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4話 ドタバタ挨拶

⸺⸺ガーネット領主の屋敷⸺⸺


「おとーさま、おかーさま、ただいま戻り……」

「ダメだ、相手はセキエイの村を取り囲むくらいの数がいるのだぞ。お前が魔道の心得があるからとはいえ、一人であれだけの数を討伐しようなんて……危険すぎる」

 お父様の声だ。

「いいえ、どれだけの数がいようと、相手は低ランクのダークウルフの群れです。わたくしの魔法で一掃してみせます。ですから、これ以上シルバ卿のお世話になるのはやめましょう! なんなら、わたくしが団長として騎士団を復活させても良いのです」

 お母様だ。そっか……お母様も、もう我慢の限界だったんだ。


 僕はレベッカとグレンを連れて両親のいる居間へと急いだ。

「おとーさま、おかーさま! 僕が、このグレンさんと共に騎士団をけっせーして、そのセキエイの村を困らせている魔物をとーばつしてきます!」

「「フィル!?」」

「はわわわ……」

 驚く両親に、慌てふためくレベッカ。

「騎士団を結成って……まだ5歳のお前が何を言って……って、そちらのお方は?」

 と、お父様。グレンはさっと(ひざまず)く。

「お初にお目にかかります。拙者、グレン・ソウゲツと申す者。ここより東の“アカツキの国”より参りました」

 グレン、めちゃくちゃカッコつけてる……! いや、でもあのテンションのままいられるより両親の前だけでもピシってしてくれる方がいいか。


「まぁ、アカツキの国の鬼族の方ですのね! かの国は武に長けた方が多いと伺っておりますわ」

 と、お母様。

「しかし、グレン殿……そのびしょ濡れの刀で戦うのかい……?」

 お父様はそう言ってグレンが摘んでいる刀を指差した。ポタッ、ポタッと床にスライムの体液が垂れている。最悪だ。


「だぁぁーっ! このまま来ちまったじゃねぇか! すいやせん、すぐ拭きます!」

 そう言って自分の服の裾で床を拭き始めるグレン。あちゃー、もうボロが出た。

「はわわ、グレン様! 掃除は私がやるのでグレン様は鞘を拭いてください! 服で床は拭かないで下さい~!」

 レベッカがグレンに雑巾を投げつけ、グレンは顔でそれを受け止めた。

「ぶほわっ! すまねぇれべちゃ、恩に着る!」

 ちょ、れべちゃって呼んでいいの僕だけなんだけど……。


 唖然とその光景を見守る僕の両親。あのスライムのせいで第一印象は最悪だ。

「その液体は……魔物のものかい?」

 と、お父様。その問いかけでレベッカがハッとする。

「そうなんです! 大変です旦那様、奥様! 実は……」

 レベッカは床を拭きながらさっきの一部始終を両親へと話してくれた。


⸺⸺


「魔石の森に巨大なスライム……!? それをフィルがサンダーで一撃で……!?」

 お母様は口をあんぐりと開けた。お父様も信じられないという表情で首を横に振る。

「と、とても信じられん……いやしかし、その刀をまるまる飲み込むほどの魔物がいた事は事実か……」

「この周辺の魔物が活性化している事とも関係があるのでしょうか……?」

「そのかっせーかしてる魔物だけど、僕とぐれちゃで倒してくるよ! そしたら、騎士団けっせーしてもいい?」

 僕は必死に懇願する。

「なっ、しかし……魔法が使えると言っても、お前はまだ5歳で……」

 お父様はこんな話を聞いてもあくまでも僕を普通の息子として扱ってくれる。それは嬉しいよ、だけど……。


「分かったわ」

 そう言ってくれたのはお母様だった。

「レイチェル!?」

「あなた、この子の魔力はとてつもない可能性を秘めている事は確かです。わたくしはずっと、将来有望な魔道士になると感じておりました。その訪れが少しばかり早くなろうとしているだけです」

「レイチェル……お前はこの子がその巨大なスライムを一撃で倒したという話を信じるのだね」

「ええ。信じるだけの根拠がこの子の小さな身体の中には眠っています。ですから、わたくしに見極めさせて下さい。お二人にセキエイの村周辺の魔物討伐を許可します。その代わり、わたくしも付き添わせて下さい」

「おかーさま、ありがとう!」

 そっか、お母様も僕のこの魔力のことは薄々感じてたんだ……。

「分かった、では私も行こう。こんな小さな息子に魔物を討伐させて、自分は屋敷に引きこもっているなど、私には出来ん」

 と、お父様。

「うん、おとーさま! みんなで一緒にセキエイの村に行こう!」


⸺⸺その道中で。


「フィル、あなた魔法杖なしで魔法を撃ったの……?」

「え? うん……そうだよ? おかーさま」

「ふ、普通、魔法杖を使わないと、魔法って使えないのよ……?」

「えっ、そーなの!?」

 魔法杖は強すぎる魔力を制御するためだと思ってたのに……普通は魔法杖を持っていないと発動すら出来ないのか……!


 しまった、知らなかった……お母様に引かれちゃったかな……。

 そんな僕の心配は無用だったみたいで、お母様は「一体どんなふうに発動を……楽しみだわ……♪」となぜかテンションが上がっていた。


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