37話 緊急事態発生
⸺⸺ある日の午後。幹部メンバーがガーネットのお屋敷で休憩しつつ情報共有をしていた時のことだった。
「フィル団長! ガーネット騎士団のフィル団長はいらっしゃいますか!?」
お屋敷に突如駆け込んでくる一人の男。
「ど、どうしたの? 僕がフィルだよ?」
玄関までお出迎えにいくと、その男は“ペリドット騎士団”の制服を着ていた。
あれ、もしかしてアマツ山道の整備が始まるのかな? いや、彼の焦りようはそんな呑気なものじゃなさそうだ。
「あぁ、フィル団長、良かった……! 私はペリドット騎士団の伝令の者です。急ぎ、ガーネット騎士団へ応援の要請です!」
その声を聞きつけて幹部のみんなも続々と玄関へ集まる。
「応援とは、何かあったのかの?」
と、スズラン。
「はい、アカツキの国との国境のアマツ山からまるで噴火のように突如大量の魔障が噴き出し、大量の魔物がアマツ京とペリドットの町へと押し寄せています!」
「何だって!?」
と、僕たちは一斉に声を上げる。アマツ山から魔障の噴火!? 一体全体どうしてそんなことに……。
その時僕の脳裏に“人為的”という言葉がよぎった。
「以前にフィル団長がアカツキの国の火の神様の暴走を一人で鎮圧されたと聞き、ペリドット団長の命でこうして応援の要請に参りました!」
今は、ここであれこれ考えても仕方がない。とにかく応援に駆け付けて自分の目で状況を確認しなくては。
「分かった。すぐに応援に向かおう。部隊が編成でき次第ペリドットの町へと向かう。お兄さんはこの事をペリドット卿に伝えて」
「ありがとうございます! すぐに伝えに戻らせていただきます!」
ペリドット騎士団の伝令は、慌ててお屋敷を飛び出していった。
さて、部隊編成をどうするか。全員で向こうにいってしまってお母様だけにするのは、このガーネット領内でもそういった緊急事態が発生したときに対処がしきれない。
しかし、ペリドット騎士団の大軍でも対処できないということは、広範囲にバンバン攻撃できる人材を連れていかないときっと話にならない。
つまり……。
僕は団長らしく、ちゃんと名前で呼んでみる。
「ペリドットへ行くメンバーは幹部のグレン、レベッカ、スズラン、フウガ、ライカ。そして伝令役で補佐団員に一人来てもらいたい。残りの団員はおかーさまを指揮官として、領内の見回りを強化してほしい」
「了解!」
と、幹部メンバー。お母様も「承知しました。すぐに補佐団員の確保と戦闘員の編成をして参ります」と言って、お屋敷から出ていった。
お母様が連れてきてくれた補佐団員の“ボブ”を伝令役に迎え、それぞれ馬に乗ってペリドットの町を目指した。
⸺⸺
向こうにアマツ山が見えてくると、ペリドット騎士団の伝令が言っていた通り、アマツ山のあちこちから黒い煙がモクモクと立ち上っていた。魔障があんなにも激しく噴き出しているなんて……!
⸺⸺ペリドットの町⸺⸺
悲鳴や叫び声が飛び交い町の中にまで魔物が侵入し、町は混乱状態に陥っていた。
「何で町の中にまで魔物が!?」
魔物の流れを見ると、こことは反対の出入り口から雪崩込んで来ているのが分かる。あっちはアカツキの方面でアマツ山がある方角。やっぱりアマツ山から来ているのか。
「小回りのきくぐれちゃとふうちゃは町の中の魔物の殲滅を。すずちゃとらいちゃは僕と一緒にアマツ山へ。れべちゃとボブはペリドット卿のお屋敷に行って、負傷者の手当とペリドット騎士団の手伝いをお願い! あと、ペリドット卿になるべく大きい“魔石”を集められるだけ集めてって言っておいて!」
「了解!」
グレンとフウガはサッと町の中へと消えていき、レベッカとボブもペリドット卿の屋敷に一直線に向かった。
そのため僕もスズランとライカと共に辺りの魔物を蹴散らしながらアマツ山の方角へと向かった。




