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小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜  作者: るあか
第一章 鬼の国へ

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17話 共通の問題

 スズランが将軍様に事の経緯(いきさつ)を既に話してくれていたようで、30分くらいの間、将軍様にひたすら感謝をされて、ひたすらに褒めちぎられた。


⸺⸺


「ほんにフィル殿は()いのう。あぁ、ワシもその古代魔法とやらをこの目で見てみたかったわい」

 止まらない将軍様。そろそろもうお礼はいいんだけど、と思った矢先、サクラがおしとやかにバッサリと切り捨てる。

「お父様、お話が進みませんので、一旦お口を閉じていただけますか?」

「はっ、すまん……つい……」

 シュンとしょげる将軍様。ごめんね将軍様、とってもいい将軍様だって言うのは分かったから、また時間があるときにゆっくり話そうね。


 ようやく将軍様が静かになったところで、サクラが口を開く。

「すみません、先程父から散々聞かされたとは思いますが、私からもお礼を申させて下さい。この度は、私とカグツチ、それからアマツの地を守っていただき、本当にありがとうございました」

 丁寧にゆっくりと頭を下げるサクラ。同じ姉妹でもこうも違うふうに育つのか……と僕は思った。

「どういたしまして。みんな無事で良かったよ」

 さっき将軍様に100回くらい言った言葉をもう一度言うと、サクラはゆっくりと頭を上げた。


「カグツチの件なのですが、普段は大人しくて良い神様なのです。それに、カグツチはこの地に多大な恩恵をもたらしてくれています。この地に温泉が湧き出るのも、カグツチのおかげです」

 その土地に住み憑く精霊っていうのは、大抵そういうものだ。陰でコッソリ人の暮らしを支えてくれている。

 それが人々にも伝わっているのは、ある意味カグツチにとっても幸せな事かもしれない。だって、ひとりは寂しいから。


「そっかぁ、あの温泉、“カグツチの湯”だったんだね」

 僕がそう答えると、将軍様がすかさず「良いのう、その名称! 特に名などなかったが、これからは“カグツチの湯”と呼ぶことにしよう!」と、口を挟んできた。

 うわ……僕の言った些細な一言がこの国を簡単に動かしてしまう。この将軍様の前では発言に気を付けなくては……。


「ふふふ、“カグツチの湯”は私も賛成です。ですが、そのカグツチにこの数ヶ月の間に変化が起こってきていたのです」

「変化……魔物みたいに黒くモヤモヤってしてきた?」

「そうです! まさにフィル様の仰る通りです。カグツチ自身もなんだか息苦しい感じがすると、自分の変化を(うれ)いておりました。そのため私は、今日もカグツチの状態が良くならなければ父に相談しなくては……と、思っていたところに、事は起こってしまいました」

「相談するのが一歩遅くなってしまったということか」

 と、シノノメ。サクラはコクンと頷く。

「はい……申し訳ありません。カグツチの言っていた息苦しい感じというのがカグツチを通して私の精神にも影響を与え、何も考えられなくなって、ただカグツチに破壊を命じる、そんな状態に陥ってしまいました」


「カグツチとサクラ姫様に取り憑いていたのは“魔障”っていう魔物のもとになってるものなんだ。常に地面からちょっとずつ湧き出していて、それが固まって魔物になるみたい」

「ほぅ、フィルは物知りじゃな」

 と、スズラン。

「家にあった本にそうやって書いてあったから。実は、僕のおとーさまの領土の“ガーネット領”も最近になってその事に悩まされているんだ。魔物が出ない森に大きな魔物が現れたり、村の周辺に魔物の大群が押し寄せたり……」

「なんと、我が国だけの問題ではないと言う事か!」

 と、将軍様。

「うん、そうかも。このアマツ京から一番近いペリドットの領土も魔物の討伐が大変そうだから、もしかしたらエリージュ王国の東部とアカツキの国のアマツ京にまで、広い範囲で何か異常が起きているのかもしれないね」


「ふむ、そうであったか……。そのペリドットという地の主君は、我らの事をどう思っておるのであろうか?」

「今まではどうかは分からないけど、少なくとも今は悪くは思ってないと思うよ。僕のおとーさまがペリドット卿宛のお手紙に“グレンという鬼族に村を救われた”って書いてたから。もしかしたらもうその手紙を読んでいる頃かもしれないね」

 僕がそう答えると、将軍様は「そうか。グレンが逃げ出したのも無駄ではなかったと言う事か……。あい分かった!」と返事をし、今後のアカツキの方向性をシノノメと真剣に相談し始めた。


 僕たちも今日はこのお城でゆっくりと過ごさせてもらう事となった。将軍様とシノノメ、それからサクラに一旦別れを告げ、騎士団立ち上げメンバーで次に向かった場所は、お城の“鍛冶場(かじば)”であった。


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