36話 順風満帆な裏で
騎士団結成から1ヶ月が経つ頃には、団員の数は30人を超えていた。
それぞれ幹部らを中心にチームで動くようになり、“グレン隊”や“総務隊”などと呼ぶようになった。
どんどんと増える団員に、ガーネット騎士団本部の建設計画も急ピッチで進んでいた。
やっと国から初任給をもらえたところで資金は全然溜まっていない状態だったけれど、ペリドット卿やアカツキの将軍様が大工さんをたくさん派遣してくれて、早いうちから建設に取り掛かれそうだ。
僕はそのお礼にアマツ山道の街道の整備を協力する事に。レベッカを現地に出張させて結界を張りまくってもらう予定だ。こっちの計画もまだ詳しい日程は決まっていないので、招集待ち。
⸺⸺
そんな僕は本部の建設予定地である魔石の森にグレンを連れて来ていた。
⸺⸺魔石の森⸺⸺
「あーぁ、この辺は木の腐食が激しいな。こりゃこの木ももうダメそうだな……」
と、グレン。この辺りの木々は真紫に変色して、ボロボロと崩れてしまっている。
「そうだね……この辺りも開拓をして、宿舎を建てる予定だよ」
「一体何だったんだろうな、あのスライム。村周辺にわんさか出るダークウルフも異常だけどよ、あのスライムはレベチで異常な気がするぜ」
「うん。そうだ、念の為“魔水晶の泉”の結界がちゃんと機能しているか、確かめにいってもいい?」
「おうよ。定期的に誰かしらが確認しに行くべきだろうな」
僕たちは枯れ果てた建設予定地から少し奥に進み、魔水晶の泉の前へと向かった。
⸺⸺魔水晶の泉⸺⸺
泉の中央に浮かぶ巨大な魔石は煌々と光を放ち、結界がちゃんと機能していることを物語っていた。
「良かった、ちゃんと機能はしているみたい」
ホッとしたのも束の間、グレンが何かを拾い上げる。
「なんだこりゃ? 割れたビン……?」
「何それ……前にスライム退治に来たときはこんなのなかったよね」
「なかった。こんな人為的に不自然なものがあれば、俺らが気付かねぇはずがない」
「なんだろう、なんかこのビンにこびりついてるもの、独特な気配がするな……禍々しいというか……。よし、ぐれちゃ、麻の袋持ってたよね。全部拾ってお屋敷に持ち帰ろう」
「了解」
僕たちは手袋をして細かい欠片まで丁寧に拾い集めると、お屋敷へと帰還した。
その怪しい割れたビンはフィルグレン同盟にも念の為情報共有され、成分の詳しい鑑定を王国騎士団のアレンへと依頼した。
普段はほとんど人の気配のない魔石の森。こんなところに割れたビンが落ちていると言うことは、“誰かがここに来てこのビンを捨てていった”と言うこと。
更にビンから漂う異様な気配。
僕はこの時から、この一連の魔物の活性化騒動は人の手によって引き起こされているのではないか、と考えるようになった。
 




