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22話 この大陸の種族

 お昼過ぎ、僕たちがペリドットの町を出発するため、ペリドット卿は出口まで見送りに来てくれていた。

「そう言えば今日はアマリアおばさんはいなかったんだ?」

「そうなんだよ、妻は今日は不在でね、会わせてあげられずにすまない」

 ペリドット卿は申し訳なさそうにそう言う。

「あっ、もしかして……魔物の討伐に出かけてる……?」

「そうなんだよ。範囲が広くてね、毎日出かけないとなんだ」

「ダグラスおじさんは僕が来るって言ってたから残ってくれてたのか……ごめんなさい」

「そんなの良いんだよ。フィルぼっちゃんが鬼のお兄さんと騎士団を立ち上げるなんて手紙をもらったら直接会いたいと思うに決まっているだろう」

 ペリドット卿はそう言ってあっはっはと笑った。


「あはは、そっか。あっ、あとさ、お屋敷に妖精族っぽい人、いる?」

「おや、あの子が顔を見せたのかね?」

「あのね、僕がお屋敷を出入りするのを、カーテン越しに見てたよ」

「珍しい、あの子が誰かに興味を持つなんて。実はね、その妖精族の子は私の息子なんだ」

 息子? でも、アマリア夫人は人間だから……。

「えっと、養子ってこと?」

「そうだよ。流石騎士団を立ち上げるだけのことはある。難しい言葉もちゃんと知っているんだね」

「えへへ、まぁね……」

「それなら会っていってもらえば良かったなぁ。君には弟のエディしか紹介出来ていないからね」

 エディはまだ3歳で、僕の方がお兄ちゃん。元気いっぱいの明るい子だ。

「あー、ちょっと言うのが遅かったか……名前はなんて言うの?」

「ニコラスだ。かなり引っ込み思案でね、友だちもいないから、今度屋敷に来たときはぜひ友だちになってやってほしい」

「ニコラスね、うん、分かった。また今度お話ししようって言っといて!」

「あぁ、伝えておくよ」


⸺⸺


 ペリドット卿に別れを告げて横に待機していた馬車に乗り込むと、僕たちはガーネットの町を目指して出発した。


「行きにペリドット卿の屋敷に行った時にも、あの妖精族の野郎いたよな?」

 と、グレン。

「なんだ、ぐれちゃも気付いていたんだ」

「おうよ。まぁ、てめぇが“気のせい”っつうから俺もあえて口に出さなかっただけだ」

「うわ……その“出来る相棒”みたいなのぐれちゃっぽくない……」

「んだとクソガキこの野郎!」

「あははは、怒った~!」

 そう、それがグレンだよ。僕はブチ切れられたのになんだか楽しくて笑ってしまった。


「ニコラスとやら、なんじゃかもの寂しげじゃったな?」

 と、スズラン。レベッカが続く。

「はい、妖精族はどこに住んでいるかも不明でとっても珍しいので、もし種族の差で寂しい思いをしているのなら、なんとかしてあげたいですね」

「ふむ、アカツキの国では、隣の“竜人族”とそのまた隣の“鳥人族”の旅人はちらほら見かけるぞ。まぁ、国を挙げての交流はないがのう……。この国では、他にどんな種族を見かけるのじゃ?」

 そのスズランの問いに僕が答えた。

「南の国境付近では獣人族の人をたくさん見かけるよ。獣人族は一応、南の辺境の領主様と交流もあるみたい。あと、南の島国から来る魚人族かな? それでペリドットの町では鬼族の旅人をちらほら……辺境以外では他種族はほとんどみないって。王都には全くいないっておかーさまが言ってた」

「獣人族とは交流があったのかぁ、なら、今回鬼族も交流が出来て良かったですね、姫様!」

 と、フウガ。スズランはうむ、と頷く。

「国境の整備がされておらんのが一番の問題じゃろうな。戦える旅人のみしか、国境を渡ることは出来ぬ。かと言って、どちらかが勝手に整備を始めてしまえば“侵略”とみなされかねんからのう。どちらも慎重になった挙句、交流はしない、という選択を続けてしまっていたのじゃな」

「だったら……今回の若様のペリドット訪問で……解決しそう……」

 と、ライカ。

「そうだね。これで種族間の交流が活発になって、エリージュではあんまりみない種族の人も増えたら、きっともっと楽しくなるよね!」

 僕はニコッと笑う。

「うむ。そうなればニコラスとやらも引きこもっていないで、外に出たくなるやもしれんのう」

「あはは、そうだね!」


 種族の話に花を咲かせている間に、馬車はクォーツ領を通過し、ガーネット領へと入った。見慣れた風景が見えて来たとき、僕にある不安がよぎった。

「そうだ、ちょっとガーネットの町の近くにある森に寄っていい?」

「グレン様と出会った魔石の森ですね」

 と、レベッカ。

「我らの(おさ)はフィル、そなたじゃ。そなたに何か考えがあれば、我らはそれに従うまでじゃて」

 そう言うスズランに皆はうんうんと頷いてくれた。僕はみんなに感謝しつつ、馬車の窓から顔を出した。

「みんなありがとう! ねね、おじさーん! ちょっと向こうに見える森に行ってくれるー!?」

「はいよ、フィルぼっちゃま!」


 僕の思い過ごしだったらそれで良いんだ。スズランたちにグレンとの出会いの場所の紹介も出来るし。

 馬車は街道の分かれ道を町の方面とは別の道へ進み、僕たちは森の近くで降ろしてもらった。馬車のおじさんには先に町へ行っているようにと伝え、僕たちは森へと急いだ。


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