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小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜  作者: るあか
第四章 魔竜の生贄と悪事の鱗片

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47話 絶望の夫人

「そ、そんなはずありませんわ! 主人は確かにガーネット卿のお屋敷に伺うと……」

 シルバ夫人は目をぱちくりとさせる。動揺しているようだ。

「本当にご主人はいらしてはいませんよ。私はずっとこの屋敷におります。5日前も留守にはしておりませんでしたので、間違いないかと……」

 と、お父様。ここでアレンが口を挟む。

「失礼、シルバ夫人。あなたは魔障を活性化させる薬品がある事をご存知ですか?」

「魔障を活性化……? そんな物知りませんわ。そもそも魔障が活性化してしまっては大変ではありませんか。そんなものこの世にあるはずがありませんわ」

 バサッとそう言い切るシルバ夫人。シルバ卿と違って、この人は口調はキツくても裏表のないサバサバした女性だ。嘘を言っているとは思えなかった。


「ご主人がそう言った薬品を扱っているのを目撃した事もありませんか?」

 アレンは引き下がらない。

「主人はそんな物騒な物を扱える度胸はありません。見たことも一度もありませんわ。あなたさっきから何ですの? わたくしは今それどころではございませんのに」

「申し訳ございません。私は王国聖騎士団のアレン・ヴァレンタインと申します」

 アレンがそう丁寧にお辞儀をすると、シルバ夫人は「聖騎士団!? それは、失礼致しましたわ」と素直に頭を下げた。


「訳あって先程の薬品の手がかりを追っていまして、領主様のお屋敷を一軒ずつ回っているところなのです。シルバ邸の中も拝見させていただくことは出来ますか?」

 アレン、しれっと嘘ついた……。

「ええ、もちろん構いませんわ。主人がいないのであれば、わたくしもここにはもう用はございませんので」

「ありがとうございます」


 そしてアレンは一人では大変だからと僕に数人連れてくるように言ったため、僕はこの後巡回等の予定のなかったニコラスとフウガを連れてアレンとシルバ夫人と共にシルバ領主の屋敷へと向かった。


⸺⸺シルバの町の周辺⸺⸺


「なっ……!?」

 驚いたシルバ夫人の視線の先には、シルバの町の入り口を覆い尽くさんとするダークウルフの群れだった。

 僕たちだってまさかシルバ領までそんな事になってるなんて思わないからビックリなんだけど。


「シルバ夫人、出かけるときは大丈夫だったの?」

 僕の問いに、シルバ夫人はこくんと頷いた。

「ええ……魔物なんて一体もおりませんでしたわ……なんで急にこんな……」


 なるほど、急にたくさん湧いたのか。町の入り口でシルバ騎士団の人たちが戦っているけれど、全然数は減っていってないし、むしろ押され気味だ。

「助太刀しますか」

 僕がそう言って木の杖を構えると、アレンとフウガも剣を抜いた。

「なっ……討伐料も払っていませんのに、助けていただけるんですの……? まさか、後から高額請求を……!?」

 と、シルバ夫人。僕はプッと吹き出し「シルバ卿じゃないんだからいらないよ」と言ってダークウルフの討伐を開始した。


 ものの数分で討伐を完了すると、シルバ騎士団の面々は「なんか知らないけど助かったー!」と言って町の中へと帰っていった。なんてやる気のない団員なんだ。

 シルバ夫人はあまりに一瞬の出来事にポカンとしており、我に返ると「シルバの町を救ってくださりありがとうございました。わたくし共は、ずっと高額請求をしていましたのに……」と深く頭を下げた。


⸺⸺


 念の為町の結界を強化してからシルバ領主のお屋敷へ向かう。

 そして、みんなでシルバ卿の執務室を調べていたところ、ニコラスが机の引き出しから謎の液体の入ったビンを取り出したのであった。

 アレンがすぐにその液体を鑑定器で調べると、魔石の森に落ちていたビンと同一の成分だということが分かった。


「う、嘘……。あの人が、そんな物騒なものを……!?」

 シルバ夫人はその場に崩れ落ちた。そして、シルバ卿が魔石の森にわざと魔物を湧かせていたかもしれないと話すと、彼女は深く絶望していた。


 シルバ卿の失踪の件も含めてアレンは王都へと報告に帰った。シルバ卿は薬品の事がバレそうになってどこかへ逃げたのだろうか?

 だとしたらこんなところに証拠を残しておくはずはないけど……。まぁ、その辺はアレンに任せよう。


 僕たちの帰り際にシルバ夫人がたくさんの豪華そうなアクセサリーを差し出してきた。彼女曰く「ガーネット領からの高額報酬で得たもの」らしい。

 僕は迷ったけれど全部受け取り、領民に還元するために領内の町や村、街道の整備のための資金にすると彼女に約束した。


 さて、シルバ卿がいなくなったのはちょっと不気味だけれど、そろそろアマツ山へ派遣されている2人と合流するため、翌朝幹部のみんなを連れてアマツ山へと旅立った。


  


 

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