21話 友好の架け橋
⸺⸺ペリドットの町⸺⸺
「おぉっ、外国じゃぁ! 街並みがアマツ京とは全然違うのう!」
「建物が全然違うからですかね!?」
「……瓦屋根の家が……一軒もない……!」
はしゃぐ新入り3人。分かるよ、僕だってアマツ京に入った時は感動したもん。
「あっ、フィル様、前見て下さい! あの走ってくるおじさま、ペリドット卿ではありませんか?」
レベッカが僕の肩をトントンと叩いて前を見るよう促す。
「お~い! フィルぼっちゃ~ん!」
少しふくよかで良い人オーラ満開のあのおじさんは、確かにペリドット卿だ。
「おーい! ダグラスおじさーん!」
両手で手を振り走ってくるペリドット卿を迎える。
彼は膝に手を突いてゼェゼェと呼吸を整え顔を上げ、僕の後ろにいる鬼たちを見て驚きの表情を顕にした。
「おやっ、4人もおられるとは……!」
「あのね、アカツキの国のアマツ京って都で3人も仲間になってくれたんだよ!」
「なんとっ! これはこれはようこそおいで下さいました。この町の長をしております、ダグラス・ペリドットと申します。お時間よろしければ、ぜひ我が屋敷へ……」
鬼の4人は「ありがとうございます」と丁寧にお辞儀をし僕を見て頷いたので、僕が代表でこう答えた。
「うん。丁度ダグラスおじさんに渡したい物もあったし、お邪魔するね!」
「そうかそうか、いやぁ、昨日は留守にしててすまなかったね。衛兵から親書を受け取って、おじさん中見てびっくりしちゃったよ。ささ、こちらへ」
「ダグラスおじさん大忙しなんでしょ? こっちこそ急に押しかけてごめんね」
そんな会話をしながら、領主の屋敷へと案内される。
僕たちが屋敷の敷地内に入ると昨日と同じく視線を感じたため、その方向に目をやるとやはりカーテンをピシャリと閉じられてしまった。どうしたんだろう? まぁ、後でペリドット卿に聞いてみればいいか。
⸺⸺ペリドット領主の屋敷、客間⸺⸺
みんながソファに腰掛け、メイドさんが紅茶を並べてくれたところで、ひとまずスズランの紹介から始める。
「この人はスズラン・アカツキ。アカツキの国の姫様だよ」
「ひっ、姫様!?」
悲鳴に近い声を上げるペリドット卿。そりゃ、鬼族を仲間にしてきたって言われて、まさか姫様が来るとは思わないよね。
スズランは「本日はお招きいただき感謝致します」とおしとやかにお辞儀をした。あれ……この人誰!? 中身本当にスズラン!?
⸺⸺あっ、これがシノノメの言ってた“サクラの真似”か!
なるほど、猫を被るときはサクラの真似をするって決めているんだ。
続けて残りの3人も紹介をして、本題へと入る。
「はい、これがアカツキの将軍様からのお手紙だよ」
「ありがとう、フィルぼっちゃん。……ふむふむ、なるほど、確かに我が領土も魔物の数が圧倒的に増えて、苦戦を強いられている。こちらとしても協力し合えるのは願ってもない事だ。5日後にこちらにいらっしゃるとの事で、今から会談が楽しみですな」
「鬼の人たちみんな良い人ばっかりだから、仲良くしてあげてね」
「ありがとうフィルぼっちゃん。君が両国の友好の架け橋になってくれたんだね。それにしてもまさか君がすごい魔道士で、更に騎士団を立ち上げるとは思いもしなかったな……これで自衛が出来るようになる訳だね」
友好の架け橋……僕が……。なんだかちょっとくすぐったいな。
「うん、ちゃんと正式に騎士団を結成出来たら、ペリドット騎士団と同盟を結びたいな?」
僕はそう言うと、ペリドット卿は満面の笑みを浮かべた。
「もちろんだ。鬼族の方々と三者同盟といこうじゃないか。楽しみにしているよ」
「良いねぇ、それ! わぁ、僕も楽しみだ!」
それからペリドット卿は再び町に出て、鬼たちにペリドットの町の名物や名所を紹介してくれ、みんな観光を楽しんでいた。




