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小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜  作者: るあか
第二章 騎士団の結成

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24話 お引き取り願います

 レベッカが魔水晶に魔力を送り続けると、数分で魔水晶から完全に黒いモヤが消え去った。

「フィル様! 黒いの消えました!」

「すごいよ、れべちゃ! そのまま送り続けて!」

 僕はスライムを討伐しながらそう返事をする。

「はい!」


 レベッカが魔力を送り続けること更に数分。遂に魔水晶に結界が張られ、その結界は地面を伝って森中へと広がっていく。それと同時にスライムの湧きも収まってくれた。

「やったよ、れべちゃ! もうやめて大丈夫!」

「はいっ、私、やりましたぁ♪」

 二人で向かい合い両手を繋ぎ合わせて「ランララン♪」と踊る。すると、森の各地に討伐に向かってくれていた鬼の4人もすぐに僕たちのところへと集合した。


「急にスライムの湧きが止まったのじゃぁ!」

 と、スズラン。

「……大きな魔石……」

「あっ、フィル様がこの魔石に結界を……?」

 ライカに続きそう言うフウガに対し、僕はドヤ顔で首を横に振った。

「僕じゃないんだよ。実はこの結界を張ったのは、れべちゃなんだ」

「えっ!?」

 と、一同。

「フィル様のご助言のおかげでなんとか……」

 レベッカは遠慮気味にそう言う。そんな彼女を見たみんなはグレンの「やるじゃねぇか、れべちゃ!」に始まり、みんなでレベッカを褒めちぎりまくっていた。


⸺⸺


「よし、帰ろう。入ってきた方角と反対の方向から出れば、僕のお家は目の前なんだ」

「了解!」

 森の草木はところどころ枯れてしまってはいるが、なんとか被害をこの森の範囲内で食い止める事が出来た。


 そして森を抜けてガーネット領主のお屋敷の裏口から中へ入ろうとすると、聞きたくないあの声が聞こえてきたのである。

「我々の調査では魔石の森に新種の魔物が出現しているのですよ? このままあの森を放っておいては、このガーネットの町まで被害が及ぶのでは? そうならないためには騎士団のないお宅は我が騎士団に討伐を委託するしかありませんなぁ?」

 シルバ卿だ。

「ですが、先程セキエイの村の防衛費を立て替えたために、今はまとまって払えるお金がありませんので……」

「おやおや、貧乏領主はお辛いですなぁ? この屋敷を担保に、金を貸してやっても良いのですよ?」


 僕はみんなを連れて裏口からお屋敷の中へと入り、急いで正面玄関へと向かった。

 道中で、不安そうな表情のお母様とすれ違う。

「まぁ、フィル! おかえりなさい!」

「ただいまー、おかーさまー!」

 足早に彼女の横を通り過ぎる。その後ろにはレベッカと鬼の4人が続々と連なっていた。

「お母上様! お邪魔しておるのじゃぁ!」

「……お邪魔します……!」

「すみません、ご挨拶は後ほど!」

「「奥様、ただいま戻りました!」」

 そんな彼らを見たお母様の「まぁまぁ、3人も増えているわ……!」と言う嬉しそうな声が聞こえてきた。


⸺⸺


「それは出来ない? おや、町民の命よりも自分の住む家の方が大事であると?」

 僕はお父様の前に出て、シルバ卿を見上げてこう言った。

「魔石の森の魔物ならもう僕たちが全部倒したから、シルバ卿はもう帰っていいよ」

「なっ、何!?」

 目を真ん丸にするシルバ卿。

「フィル、帰ってきたのだな! それに、鬼族の方々がこんなにも!」

「うん、ただいま、おとーさま! さっきね、僕たちの6人で魔石の森の魔物をぜーんぶ討伐して、もう湧かないように結界も張ってきた!」

 僕がそう言うと、シルバ卿は鬼の面々を驚いた表情で見渡していた。

「なっ、なんで鬼族が……!? いや、それにしてもだ。たった6人、しかもガキばっかりの集団であの量を討伐出来るはずが……」

「そんなこと言うなら見てきなよ。本当にもう1体もいないからさ。あっ、それと、ガーネット騎士団が復活するから、シルバ騎士団との防衛の契約は今日でおしまい。もう二度と来なくていいよ」

「なっ……騎士団復活って……この片腕男では……!」

「団長は僕、フィル・ガーネットだ!」

「はぁ!? ガキの遊びじゃないんだぞ!?」

 ここでお父様が前へと出る。

「私は正式にフィルを団長と認め、許可証を発行しました。騎士団員には年齢制限はないし、立ち上げの戦力も十分にあるため、王都の本部でも受理されるでしょう」

 お父様はそう言って許可証をバーンと提示する。口をあんぐりと開けるシルバ卿。

「我が息子の言う通り、今日で防衛の契約は打ち切らせてもらいます。そもそも普段から防衛出来ていないのに追加の討伐報酬をたかるなど契約違反も甚だしいが、今後一切我が領土に手を出さないという条件でその件には目をつぶります。話は以上です、お引き取りを」

「そ……そんな、私は認め……」

「お引き取り願います!」

 ピシャリと扉を閉めるお父様。屋敷の外からは「クソがッ! 良い金づるを手に入れたと思ったのに! これで済むと思うなよ! 貧乏領主め!」と言いたい放題の捨て台詞が聞こえてきて、やがて足音が遠くなっていった。


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