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31話 ふんふんふんっ!

「あっ、レオ。どこに行ってたの?」

「おうよ、フィル様。これを買いに行ってたんだ」

 そう言ってレオは細長い包を持ち上げた。ご丁寧に可愛いリボンが付いている。

 そしてレオはその包を持ち上げたままレベッカの前で片膝を突いた。

「ふぇっ、なっ、なんでしょうか……!?」

 戸惑うレベッカに、レオは「れべちゃ様が魔道メイスをご所望だと伺いまして、よろしければこちらをお使い下さい。あと、今度王都に来た際にはぜひ2人でお茶でも……」

「え~っ!?」

 と、僕たち。ウォルター団長は「最後の一言は余計だな……」と溜め息をついていた。

 レオがレベッカに魔道メイスを!? と言うか、最初はガキって言ってたくせに大人だって分かった瞬間その態度……? ギャップ萌えか! あとロリコンかな!?


「ど、どどどどーしましょう、フィル様! 私、男性とお茶したことなんてないですよぅ……!」

 そう言って真っ赤な頬を両手で挟み、モジモジするレベッカ。みんなは「そっちか」と崩れ落ちる。

「とりあえず魔道メイスはもらっとけよ」

 と、グレン。ライカが「そうだよ……せっかく買ってきてくれたんだから……」と続いた。

「は、はい……! すみません、私なんかのために。ありがとうございます、レオ様」

 レベッカが丁寧に受け取ると、レオは嬉しそうにデレデレとしていた。


「れべちゃ、早速開けてみようよ!」

「はい、そうですね♪」

 レオも手伝ってくれて、僕たちは騎士団本部のロビーで包をガサガサと開けた。

 僕は姿を現した高そうな魔道メイスを握ってみる。

 うわ……これめっちゃ使いやすそう。多分、めちゃくちゃ高いやつだ……。お母様からもらっているお小遣いじゃとても買えなさそう。


 そして包の中には他にも淡いピンクのポーチと何種類もの色の魔石が入っていた。

「えっ、“変換魔石”まで……レオ、第一印象以外、めちゃくちゃ良い人じゃん……」

 僕がそう言うとアレンが「そうなんだ。レオは普段の態度も悪いし血の気も多いからとにかく第一印象が最悪なんだ」と共感してくれた。


「フィル様、変換魔石とはなんですか?」

 と、レベッカ。

「あのね、始めたての付加魔道士用のお助け道具だよ。例えば、この赤色の“火の魔石”を持ちながらエンチャントを唱えると、簡単に魔力を火属性に変換できるんだ。だんだん自分の魔力が勝手に変換の仕組みを覚えるから、その内要らなくなるよ」

「ふぇぇっ、すごいですね! 私、早速やってみます!」

 レベッカがそう言って“火の魔石”を持って立ち上がるので、みんなは全力で「ここでは危ないからやめて!」と止めに入った。


⸺⸺聖騎士団訓練場⸺⸺


 結局みんなでまた訓練場へとお邪魔して、レベッカが魔道メイスを構えて火の魔石を持つが、メイスが重いのかよろよろとしている。

「はわわわ……」

 そんな彼女を見てレオは「張り切って良いの買いすぎて重さのこと考えてなかった……!」と絶望していた。

「フィル様すみません、後で他の魔道メイスとエンチャントをお願いします……」

「うん、そうだね。おかーさまからもらったお小遣いでエンチャント用の武器を買おう。今はそれで頑張れる?」

「ありがとうございます。はい、頑張ります!」


「よし、レオが変換魔石もくれたおかげで楽勝だよ。そのまま魔力を込めれば勝手に火属性の魔法陣が描かれるから、描き終わったら“エンチャント”って言うだけ。最初は“エンチャント・(ファイア)”とかって初級魔法の呪文もつけるとやりやすいかも」

「はい、やってみます!」

 レベッカはそう言って魔道メイスに魔力を込める。すると、すぐにメイスの先に赤色の魔法陣が描かれた。


「誰か武器出して!」

「はいよぉ!」

 そう言ってサッと武器を構えたのはスズランだった。

「スズラン様いきます! エンチャント・(ファイア)!」

 レベッカは目をつぶり、魔法杖のときのようにふんふんふんっと3回メイスを振る。すると、薙刀(なぎなた)の刃からゴォーッと炎が噴き出した。

「おぉーっ! やったぞレベッカ!」

 と、スズラン。

「わぁっ、簡単にできました♪」


「な、なぜあんな一生懸命に振るんだ?」

 と、アレン。レオは「可愛すぎて死ねる……!」と(もだえ)ていた。

(わらわ)もレオ殿に激しく同意じゃぁ……」

 と、スズラン。

「あはは、もう3回振るのがクセになっちゃってるんだね……でも、れべちゃはそのままで良いよ。みんなの癒やしだから」

 僕がそう言うと、レベッカは「ふぇぇ、今更普通にできそうにないので恥ずかしいですがこのままでいきますぅ……」と照れていた。


 レベッカが無事付加魔法を習得できたところで、聖騎士団のみんなとの別れの時がやってくる。

「色々とお世話になりました」

 ペコリと頭を下げる僕にガーネット騎士団の一同が続いて一緒に頭を下げる。

 そんな僕たちにアレンが申し訳なさそうに口を開いた。

「いやいや、迷惑もかけてしまったし、そんな……。あ、そうだ。王国聖騎士団は特別な決まりで他領の騎士団と個別に同盟を結ぶことはできない。その代わりに部隊長は自由に自分の部隊を動かせる。だから、何か助けが必要なら直接俺かレオを頼ってくれ。俺も一応部隊長だからね」

 そうだよね、レオのこと同僚って言ってたから、アレンも部隊長なんだよね。

「ありがとう。あ、早速なんだけど、国の東側の地域で魔物が活性化してるみたいで、ガーネット領だけじゃなくてペリドットや隣国のアカツキの国も苦労してるみたいだよ」

 その僕の相談に対し、ウォルター団長が反応を示す。

「ふむ、魔物が活性化か……複数の領に絡む問題はこちらも介入しやすいからな、聖騎士団側でも独自に調査しておくとしよう」

「ありがとう、ウォルター団長。僕たちもとりあえずはやれるところまでやってみるよ」


 こうして僕たちは無事騎士団の結成を果たし、騎士団本部を後にするのであった。


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