔物がいなかったら最高なんだけど……」
ライカはそう言いながら地底湖から飛び出してきたワニのような魔物に電気の矢をお見舞いする。
「うっ……本当ですね……恐ろしい……」
「フレイヤ、魔竜の力の一部を使えるってどんな……?」
僕がキラキラ光線を飛ばしてそう尋ねると、前線で戦っていた鬼たちもサッと引いて前線を譲る。
「み、皆さん……! そうですね、例えば……」
フレイヤはそう言って前へと出て未だわんさかいる魔物の群れへ両手のひらを向けた。
「魔竜の逆鱗!」
彼女がそう唱えた瞬間、両手のひらから特大のビームが発射され、遠くの方の魔物まで一直線に葬られていった。
「か、かっこいい!」
と、一同。フレイヤもいい感じに無双系だ。なんせうちの幹部、女性陣の広範囲攻撃がえげつなくてえげつなくて……。
「そ、そうでしょうか……軍では結構怖がられてるんです、私……」
そう言って苦笑いをするフレイヤ。
「それは……魔竜にいきなりビンタしたりするからじゃ……」
僕がそう言うと、シギュンが「言えてるぜ!」と笑っていた。
「大丈夫じゃフレイヤ。うちは皆、何かしらバケモンじゃ。妾も夜叉の力を引き継いでおる故幼い頃は怖がられたが、この騎士団では遠慮することなく力を発揮できる故、気持ちが良いぞ」
と、スズラン。
「夜叉……! なんだか私たち、気が合いそうですね。確かにフィル様のあの古代魔法を見たら、何しても許される気がしますね……」
なんかそれ僕若干ディスられてる……? でも、フレイヤも馴染んでくれたしまぁいっか。
「うむ、そうじゃろ? ぜひアカツキに行ったらカグツチの湯で語り合おうぞ」
「はい♪」
すると、空洞の奥の方からドシッ、ドシッと巨大な何かが近付いてくる音がしたため、みんなが身構えると大きな肉食っぽい恐竜が姿を現した。
『ギャァァォッ!』
「うわっ、すんごい咆哮。ここのボスかな?」
僕は恐竜ちょっとかっこいいなと思いながらそう言う。
すると、フレイヤが「次はシギュンの番よ」と言って彼の背中をポンと押した。
「ええ!? このメンツの中でアレの担当俺!? ぜってーちげぇじゃん!」
怖気付くシギュン。そんな彼を励ましたのはレベッカだった。
「シギュン様、私がサポートします!」
彼女はそう言って魔道メイスを構え、こう詠唱した。
「アタックライズ!」
シギュンの身体に赤色のオーラがまとう。レベッカ、属性のエンチャントだけじゃなくてステータスアップのバフ魔法も使えるようになったんだ。
「うぉぉ、レベッカちゃんから愛のプレゼントが……! レベッカちゃん、この俺にお任せを」
シギュンはドヤ顔で斧を構えた。その隣に刀を抜いたグレンが並ぶ。
「しゃーねぇから俺もサポートしてやるぜ。れべちゃ、俺らに火のエンチャントだ」
「はい! エンチャント・火!」
2人の刀と斧に炎が灯る。
「ど、どうするぜ副団長!?」
と、シギュン。グレンは「俺が合わせるからお前は思いっ切り縦斬りだ」と返した。
これは……連携奥義の予感……!
「了解!」
『ギャァァォッ!』
突進してくる恐竜。そんな恐竜にシギュンも負けじと立ち向かい、高く飛び上がって炎の斧を振りかざした。
「うぉぉぉっ!」
「っしゃぁ、いい構えじゃねーの! 行くぜ、連携奥義! 豪炎十字衝!」
グレンは横斬り! シギュンの縦斬りと合わさって、十字の炎の斬撃が恐竜へとクリーンヒットした。
『グアァァァッ……』
4つに割れた恐竜はパンッと弾けるように黒い霧となって消えていった。
「お疲れ、シギュン!」
「おう!」
武器を収めた2人がグータッチをすると、みんなはわーっと盛り上がった。
いいなぁ連携奥義……僕も誰かとやってみたい……。僕の中にそんな願望が生まれたところで、洞窟の岩壁の種類が変わる。
ここからがきっと、アマツ山の真下になるんだ……!




